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太古の昔に埋没した魔列車…エリザベート&静香 前編

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太古の昔に埋没した魔列車…エリザベート&静香 前編

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第6章 ドリルも通さないアダマンタイト採掘Part1

「パラミタ内海の方の料理番は、何人か向こうにいるし。俺はこっちを担当しようかな。あっ、もうすぐお昼になっちゃうね、急いで作らなきゃ!」
 ヴァイシャリー湖の傍に屋台を作った椎名 真(しいな・まこと)は、湖に潜っている人たちのために昼食を作る。
「結構、体力を消耗しちゃってると思うから。簡単に食べやすいおむすびとか、毬寿司がいいね」
「真にーちゃん、お水どこに置けばいいの?」
「えーっと、まだクーラーボックスに入れたまま、屋台の端っこに置いてくれるかな」
「わかったー」
 重いボックスを抱えてよろよろと歩きながらも、彼方 蒼(かなた・そう)はお手伝いをしようと一生懸命に運ぶ。 
「あれ・・・暑さのせいかな・・・、何か目眩が・・・」
「どうしたの、真にーちゃん!」
 ぐらりと倒れそうになる彼の傍にパタパタと駆け寄る。
「だいじょーぶ?にーちゃん・・・ねぇ、にーちゃんっ」
「うるさい、犬コロ」
「へ・・・?」
 いつもの真の様子と違う雰囲気に、蒼はびくっと身を震わせる。
「何だ、この屋台は?」
「うぅぅ、おばけにーちゃんっ」
 真に憑いた椎葉 諒(しいば・りょう)からパッと離れ、屋台の隅っこでぷるぷると震える。
「どうしてこんな時に!?」
 暑い炎天下じゃ甘ったるい香りは・・・ということで、いつもの香水をつけていないせいで、諒に憑かれてしまった。
「おい犬コロ、ここで何をやっている?」
「あうっ!」
「一々怯えるな、そんで質問に答えろ」
「真にーちゃんと一緒に、お料理を作っているんだよー・・・」
 せっかく楽しくお料理するはずだったのに、おばけにーちゃんめ〜っ、と思いつつ小さな声音で言う。
「面倒な時に出てきちまったな。はぁ、メンドクセェ。帰るか・・・」
「あわわ、帰らないでよ諒!後でプリンおごってあげるからさっ」
「何・・・プリンだと?」
 その言葉にピタッと足を止めたかと思うと、彼は屋台の方へ戻る。
「塩味むすびと鮭の毬寿司を作るんだけど、やってくれるかな?」
「ったく仕方ねぇな。どうせ暇だし・・・」
 プリンにつられて仕方なく引き受けることにした。
「で、どうやってやるんだ?」
「もうご飯は炊けているから、御櫃にご飯を入れたらすし酢を入れて、おひらで切るように混ぜて全体になじませてね。あ、ちゃんと透明感が出るまでね」
「注文が多いな、まったく」
「えー、まだまだこれからだよ」
「こんな感じでいいか?」
「うん、そしたら・・・うちわで扇いで一気に冷まして。おひらにご飯をちょっとだけとって、手で摘んでみてさらさらした感じで、ちょっと温かいくらいになるまでね」
 扇風機を使えば楽だが、ぽんっと台の上にだけ置いてそうだし余計な塵とか入りそうだからと、あえて教えずうちわでパタパタと酢飯を冷ませる。
「一口大にとったやつに塩をかけて海苔を巻けばいいのか?」
 なんか変な気分だな料理作ってるなんざ、と思いつつ作ってやる。
「そんな感じかな」
「魚はどうさばけばいいんだ?」
「まず左手にだけ手袋をつけて、包丁で鱗を取ってからお腹の真ん中に包丁を入れて裂くんだ」
「へぇーこうやってやるのか」
 真の指示通りにシャッシャと鱗を取り、腹にスゥと包丁を入れる。
「内臓を取り出したら、そこのバケツの水で洗ってね。その後、血合いの両側に指を滑らせて抜き取るんだよ。やりづらかったらスプーンでもいいよ」
「めんどくぇな、スプーンでやるか」
「で、キレイに洗ったら、頭を落とすんだけど。エラぶたを開けて斜めに包丁を、少し入れて・・・その後にヒレを上げてもう1回切るんだ」
「まだ頭を落とさないのか?」
「裏返してエラぶたに、斜めに包丁を入れれば簡単に切れるよ」
「ほう・・・こうやって落とすんだな」
 指示通りにザクザクトスンと魚の頭を落とす。
「ヒレをあげて同じ角度で切ってから、お腹を裂いた手前のとこから、尻尾の方に上身に軽く包丁を入れて・・・。尻尾のところに切れ目を入れた後に、背骨の上に包丁を合わせて、尻尾の方までズーッと切るんだよ」
「(こりゃ真の指示通りにやらなきゃ無理だな。ていうか3枚おろしって、メンドクセェ)」
「それで背骨に沿ってもう1度、後ろの方まで裂くんだ。本当はハラスとかに切り分けたいけど、皆がタンクの交換とかで戻ってきそうだからここまでにして切り身にしよう。皮と身に間は栄養あるし、皮の方だけ軽く炙ってよ」
「注文が多いな・・・」
「ちゃんとプリンおごってあげるからさ」
 真はご褒美のプリンをダシに、鮭の毬寿司も作らせる。
「そうだ・・・蒼にスポーツドリンクを作ってもらいたいから、俺が伝えた通りに教えてあげてよ」
「あの犬コロにか?はぁ〜・・・。おい、犬コロちょっとこっちにこい」
「―・・・なぁに?」
「いいから早くこい!」
「もう、諒ってばもうちょっと優しく言ってあげてよ。蒼が怯えてるじゃないか」
「ちっ・・・水と塩、蜂蜜とレモンを混ぜてドリンクを作れ・・・。って、真が言っている」
「真にーちゃんが・・・?うん・・・わかったよ」
 さささっと諒に近づかず、クーラーボックスを開けてグラスに水と塩を混ぜる。
「(うう、おばけおにーちゃんこわいよ〜っ。はなれていればだいじょうぶだもん。―・・・わぁ〜、いいにおいがする〜!)」
 ぎゅっぎゅとレモンをボウルの中に絞ると、すっきりとした香りが蒼の気分を落ち着かせる。
 機嫌良くしっぽをフリフリと振り、スプーンですくってグラスに加えると、トロトロの蜂蜜を入れてガラスの棒でクルクルとかき混ぜる。



「だれかもどってきたよっ。タオルどーぞ」
「ありがとう!ふぅ・・・」
 湖から戻っためいたちは蒼にもらったふかふかのタオルで吹く。
「スポーツドリンクつくったんだよ。お塩もちょこっと入っているよー」
「美味しそうだね、かりんちゃんにもあげて」
「たくさんあるよー」
「レモンと蜂蜜の香りがとてもいいですね」
「ここで用意してくれていたのか。ヴァイシャリー邸でもらう手間が省けるな」
「エヴァルトにーちゃん、向こうにおすしとかもあるよ。おばけにーちゃんのおてせいだけどぉおお・・・」
「(ナラカ人が憑いているのか?)」
 無愛想な諒をちらりと見ると、ツンとした態度で軽く睨まれた。
「そこにあるから勝手に食え」
「こら諒!そんな態度取ったら失礼じゃないか」
「きっとあれだよ!店主は無愛想だけど、味はいいっていう店なんじゃない?」
「そういうものだろうか?」
 場の空気を和ませようと言うめいに、店主の態度が気になりつつも、鮭の毬寿司と塩むすびをもらう。
「めいたちもいっぱい食べよう♪はむあむっ」
「ん・・・ドリンクとも合っていますね。美味しいですよ」
「ふぅ・・・お腹もいっぱいになったし、タンクも交換したからそろそろ行こうっ」
 酸素の供給量を呼吸に合わせると遺跡へ戻っていった。
 その頃、ガーディアンを全て倒した生徒たちが採掘を始めていた。
「さっきの通れなかった壁が、通れるようになったよ」
 通れなかった岩の壁にクマラが飛び込む。
「アゾートがアダマンタイトの特徴を書いた紙をもらったんで。これを参考に探してみてください」
「見せてー!」
 玄秀がメモした紙をクマラが覗き込む。
「透明度の高い青色の金属みたいです。加工方法はまだ確定ではないので、分かりませんけどね」
「ビリジアン・アルジーの実験が成功しないと、加工出来ないってことかな?」
「えぇ、そういうことになります」
「実験や金属の採掘も大切だけど、魔列車が引き上げられないと修理出来ないし。走っているところも見れないよね・・・」
「向こうの作業の進み具合も気になりますが、こっちの採掘を済ませましょう」
「うん、今日1日しか道が開かないんだもんねっ。ノクトビジョンでも見えるけど、水中ライトでも分かるかな?会話用に点けてるんだけど」
「それだけでも十分、明るいと思いますよ」
「シュウ、これはどうかしら?」
 鉱石の表面に見えるツルツルした青い部分にティアンが触れる。
「似ていますね・・・本物かどうか迷っている暇はないから。ピックで削りとって、袋に詰めましょう」
「えぇ、考えている時間なんてないもの。違うとしても、学校の資料としておいておけばいいからね」
 ティアンは水中ライトの明りで照らしながら、ピックでカツンッカツンッと削り採掘を始める。