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第11章 邪魔者は許さない魔女の反撃story2

「黒龍さんたち大丈夫かしら・・・」
 歌菜は茂みの方にいる彼らが心配になり、ちらりと後ろの方を見る。
「キイツ言い方だけど・・・今は自分たちの身も守らない状況だ。余所見をしたら、こっちがやられるぞ歌菜」
「分かってるわ、羽純くん・・・」
「私たちがここを離れたら、陣たちが研究所に侵入出来ないわ」
「それは・・・っ」
「きっと魔女たちは、陣たちを追いかけていってしまうわね。辛いけど・・・耐えなきゃいけないのよ」
「―・・・分かりました、我慢します」
 助けに行けない悔しさに、歌菜は槍をぎゅっと握り締める。
「お嬢たちの・・・邪魔はさせない・・・・・・」
 新兵衛はスコープを覗き込み、スナイパーライフルの銃口を歌菜に向ける。
「誰か・・・私を狙っているの!?―・・・あぁっ」
 禁猟区の反応で急所はかわしたものの、足を掠めてしまう。
「隠れていても無駄よ。さーちあんど・・・ですとろいーーーっ!!」
 歌菜は痛みに耐え、炎で新兵衛をあぶり出す。
「何・・・っ。・・・・・・ぬぁっ」
 彼はたまらず屋根から飛び降りる。
「小娘・・・沈みなさいっ」
 コンジューラは嵐のフラワシを歌菜に纏わりつかせ彼女の腹を狙う。
「歌菜ーーっ!!―・・・ぅぐっ」
 嵐のフラワシの一撃をくらってしまうが、恋人の身体を抱えて地面へ転ぶ。
「2人は私が傷つけさせないわ」
 バーストダッシュの加速を利用して飛び上がり、カティヤはコンジューラをドガッと蹴りつける。
「イルミンの生徒だから手加減してあげてるのに。いい気にならないでよね!―・・・天の輝きよ・・・あの者に罰を与え、降り注げーーっ!!」
「あぁあああーー!!」
「カティヤさん!?―・・・・・・っ」
 崩落する空の餌食になってしまった彼女の方へ駆け寄ろうとするが、別の魔女に阻まれてしまう。
「研究が終わるまで、大人しくしててくれない?」
「悪いけど間ってやる義理はないんだよな」
 カティアを守ろうと羽純は、則天去私でドルイドが手にするロッドを叩き落す。
「邪魔ばかりして気に入らないやつらだわ!」
「得物がなければ威力も落ちるだろ?」
「こんのぉおっ」
 今にも噛み付きそうな勢いで羽純を睨む。
「研究所の中には入れさせない!!」
「避けるのでせいっぱいなんて・・・」
「―・・・歌菜ちゃん!」
「陣さん、先に行ってください。一緒に行くのはまだ・・・無理みたいです」
「それならオレも・・・」
「いえ・・・無用な戦いでたくさんの人が傷つけば、喜ぶのはやつらですから。早く終わらせることを優先してください」
「ごめん・・・歌菜ちゃん!」
 陣たちは友を置いて研究所へ突入する。
「不老不死を欲する者は、きっとたくさんいるかもしれません。しかし・・・土地の奪い合いの争いが始まり、きっと・・・血で血を洗うようなことになってしまいますから・・・」
 純粋に自分たちのためだけにしても、研究を否定されて怒る魔女を背に、真言はどうすれば分かり合えるのかと考え研究所の中へ入る。




「皆、不老不死を否定してるけど。病気の人を救える技術に応用することの方を、考えたりしないのかな・・・」
 研究所に入り込んだ諒に憑かれている真は、命の灯火を消さないために、治療として活用出来ないかと考える。
「って、諒なにやってるの?」
 黒魔術の本を手にしている諒に問う。
「霊の義体のようなものでも、作れないかと思ってな」
「七枷たちにぶっ壊されたり、悪霊されるくらいなら。俺が有効に使ってやる。真が黙っていれば、バレないだろうしな」
「ぇえ!?見つかった時が怖いんだけど・・・」
 “ついに外道に堕ちたんかーっ、覚悟は出来ているんやろうなぁあ!?”と、陣の焔に本もろとも焼かれそうな未来予想をしてしまう。
「ほぉ・・・こそこそ何かやってると思ったら。そいうことか」
「(うるさいのが来やがった)」
「諒・・・責任もってやるなら、俺は何も言わねぇようにしようと思ったが。俺も七枷に炭にされるのはごめんだ。それにだ・・・後1人、見つかったらやばいのがいるだ?」
「はっ?知るか、そんなの」
「緋桜だ。今から暑い時期になるし、氷漬けにされると涼しいだろうよ」
「―・・・・・・脅す気か」
 平静を装いつつ心中ではかなりの恐怖だ。
「真のことだけは庇ってやるが。諒は・・・ナラカで対面したら、エライ目に遭いそうだぞ。うん・・・間違いない」
「ちっ・・・」
 舌打ちをしながらも、見張をする彼の隙を狙ってやるという態度を取る。



「はぁ〜。こんな研究、さっさと諦めろっつーの」
「悪いがそうはさねぇ」
 ヒュウッ。
「またお前か」
 ディテクトエビルで察知した陣は間髪黒刀を避ける。
「あちちっ、ふーふー・・・。くそっ、避けたはずや」
「フッ・・・もう1度くらってみれば分かると思うが」
「よくも陣くんを・・・!」
「ちょっ、待てリーズ!!」
「力だけで勝てると思っているのか?」
「な、何!?」
 龍骨の剣でなぎ払おうとするリーズの刃がボゥッと燃え出し、ぶんぶんと刃を振り炎を消す。
「相手を倒す時は・・・。丸腰も当然の方を狙うんだよな」
 鍬次郎は黒刀で片手平突きを繰り出す。
「全然斬れてないな!はっはっは」
 バーストダッシュでかわし、肩を掠めただけ。
 そのはずだったが・・・。
「うおわっ!?何やこれ、あっつ!!」」
 掠り傷だったはずのところが突然燃え出し、ぱっぱっと大慌てで両手で消す。
「黒刀・無限刃安定・・・。魔女たちがいたあの城で開発された刀だ」
「何だと・・・」
「特別な効果はないがな・・・」
「見て陣くん。あいつの刀、刀身がノコギリみたいだよ」
「色といい・・・形といい・・・。全体的に趣味が悪いな」
「何とでも言え・・・。斬ると焼く・・・、両方くらう痛みを味あわせてやるぜ」
 シュボッ。
 切っ先を壁に滑らせ、摩擦で着火させる。
「行くぜ・・・」
 陣の腕を焼いてやろうと平突きで狙う。
「んん〜っ、陣くんは斬らせないよ」
「じゃあ・・・・・・お前が焼かれろ」
「え・・・。―・・・別の剣!?」
「逃げろ、リーズ!!」
「もう遅いっ」
 ガリガリ・・・シュボォオオッ。
 床を引っ掻くように着火させ黒刀の餌食にする。
「うわぁあああ!!陣くん・・・熱い・・・熱いよぉお」
「ちくしょう、今治してやるからな」
 陣は少女の身体を床に転がして火を消し、命のうねりで傷を治してやる。
「リーズをよくもこんな目にっ」
「クククッ、互いの命をかけて戦う緊張感・・・。目の前にいるのは先輩のようなヤツじゃねぇけど。幕末の世を思い出すな・・・」
 目の前の獲物に鍬次郎は愉快そうに目をギラつかせる。



「十天君、出て来なければ研究所を破壊しますよ?出てこなくても破壊しますけどね」
「相変わらず騒がしいやつらだぜ」
「子供!?こんな幼い子供がリーダーだったんですか」
 ダークビジョンで暗闇の中にいる少女の姿に、遥遠は驚きのあまり目を丸くする。
「見た目に騙されてはいけません、遥遠。年はかなりいってるはずですよ」
「そうですよね・・・。意外でしたので、少しビックリしてしまいました」
「誰であろうとオメガさんに、害のある者には変わりないですし」
「お姉ちゃんに手を出したら・・・。オメガも殺すの」
 ぼそっと少女の声音が聞こえたかと思うと、遙遠の腕を掠める。
「さっきからディテクトエビルの反応があると思ったら、トラップだらけということですか」
「あなたたちも、壊して壊して壊しつくすの」
 ヒュ・・・ドドドス。
 2人の頭部を狙いトラップを発動させる。
「ナイフ・・・それとも、もう少し小型の刃でしょうか」
 間髪避けられたが、それでも身体を掠めじわりと血が滲み出る。
「子供の姿の十天君の傍には、おそらくハツネという少女が隠れているんでようね」
「遙遠、後ろは魔女が・・・!」
「八方塞ということですか。だからといって、退くわけにはいきません」
 敵に囲まれてしまった2人は、目の前の十天君だけをどう葬ろうか考える。