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第10章 邪魔者は許さない魔女の反撃story1

「鎌鼬ちゃんも自分の心の闇から抜け出したんだもの。―・・・私たちも頑張らなきゃ!」
 遠野 歌菜(とおの・かな)は妖怪の少女のことを思い出し、勇気を持てばトラウマなんて消せると信じて前へと進む。
「2人とももう大丈夫そうね」
 迷いのない顔になったわね、とカティヤ・セラート(かてぃや・せらーと)が2人の顔を見てほっとする。
「あぁ、俺はもう幻覚には惑わされない。大丈夫だ。その・・・迷惑を掛けたな」
 隣を歩く歌菜の方をちらりと見て、月崎 羽純(つきざき・はすみ)は彼女に怖い目に遭わせてしまったかと謝る。
「―・・・もっと強くならないとな、力だけじゃなく・・・。カティヤ・・・なんだ、その顔は」
「もしまた出ても、私が喝を入れてあげるわね♪」
 助けられたことに恥ずかしがる彼に顔をニヤつかせる。
「陣とリーズ、遅いね?迷子になっちゃったのかな」
 レキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)はまだ戻ってこない2人を心配して後ろを振り返る。
「そうよね・・・。どうしたのかな、陣さんたち・・・」
 その七枷 陣(ななかせ・じん)たちは・・・。
「くそ・・・腹が・・・っ」
「仕方ないじゃん。あのままトラウマがいたら、雨が台風になっちゃうかもしれないし?」
「嫌なことを思い出させるなって」
「あはは、ごめん♪」
 ムッとした表情の彼にリーズ・ディライド(りーず・でぃらいど)はへらっと笑う。
「それにしても、どこ行っちゃったのかな?」
 逸れた真たちを回収しようと探し歩く。
「ねぇ、どっちに進んで行っているか、分かってる?」
 彷徨わないか椎名 真(しいな・まこと)は不安そうに、自分に憑依している椎葉 諒(しいば・りょう)に話しかける。
「そのうちつくだろう」
「(つまり、迷子ってことか)」
 仲間たちと逸れたのかと原田 左之助(はらだ・さのすけ)は嘆息する。
「お〜い、やっと見つけた!真くん、こっちやこっち」
「―・・・残念だが今は真じゃない」
 手を振りながら駆け寄る陣を諒が軽く睨みつける。
「あぁ・・・そっか。とりあえずヨウくんたちも回収しなきゃな」
 迷子になって困っていそうな2人も、ついでに拾っていこうと探し始める。



「―・・・嫌なものを見せ付けられましたね」
「でも現実に起こってしまったことですし・・・」
 幻影によって痛み出してしまった古傷を、紫桜 遥遠(しざくら・ようえん)はまだ少し痛そうにさする。
 緋桜 遙遠(ひざくら・ようえん)も同じ気分なのだろうと、まだ顔色のよくない彼を見る。
「分かっていますよ。過去なんて変えられませんから、この傷も一生残ってしまいます。例え変えられるとしても、起こった事実は残ってしまいますからね」
「その・・・大丈夫ですか?」
「平気です・・・と言いたいですけど、正直気分がとても悪いです・・・。こんな場所に研究所がなければ、幻影も見ることもありませんでしたから」
「人為的でなく、自然的に幻影を見せられるみたいですし。人が寄り付かないように、わざとそういう場所を選んだんでしょうね・・・」
 こんな最悪な場所に研究所を作った十天君に憎しみをぶつける。
「どっちに行けばいいんでしょうね・・・」
「いたいた!こっちやっ」
 遙遠たちを陣が手招きをする。
「陣さんどうして濡れているんですか?」
「聞かないほうがいいですよ、遥遠」
 また彼のトラウマが現れて実体化でもした日には、無能になる可能性があると思い止める。
「えっ、はい・・・」
「歌菜ちゃんが木に目印をつけてくれたから、それをたどって行こうや」
「それはありがたいですね。これ以上、時間をロスするわけにもいきませんから」
 遙遠たちは陣に案内され、ほっと安心したとたんほんの一瞬だけ、過去のことを忘れ共に進む。
「矢印の方向に進まないといかんから、余所見とかしないよう気をつけてくれ」
「えぇ、そうですね・・・。少しでも道から逸れてしまったら、まったく別の場所へ行ってしまいそうですし」
「戻ってきたアル!」
 陣たちの姿を見つけたチムチム・リー(ちむちむ・りー)が、携帯の明りで位置を知らせる。
「やっと追いついたみたいやね」
「見て陣さん、あの建物がきっとそうです!」
「よしっ、ぶち壊しにいきますかっと」
 歌菜の指差す方向を見た陣は怒りの焔に燃える。
「待って!派手に暴れると実験動物たちが死んじゃうよ。それに役立ちそうなものもあるかもしれないし」
「動物はともかく・・・。あいつらの実験なんて、ろくでもないものしかないはずや」
 もう少し待って欲しいというレキの意見をあっさり却下する。
「声が聞こえると思ったら、やっとたどりついたんだね」
「弥十郎も魔道具を壊しに行くのかな」
「ううん、こっちは引き付け役だよ」
 不安そうな顔をするレキに微笑みかける。
「その隙に侵入して助けてあげて」
「ありがとう・・・。利用されるだけされて、破壊されたものの下敷きになっちゃうなんて・・・。可哀想だからね」
「そこにいるのは誰!?」
「わわっ、見つかっちゃった。ここは任せて行って!」
「うん!」
 弥十郎たちに任せ、レキたちは研究所へ侵入しようと隙を窺う。
「おいで〜こっちだよ♪」
 実践的錯覚で相手との間合いを取り、魔女の行動を観察する。
「さっさと倒されなさいよ!」
 嵐のフラワシに殴らせようとするが、寸前で避けられてしまい苛立つ。
「(んー・・・見破られちゃっているのかな。それなら・・・!)」
 弓を明後日の方向にシュッと放つものの、行動予測しようと逆に監察されている。
 ザッピングスターを降霊してピンク色に光らせ、ミラージュで自分の幻影を作り出す。
「小賢しいやつめ!―・・・きゃぁあ!?」
 迫り来る彼の行動とメンタルアサルだと読んだが、すでに遅く・・・。
「普段は料理だけなんだけど・・・ごめんね♪」
「―・・・かはっ」
 足を狙うザッピングスターをかわすものの、隙を狙われ腹を殴られてしまう。
「どこかで見たと思ったら、あんた・・・・・・城の調理場にいたよね・・・。いったい誰なの・・・」
「戦場の料理人・・・だよ」
「―・・・へぇ〜。料理専門ってわけね・・・でも、こっちだって・・・。ただやられるわけにはいかないのよ!」
 嵐のフラワシに弥十郎の背を狙わせる。
「うわっ!!」
 イナンナの加護で察知して致命傷を免れたが、右肩に一撃をくらってしまう。
「イタタ・・・気絶する前の、最後の一撃ってことだね・・・」
 やっぱり無傷じゃすまなかったかと痛む肩を手で摩る。



「まだ追っ手がきますね」
 崩落する空を放ちながら追ってくる魔女を捕縛しようと、真言は木々にナラカの蜘蛛糸でトラップをしかける。
「同じ学校の生徒なのに、何でこんなことするのよ!」
 彼女が仕掛けたトラップを踏んでしまい、糸に囲われ巾着状態になってしまう。
「私も魔女さんと同じ学校の生徒だからこそ・・・。手荒なマネはしたくないんです。あ、糸に触ると傷ついてしまいますよ?全て終わったら出してあげますからね」
「きぃいいっ、待ちなさい!こら、戻ってきなさいよぉお」
「気性の荒い魔女ばかりだな・・・」
「2度も研究を台無しにされると思って、気が立っているんでしょうね・・・」
「―・・・まだ来るぞ。仕方ない・・・私が相手をしてやろう」
「すみません、ありがとうございます」
 黒龍をその場に残し先を急ぐ。
「ウィザードか・・・厄介だな」
 迷彩塗装を施した忘却の槍で、氷術で作られた小さなナイフを叩き落す。
「私のナイフが!?」
「丸腰のくせに・・・だったら、雷に撃たれてしまいなさいよ」
 彼の頭上を目掛けてサンダーブラストの雷の雨を降らす。
「簀巻きにして、森の中に放置してやるわ」
 別の魔女が木の上から飛び降り、黒龍の背を狙う。
 ガスッ。
「―・・・くっ、小柄な割りにいい蹴りだ」
 彼を庇った直実が両腕でガードし、衝撃に耐え踏み堪える。
「退いて、私が仕留めてやるわ♪吹雪の中で凍えてしまいなさい、オーッホホホ♪」
「(このままでは黒龍が・・・!)」
 茂みの中で様子を見ていた紫煙が、ウィザードの片足を狙う。
「私が気づかないとでも思っているの?おばかちゃん♪ウフフ・・・」
「(―・・・くぁっ)」
 スウェーでかわす間もなく、ブリザードに吹き飛ばされてしまう。
「この彼が・・・どうなってもいいのかしら?」
 手からすり抜けたライトブレードを草むらの中へ蹴り、冷徹な表情で見下ろす。
「やめろ・・・っ。葛葉には手を出すな・・・」
「だったら、さっさとご自分の学校に帰って、地味な勉強でもしてればぁ?」
「くっ、卑怯な・・・」
 人質を取られてしまい、“葛葉を救出する策を考えねば”とウィザードを睨みつける。