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太古の昔に埋没した魔列車…エリザベート&静香 前編

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太古の昔に埋没した魔列車…エリザベート&静香 前編

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第9章 休めるところをご用意いたします、影のサポート

「日中は暑いから、早朝に設置を始めたほうがいいよね♪」
 佐々木 弥十郎(ささき・やじゅうろう)はポールを地面に並べキャンプテントを張り始めた。
「採掘じゃなく、いつもの当番か」
「長期間滞在するわけだし。それにパラミタ内海の方じゃないからね、採掘は」
「それもそうだな」
 フレームを組み立てながら熊谷 直実(くまがや・なおざね)は“あいつらしい”と苦笑して、プラケットにポールを差し込みロッキング金具から外れないか確認する。
「向こう側を持ってくれ」
 インナーテントを吊り下げ用フックでかけ、アウターテントを弥十郎と一緒に広げフレームに被せる。
 固定用テープでフレームにきっちり固定し、ルーフ状のウォールを張り出す。
「そっちは大丈夫そうか?」
「うん、おっけーだよ」
 ポールをセットし終わった2人はロープでギュッと固定する。
「片側のペグの打ち込みをやるから、おっさんはそっちね」
「後は食事をする場所だな」
「この辺の平らなところでいいね」
 台車で運んできた運動会テントを組み立て、その下に長テーブルと椅子をセッティングする。
「うん、これなら分かるかな」
 料理☆Sasaki 不定期営業中の看板を入り口に出す。
「かまどの方は今作り始めたみたいだね」
 頼み込んだ知り合いの施工管理技士に、かまどを作ってもらう。
 施工管理技士は設置する場所の草を取った後、そこへ砂利を平らに敷き詰めて軽量ブロックを並べる。
 その上に耐火レンガを並べ、レンガ同士をくっつける部分にだけ耐火セメントを塗る。
 レンガを切る道具でいらない部分に当てて、トンカチでトントントンッと叩きキレイに割る。
 土台の上にセメントを塗ったレンガを互い違いに並べていく。
「へぇ〜30分ちょっとで出来るもんなんだね!」
 作業の様子を見ていた弥十郎が関心したように言う。
「そっちも料理を作るのか?」
 発掘作業する生徒たちのために、料理を作りに来たトマス・ファーニナル(とます・ふぁーになる)が声をかける。
「作ってくれるなら、夕飯用にまわすけど?」
「その方がいいかもな、こっちも温かいもんだし」
「うん、じゃあそうするね」
「ミカエラ、海の中の魚を獲るから電流を流してくれ」
「感電死させればいいのね」
 トマスの頼みにミカエラ・ウォーレンシュタット(みかえら・うぉーれんしゅたっと) はライトニングブラストの電流を海の中に流す。
「―・・・回収に行くわよ。熊さんから入りなさい」
「下の方で魚がひっくり返っているな」
「大丈夫みたいよ、トマス」
「えっ、何?もしかして電気が残っていないか、俺を先に行かせたわけ?」
「男が細かいことを気にするんじゃないわよ。さっさと魚を回収しないさい」
「(はぁ〜。酷いぜ、まったく・・・)」
 扱いの差に不服そうな顔をしながらも、テノーリオ・メイベア(てのーりお・めいべあ)は網の袋の中に魚を放り込む。
「サメがいれば、確保してきてくださいよ!それとせっかくですから、いろんな魚介類を獲ってきてくださいね、坊ちゃんーっ」
 魯粛 子敬(ろしゅく・しけい)は包丁を研ぎながら海の中にいるトマスに言う。
「―・・・ん?今・・・何か妙なものが見えたような・・・。気のせいでしょうかね」
 ちらりと海に見えた三角のヒレが気になりながらも、コンロにフライパンを置くと残酷焼きの準備もする。



「んーっ、真夏の海での作業もいいもんだねぇ」
 ポータラカマスクをつけた緋柱 透乃(ひばしら・とうの)は、恋人をちらりと見る。
「あの透乃ちゃん、さすがにこの格好は・・・」
 見えてはいけない部分だけ隠す貝殻鎧を、彼女のリクエストで着た緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)が恥ずかしそうに俯く。
「私の貝殻ビキニと変わらないんじゃない?」
「いえ、こっちの方が・・・っ」
「(陽子さんは相変わらずか・・・。芽美さんはー・・・・・・)」
 どんな格好で来たか月美 芽美(つきみ・めいみ)の方を霧雨 泰宏(きりさめ・やすひろ)はチラ見する。
「(くぅう〜っ、私と同じダイビングスーツか)」
 セクシーな水着を着てくれない彼女を見た彼は、がっくりと肩を落とす。
「発掘よりも水中での武器の性能を試してみたいわね」
「何て男らしい考えなんだ・・・」
「―・・・何か言った?」
「い、いや別に何も・・・」
 アイスプロテクトを彼女たちと自分にかけると、とぼとぼと海に飛び込む。
「(むっ、やばい)」
 陽子の後姿が予想以上にヤバく、透乃の理性の危険度もヤバイ。
「列車は絶壁の近くにあるんでしたよね」
 そんな彼女の気分に気づかず、奈落の鉄鎖で自分に負荷をかけていっきに沈む。
「見つけました!―・・・あっ」
 振り返った瞬間、岩に紐をひっかけ上の部分がとれてしまう。
「いやぁあああっ」
「どうしたの、陽子ちゃん!?」
「何か浮いているぞ?これってままままさかっ」
「まったく、いつまで持っている気なの?返しなさい」
 貝殻鎧の上の分を掴んで鼻血をふきだした泰宏の手から芽美がパッと奪い取る。
「陽子ちゃん、今いくよー♪」
「きちゃいけません、透乃ちゃん!」
 興奮してバシャバシャと泳いでくる透乃から離れる。
「はい、しっかり結んだから大丈夫だと思うわ」
 さっと陽子の前へ行き恥ずかしさガードをしてやり、貝殻鎧をつけ直す。
「ありがとう、芽美ちゃん」
「ん〜もうっ。後ちょっとだったのに〜」
「透乃ちゃん・・・そろそろ他の生徒も来るし。芽美ちゃんだって、人目が気になるでしょ?」
「むぅ〜・・・」
 見そびれた透乃はしょぼんとする。
「魚を獲っている人がいるわよ。ご飯の心配はいらないみたいね」
 衝撃シーンのことを忘れさせようと、芽美は食欲の方へ彼女の気を向けようとする。
「サメ・・・かしら?」
「普通のサメは背中に三角のヒレがあるけど、あいつにはないね」
「体の左右のヒレはあるみたいよ。尻尾の方がヨットみたいに三角な感じね」
 芽美がピンッと立った尻尾を指差す。
「あ、死んだ魚を回収している人たちのところへ向かっているわ
 そのターゲットにされた者は・・・。
「鮭以外にも、あわびもあるな」
 ―・・・網を持っているトマスたちだ。
「大収穫ね、トマス」
「今・・・・・・岩場の方が光ったような気がするけど?」
 ギラーンと輝く2つの光が3人に迫る。
「熊さん、ちょっと見てきなさいよ」
「えーっ、どうして俺が?―・・・ったく、行けばいいんだろ」
 行かなきゃどうなるか分かっているの?という態度を取るミカエラに負け、テノーリオはしぶしぶその岩場へ近づいていく。
「ありゃ・・・、何もいないけど。上の方にいったか?」
 ザプンッと水面に顔を出し、光波を送る会話用のライトをきる。
「サメか?いや・・・何だありゃ」
 三角形のサメの背びれに似たものがテノーリオに迫る。
 にゃーらん・・・。
「ネコみたいな毛がついているが・・・」
 にゃーらん・・・、にゃーらん・・・。
「ヒレ・・・じゃなくて耳?しかもネコの・・・。ちょっと待て、どうしてこんなところにネコがいるんだ!?」
 にゃららららら〜〜っ。
「海のモンなら、この槍で仕留めて・・・みぎゃぁああぁあ!?」
 トマスと陸に戻ったミカエラのライトニングブラストの電撃に巻き込まれ、ビリビリと痺れ悲鳴を上げる。
「あら、まだそこにいたの?」
「―・・・あら、いたの?じゃないだろっ。ミカエラ姐さん!俺まで感電させないでくれっ」
「どうでもいいけど、そこにいると危ないわよ」
「ほわぁあああぁあ〜!?」
 電撃で倒しきれなかったニャ〜ンズが怒り狂い、テノーリオにニャーンアタックをくらわし地上へぶっ飛ばす。
「現れたね、ニャ〜ンズ!かなりのサイズだから食べごたえありそうっ」
 陽子に対してのムラムラを発散させようと、透乃はマスクをとりガブリと噛みつく。
「ぺっぺっ。柔らかいけど、口の中が毛だらけになっちゃった」
「ん〜っ、にゃぁああぁあ!」
 バチコーンッと尻尾で透乃を叩き、海の中へ沈める。
「ごぶぼぼぼ・・・・・・っ」
 沈みながらも慌ててマスクをつける。
「朧さん、透乃ちゃんを守って!あっ、スルーされちゃいましたね・・・」
 怒りまくっている相手はレイスをかわし、透乃の方へ突進する。
「こうなったら消耗を気にしている場合じゃないですねっ」
「うにゃぁああん・・・」
 ピキピキ・・・カチーンッ。
「―・・・・・・・うぐっ、アルティマ・トゥーレを何度もくらせないと止まらないんて・・・」
 陽子は半分もSPを消費してしまい、カチコチに凍りプカ〜ンと浮かんだニャ〜ンズを見上げる。
「わぁ〜い、大物が獲れたね♪」
 登山用ザイルでギュムッと縛った透乃は、陽子と一緒に地上へ運ぶ。
「じゃあこれ、料理よろしくね。サメだからフカヒレもあると思うよ」
「おぉお・・・これがサメなんですか!?―・・・はぁああぁあっ」
 見たことのない食材を子敬は出刃包丁で鮮やかに切り、三枚に下ろし中骨を取って調理する。
 シュシュシュパッ。
「新鮮なので刺身にしてみましたよ。さ、どうぞ召し上がってください」
「おいしそーっ。いっただきまーす♪んー、シャモと牛肉のたたきの中間みたいな感じがするよ」
「胃に優しい感じですね」
「芽美ちゃんもおいでよっ」
「出掛けに食べてきたのに、また朝食を食べるの?まぁ、お刺身ならいいかしら」
「わっ、またニャ〜ンズがっ。ここは私に任せて先に行け!」
「そうさせてもらうわ」
「どうして海から出るんだ?」
「透乃ちゃんがお刺身を食べないか呼んでいるからよ」
「え、そんな・・・。いや、任せて行けといったんだから、こいつは私が倒さなきゃな!」
 泰宏は放置されてしまうものの、式神【時雨】を呼び出す。
「あいつをやっつけて・・・って、どうして私を!?―・・・や、やめてくれぇええ。私は毛玉じゃなぁあい」
 水に濡れて気分を害した式神に体当たりされ、2匹のニャ〜ンズに尻尾で投げられ遊ばれる。