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第8章 闇に落とすならば、全てを・・・

「侵入されないように気をつけてるのになぁ・・・」
 またゴーストが入り込まないか、綺人は窓の周辺を警戒する。
「今までは正面の扉だけでしたけど。窓ガラスを破壊して、無理やり侵入してくるようになってしまいましたね」
「クリス、わたくしたちはこのまま中の警備をしていた方がいいでしょうか」
「そうですね・・・瀬織、2階へ行きましょう。」
「分かりました。1階は外警備の方々がいますからね」
 壁を登られたら窓を破られてしまうと思い、瀬織たちは2階へ行く。
「皆がまだ戻らないということは、使役している十天君が健在ってことだな・・・」
「えぇ、ユーリ。封神しない限り、ずっと襲撃が続くんですよね。何とか耐えなくては・・・」
 ディテクトエビルの領域にゴーストがひっかからないか注意深く歩く。
「―・・・何か邪悪な気配を感じます!」
「廊下や部屋には禁猟区の反応はないな。となると・・・外か」
「外って・・・もしかしたら壁を登って来ているのかもしれませんね」
「やたらと窓を開けて確認するわけにもいかないしな」
「2人で手分けして探しましょう」
 瀬織は声を潜め、ユーリと反応のある位置を探す。
「かなり近そうです・・・」
 純粋な悪意だけの塊の気配に肌が凍てつくような感覚に襲われる、
 カタカタカタ・・・。
「いるのかな・・・。僕とクリスが見てくるから、2人はそこにいて」
 何かが窓を揺らすような音が響き、綺人とクリスは息を殺して慎重に歩く。
「爪の跡はないね、ということはあいつかな・・・」
 人の形をした何かが通った跡がくっきりと外側に残っている。
「なおさら中に侵入させるわけにはいきませんね、アヤ」
「うん・・・叩き落としてやらなきゃ」
「私の飛行能力でアヤをサポートします」
「わたくしたちも行きます」
「瀬織は俺が抱えるとするか」
「酸の方は頼んだよ。じゃあ・・・開けるね・・・」
 ギィイ・・・。
 そっと窓を開いたとたん・・・。
 侵入の隙を狙っていたゴーストがゴベァアアッと奇声を上げ、触手の先で綺人に襲いかかる。
「アヤに手出しはさせません!」
 ズシャァアッ。
 彼の身体に届く寸前にクリスが龍骨の剣で斬り払う。
 ビタンッと床に落ちた触手がビチビチと蠢く。
「こんな手を使ってくるなんて、だいぶ知恵をつけてきましたね」
「ありがとう、クリス」
「いえ、大広間でアヤに助けられましたし」
「貸し借りナシってことかな?」
「フフッ、そういうことになりますね」
「ともあれ、元々人間だったからね。それなりのトラップは仕掛けてくるはずだよ!」 
 ヒューマノイド・ドールの腹を蹴りつけ地面へ落とす。
「う〜ん・・・さすが十天君が作ったゴーストっていうか、もの凄く諦めが悪いね」
 窓の外を覗き込むと壁に触手を突き刺し、ズルズルと這い上がってくる。
「命令で動く道具として扱われているようですし。命令がない限り退くことを知らないんですよ」
「クリス、僕を落とさないでね」
 石作りの外壁から叩き落とそうと、綺人とクリスは窓の外へ飛び出る。
「任せてください」
 剣を鞘に納め、彼の背からしっかりと抱く。
「行くぞ、瀬織」
 ユーリは彼女の小柄な身体を抱え、2人のサポートをする。
 シュゥウウッ。
「うわっ、酸が!」
「わたくしが防ぎますっ」
 ユーリに抱えられたまま、瀬織は凍てつく炎で酸を消し去る。
「2階であまり騒ぎたくないから、さっさと落ちてもらわないとね」
 綺人は刀の切っ先にアルティマ・トゥーレの冷気を纏わせ、ターゲットの背を貫き岩場へ落とす。
「アヤ・・・、少し手が痺れてきました。いったん中へ戻りましょう」
「そうだね、クリス。ユーリたちも戻って!」
「―・・・了解だ。下はひとまず彼らに任せておけば、大丈夫そうだからな」
 2階の窓から入り、屋敷の見回りを続ける。



「彼らに叩きのめされても、まだ再生を続ける気か」
 リュース・ティアーレ(りゅーす・てぃあーれ)は忌々しそうに見下ろし、岩場でトマトのように潰れているゴーストの頭部をパキッベキッと踏み砕く。
「くっ・・・!」
 彼が近づこうとした瞬間、ゴーストの強酸に襲われてしまう。
「(ないよりかはマシだが、ポータラカマスクでも防ぎきれないか。―・・・少し吸ってしまったな)」
 げほっと咳き込み渋面を浮かべる。
「だが所詮は、ババアどもが作った玩具。再生するな、潰れ続けろ!」
 ドガガガガッ。
 即天去私で神経系を狙い、骨まで粉砕する。
 ゴーストは赤黒い血を吐き地面へ転がる。
 血溜りは生者の血ではない死者の血・・・すぐに凝固してしまった。
「オメガを傷つけるなら容赦はせぬ」
 レヴィアの刃がキラーパペットの首にズブリと入り、岩壁へ斬り飛ばす。
 シュパァアアッ。
 首の断面から噴水のように血が噴き出しているにも関わらず、キラーパペットの胴体が頭部を探し求める。
 それを許さず、無慈悲に亡者の頭を斬り裂く。
 ベチッと脳漿が汚らしく地面へ張りついた瞬間、死者はただの死体へと戻る。
「キンコウセイボサマノ・・・ゴメイレイニヨリ・・・・・・オマエヲコロス!!」
 天井に潜んでいるゴーストが喉の奥底から呻くように呟き、鋭利な爪で貫き殺そうとする。
「玩具どもが。そう簡単に狙わせるわけないだろ」
 リュースはバーストダッシュのスピードを利用して飛び上がり、彼の背を狙うゴーストに鳳凰の拳を叩き込む。
 拳を引き抜くとブシャッと血が噴き出し、頭から引っ被る。
「ジャマヲ・・・スルナァアア」
 ゴキンッ。
 骨を砕く鈍い音が響き、ゴーストがギロリとリュースを睨む。
「コゾウメ・・・・・・ッ」
 彼に手首を圧し折られ、後ろをとられてしまう。
「若さを褒めてくれてありがとう。その小僧に、やられて死ね」
 リュースは背後から亡者の首を、上着でギリギリと締め上げ、ゴキャッと骨を粉砕する。
 千切られたかのようにゴトンッと落ち、踏み潰されて絶命する。
「すまぬ、リュース・・・」
「レヴィアさんは俺が必ず守ります」
「フッ・・・それは心強いことだ」
「再生するゴーストが完全に死に始めましたけど。あのオバサンたちがいる限り、油断は出来ませんね」
「そうだな。オメガを利用しようと、狙い続けてくるはずだ」
「SSLの皆・・・どうか無事でいてください」
 十天君の研究所へ向かった仲間たちのことを思い、無事に戻ってくるように祈りを捧げる。