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「さて、行きましょうか……」
「やっと、我らの出番が来たようだな。アッシュ・トゥー・アッシュ?」
と、装備した「パラミタがくしゅうちょう」と「習字用具」を用いての筆談を行うサブパイロット。
「海さんからのオーダーとはいえ、随分待ちくたびれました。その分、余計に腕が鳴りますね」
 アッシュ・トゥー・アッシュ(あっしゅ・とぅーあっしゅ)シュラウド・フェイスレス(しゅらうど・ふぇいすれす)は搭乗するイコン、グレイヴストーンの薄暗いコクピットの中で短く会話(シュラウドは声を発することが出来ないので、以降の会話は全て筆談です)をかわす。
 イコン同士の戦闘に巻き込まれ、味覚を失った元料理人であるアッシュには、イコンを悪用する人間は許せなかった。そのため今回のバイト募集を見つけた時には、「イコンを悪用する賊と戦えるチャンスを頂ける上、お給料まで出る…最高じゃないですか!」と喜び勇んで応募し、警備員となっていた。
 アッシュと同じ事故に巻き込まれた彼のパートナーのシュラウドもまた賊退治に燃えていた……と、それもあるが……実は、最近なにかと話題のコンビニスイーツとやらにも興味があったのだ。
 さっさと終わらせてスイーツを食べるべく、不便な右腕を駆使して操縦のサポートを行うシュラウドにアッシュが声をかける。
「シュラウドさん? 用意は良いですか?」
「うむ(と、書く)」
「では……システム起動! グレイヴストーン!! フルパワー!!」
 クェイルタイプのグレイヴストーンの目が輝く。


ガシンッ!!
 突然出現したグレイヴストーンのパンチが、アポロトスのシュバルツ・フリーゲを捉える。
「何ぃーーッ!?」
 予想外のイコンの登場にアポロトスが叫ぶ。
 アッシュは、周辺の土などで前もってグレイヴストーンを汚しておき、なるべく目立たないようにしゃがんだ姿勢で待機していたのだ。
「アッシュ。追撃を!!(と、書く)」
「いえ、まずは……」
と、グレイヴストーンで落下するラルクとソフィアを受け止める。
「二人を頼みます!」
 その声にレイスと剛太郎が二人を受け取りに走る。
 二人を渡したアッシュは、イコンを再びシュバルツ・フリーゲへと向ける。
「ふん、イコンを隠しておったか……だが、5対1で勝てるかのぅ?」
「シュラウドさん、頭部装甲を展開!!」
 グレイヴストーンはごくごく普通の量産機。
 目立たないように一切のマーキングを排している……が、実は頭部に改造が加えられており、装甲が展開可能になっていた。
 徐々に頭部装甲が開き、その下の髑髏を模した不気味な素顔が顕になる。
「ひ、ヒィッ!!」
 賊の一人が悲鳴をあげる。
 クェイルタイプの細身のボディと相まって、その展開後の姿は、見た者にイコンへのトラウマを植え付けかねない骸骨を髣髴とさせる。
「(コンビニの店内照明などの光に照らされ、暗闇に薄ぼんやりとグレイヴストーンの姿が浮かべれば、まるで怨霊のように見えるはず。敵を驚かせることが出来るのではないでしょうか?)」
 そう考えていたアッシュの作戦は見事命中する。
 怯んだ隙を見逃さす、イコンで先制攻撃を開始するアッシュとシュラウド。
 被害拡大を防ぐため、銃はなるべく使わず、ソードによる格闘戦を展開させる。
 しかし、アポロトスもアポロトスである。
 頭部展開で怯える賊を大声で鼓舞する。
「ひるむな!! ただのハッタリ、こけ脅しじゃ!!」
 ぶつかるシュメッターリングとグレイヴストーンのソード。
「アッシュ! 数と腕では不利だ……(と、書く)」
「それを何とかするのが、お仕事です!!」
 グレイヴストーンがシュメッターリングのソードをたたき落とし、肩口に一撃を叩き込む。

「チィ、やっぱりやられてる!!」
 知恵子のトラックを救助し、大急ぎで戻る柚と健闘のイコンが絶賛襲撃中のコンビニをモニターに捉え、海が舌打ちする。
「わわ……みんな大丈夫でしょうか?」
「アッシュが頑張ってくれているみたいだけどな……」
 モニターで拡大された荒い映像に、片腕を落とされたグレイヴストーンが戦う姿が見える。
「海、先行するぜ?」
 健闘が言い、速度をあげようとした時、荒野に朝日が昇る。
「朝になっちゃいましたね……」
「柚! 左見て!!」
 突然、三月がそう叫ぶ。
「え? どうしました?」
「イコンが来るよ!! 数は四体!!」
「嘘!? 増援?」
 しかし、柚より早くモニターを見た海が、「勇刃! 待て!!」と、健闘に待ったをかける。
「な、何だよ?」
「どうもシフト交代の時間になったらしい。こっちも弾薬尽きてるんだし、向こうに任せてみようぜ?」
 ニヤリと笑う海。