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 3トン半・一杯を運転し、荒野を走るのは配達のバイトをするローザ・セントレス(ろーざ・せんとれす)である。
 朝一番に出発したのは、今回が初めての配送先である事と安全を最優先して運転するためにやや時間がかかる事を見越したためであった。
「いいか? いくら俺が上から見てるとはいえ、流砂に気をつけるんだぜ?」
 ローザが腕に着けた銃型HCから聞こえた声の主はパートナーの天城 一輝(あまぎ・いっき)である。
「わかってますわ。一輝もちゃんと空からの援護をしなさいですわ」
 小型飛空艇ヘリフォルテに乗り、ローザのトラックをデジタルビデオカメラを持って上空から見守る一輝。
 まずは流砂の危険を排除するため、一輝は機関銃の弾としてペイント弾を別に用意し、スキル「弾幕援護」を使って流砂と思わしき場所を撃ち確認する作業を行っていた。つまり、色が付いた砂が動けば、流砂の場所は一目瞭然という寸法だ。
「弾幕援護」は、「弾幕を張って、味方の行動をカバーする技術」なので、トラックが襲撃者に気を取られて流砂の方に向かった時に気付かせたり出来る。
 そして、更にデジタルビデオカメラで上空から俯瞰した映像を撮り、そのデータを皆に送れば、これから通る人達も安全な道を選べ、これで安全なルートを確保出来ると考えていた。
「聞くところでは、賊まで出るらしいじゃないか?」
 一輝の呟きに、ローザは狭い運転席でも振り回せるように選んだ得物である女王のソードブレイカーをチラリと見る。
「でも、私達がこうやってルートが確立しましたら、配達の効率と時間の正確性が高まりますわ」
「ああ。今までは運転手のカンと経験に頼っていたようだが、それじゃあ、ちょっとな……」
 一輝というカーナビを得たローザのトラックは軽快に荒野を走り抜けていくのであった。

「お疲れ様なのだ〜!!」
「後は、よろしくぅー」
 どうにか店まで辿り着いた朝シフトの四人は、バックヤードにて夜勤の店員達と手早く引き継ぎを終えていた。
 エプロンを着たエステルが黎明華の服装を見て、驚く。
「黎明華さん、その服は……」
「フッフッフ……コンビニといえば、美人アルバイトの看板娘! 看板娘の重要性を大々的にかわゆくアピールして、シャンバラ文化の恐ろしさ(?)をキマク在住のエリュシオン人に思い知らせるのだ〜〜!」
 黎明華が持参したコンビニ制服は、キマクらしくキャッチーな黎明華の自慢のお胸を強調するものであり、下は見えそうで見えないミニスカでビシッと決められていた。
「でも、それってアン◯ミラーズ……」
「ちなみに!」
 エステルの発言を遮った黎明華がもう一着取り出す。
「キミの分も持ってきたのだ〜!!」
「……私はそんなに胸ないですし」
「黎明華がキマクのお嬢として『ミス・クランマートシャンバラ国境店』となるから、キミは『準ミス』を目指してバイトに励むのだ〜!」
「……いえ、だから」
 バンッと開くバックヤードの扉。
「話は聞かせて貰ったわ。今度こそなななの……」
 むんずと掴まれるなななの首根っこ。
「ななな殿。レジをサボってはいけません」
 小次郎がなななを即座に摘み出す。
「離しなさい! 小次郎!! 『ミス・クランマートシャンバラ国境店』になるのは、ななななのよー!!」
「もう十分、ななな殿は素敵な『ミス』ですよ?」
「本当?」
「本当です。ただ、あなたに対して寛容な人のみを傍に置く方が、より幸福かもしれませんね?」
 二人がやり取りしながらバックヤードを去っていき、エステルは黎明華に言う。
「私達も働きましょうか? 今日も大変そうですし……」
 黎明華が頷く。

 その頃、外ではアポロトスのシュバルツ・フリーゲ以外を全滅させた警備員達が、最後の戦いを行っている状態となっていた。
「美羽!! 決めるぜ!!」
「了解!!」
 イーグリットとイーグリット・アサルトの機動力を活かした白兵戦で、シュバルツ・フリーゲを追い詰めていく翔と美羽。
「殺気看破」で気配を感じ、「先の先」で素早く動いていたグリフォンのパイロット、智緒と理知も大型ビームキャノンを放ち、アポロトスの足を止める。
 そして、背後には裁のゴッドサンダーが待ち構える。
「逃さないよ?」
 セルシウスは、その光景をただじっと見ていた。
「だぁーーッ!!」
 美羽のビームサーベルがマシンガンを連射していた腕を切り落とす。
「おのれおのれおのれおのれ……かくなる上は!!」
「!? 様子がおかしいぞ?」
 アリサが翔に言う。
「みんな、待て! 奴は何かする気だぜ?」
 翔の言葉に攻撃が止まる。
「フハハハ、もうこうなれば自爆してこの店ごとおぬしらを消し飛ばしてくれるわ!!」
「自爆だと!?」
「させないわ!」
 理知がソードを構える。
「フハハハ、もう遅いわ! 今攻撃すればその瞬間にドカンじゃぞ?」
「ちょっと、待てよ!!」
 声が上がったのは、盗賊達からである。
「頭領! そりゃあないぜ!! 国を追われ居場所を無くした俺達も消そうってのか!?」
「当たり前だ!! そのためにお前たちを今日までワシが養ってやったんじゃ!!」
「待て!! アポロトス!!」
 セルシウスが一歩歩み寄る。
「貴様か……エリュシオン人でありながら、蛮族どもの文化になびきおって!」
 セルシウスはエプロンを脱ぐ。
「確かに私はエリュシオン帝国の設計士、セルシウスだ。だからこそ言おう! お前たちも栄光ある我が同胞なら、商店を襲う等という卑劣な真似はするな! ここは皆が安心して買い物を楽しむ場所でなくてはならん!」
「不抜けたか! 国境地帯にこれだけのイコンや戦力を配備して、何が安心だ」
 アポロトスの言葉に目を瞑るセルシウス。
「確かに……だが、貴様達も武器を持って買い物をするか? 私には今、貴方こそが蛮族に見えるぞ?」
「何を……!」
「答えろ! これが私達の望んだものかッ!?」
 目をカッと見開いたセルシウスが言う。
「おぬし、何故泣いておる……」
「悲惨な光景だとは思いませんか……アポロトス? 戦闘は我々設計士が苦心して創り上げてきたモノ、その全てを一瞬で破壊していくのです」
 周囲を見渡したアポロトスの目に映る、ヒビ割れたコンビニの窓や、外壁、イコンの銃弾や移動で粉々になったアスファルトの駐車場。
「おおお……」
 頭を抱えるアポロトス。
「ワ、ワシは一体……何を……」
「さぁ。私と一緒にエリュシオンに帰りましょう!!」
「フ……もうワシは構わぬ。だが、この盗賊達……いや先の騒乱でに落ちぶれてしまった、エリュシオンや鏖殺寺院などの敗残兵達だけは助けてやってくれないか?」
 アポロトスはそう言うと、背中のバーニアを噴射させ、空へと昇っていく。
「アポロトス殿!! 何を……!!」
「セルシウス。設計士が最後に設計するモノとは何かわかるか?」
「……」
「自分自身の人生じゃよ」
 皆が見守る中で、シュバルツ・フリーゲが爆散する。
「あ……アポロトス殿ーーーーッ!!!」