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太古の昔に埋没した魔列車…エリザベート&静香 前編

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太古の昔に埋没した魔列車…エリザベート&静香 前編

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第8章 採れるのは1日限り・・・

「まだ入らないかな。ん〜っ」
「ルカ、あまり詰めるとリュックが破けるぞ」
 ぎゅうぎゅうと押し込める彼女にエースが注意したとたん・・・。
「―・・・あちゃーっ。せっかく集めたのに落っこちちゃう!」
 ビリリッとリュックの底が破けてしまい、こぼれた鉱石を必死にキャッチする。
「破けやつに予備で持ってきたほうに入れたけど。あまり詰め込むなよ」
「うぅ〜、はーい・・・」
「もうそろそろ出ないと、扉が閉まってしまいますよ!急いでください」
「閉じたら出られなくなっちゃうっ。落とさないように上から袋を被せてくれる?」
「うん、せっかく採ったんだからね」
 玄秀に呼ばれルカルカはクマラに手伝ってもらい、荷物をまとめて箒に乗せる。
「ノーン、わたくしの方に袋を!」
「はい、エリシアおねーちゃん」
「持ちきれないのはあたしが持つわ」
「じゃあこれお願いっ」
「投げてくれる?」
 ティアンに持ちきれない荷物を投げられ、菫は両手で紐を掴む。
「もう閉まっちゃう時間なんて〜。もっと採りたかったのにっ」
「タンクの交換にいくだけでも、時間とれちゃいますからね」
 めいとかりんは必死に泳ぎ遺跡の外へ向かう。
「あぁ、やっぱり無理・・・。司くん手伝って」
 真珠は司に手伝ってもらい一緒にガランを地上へ持ち上げる。
「皆いますか?何とか間に合いましたね・・・」
 まっさきに遥遠と脱出した遙遠は、採掘現場にいた生徒たちが無事に脱出したか確認する。
「また数百年後なのかな・・・」
「その頃には、この場所を知る者もほとんどいないでしょうね・・・」
 ゆっくりと閉まっていく扉を、綺人とクリスが眺める。
 ガタァンッと音を立て入口を閉ざした遺跡は再び眠りについた。
 次に目覚める頃には、知る者はほとんどいないだろう・・・。



 湖から上がった生徒たちは、屋台に預けた鉱石を詰めた荷物を、台車に乗せたダンボールに入れる。
「皆〜おかえりなさぁい」
 塩むすびをつまみ食いして口の周りにご飯粒をつけた蒼が、タオルとドリンクを配る。
「水の中、冷たかった?」
「この気温だしヴァイシャリー湖はどうでもなかったけど、遺跡の中は少し寒かったねぇ」
 縁はドリンクを受け取り飲み干す。
「足りるでしょうか〜?」
 魔列車の修理用に足りるのか、優雨が荷物の中を覗く。
「どうかな?でも1から作るわけじゃなからね、優雨さん」
「ヴァイシャリー邸まで運べばいいのよね?」
「一応、こっちで運んでいくが、道の途中まで台車に乗せてくれると、運ぶ時間の短縮にはなるな」
 リュックを落とさないように紐で箒に縛り、ルカルカとダリルが運ぶ。
「クマラ、俺たちも箒で運ぶぞ」
「前と後ろにも1つずつだね」
 よろめきながらもエースに支えてもらい、荷物を背負い箒に乗る。
「しっかり掴まっていてくださいね」
「たくさんあるから、持ってきてよかったね!」
 かりんとめいは空飛ぶ箒スパロウに袋を縛りつけ、スペースがないからと立ち乗りで飛ぶ。
「進むのが遅いけど、ティア・・・どうしたの?」
「こんなにあると箒のスピードも落ちちゃうわよ、シュウ」
「これでもう重量オーバーですの?ノーン」
「うん。夜中でもまだ暑いし早く涼みたい、エリシアおねーちゃん」
「箒の乗せきれないのはこれで全部ね?箒を持ってきてくれている人がたくさんいるから、手で運ぶのが少なくて助かったわ」
 途中で荷崩れしたりしないよう、菫が手早くまとめる。
「僕たちは次の現場に行かなきゃいけないんで、これで失礼しますね・・・。それじゃあ・・・、向こうで会う方は、またよろしくお願いします」
 司はへろへろになりながら、パートナーたちと次ぎなる現場へ急行する。
 ヴァイシャリー邸についたエヴァルトは、魔列車をどう利用するのか気になり御神楽 環菜(みかぐら・かんな)に訊ねる。
「なぁもしかして・・・。魔列車を引き上げたら、列車から変形できるイコン作って、“蒼空特急隊計画”なんてやる気か?専用列車でのイコン輸送用地下鉄とか・・・・・・」
「今のところ、その予定はないわね」
 期待に満ちた眼差しを向ける彼の希望は一瞬にして砕かれた。
「エリザベートや静香とラズィーヤの意見も聞かないといけないのよ」
「それもそうか・・・。出資者な上に金属と列車の場所を発見したのは、百合園の校長だしな」
「まぁ・・・、そういうことね。現場状況を把握しなきゃいけないし、彼が待っているからもう行くわ。また何か聞きたいことがあれば、携帯に連絡してちょうだい」
 環菜は話を終えると御神楽 陽太(みかぐら・ようた)のところへ戻っていった。
「そいえば彼氏が出来たんだったな。俺も次の現場に行くか」
「あら、どこか行くんですの?」
「他の作業があるからな」
「いってらっしゃーい、エヴァルトちゃん」
 アダマンタイトを仮の研究室へ運んでいたエリシアとノーンが見送る。
「そうだ、お礼言わなきゃ!」
 エリザベートに出資してくれたお礼を言うとネット電話をかける。
 ポンポポンポンッ♪
 トゥルルル〜・・・。
「エリザベートちゃん、環菜おねーちゃんにお金を貸してくれるんだよね?ありがとー!すごく喜んでたよ!特におにーちゃんがね、いっぱいありがとうって言ってたよ」
「アダマンタイトや魔列車に興味があったですけどねぇ〜。せっかく出資したんですから、完成させてもらわないと困りますぅ〜」
「うん、わたしたちも協力するよ!鉱石をたくさん見つけたから、環菜おねーちゃんたちに連絡するね」
 電話を切るとノーンは陽太にかけて環菜とグループ会話する。
「もしもし?陽太おにーちゃん、環菜おねーちゃん。あだまんたいとを含んだ鉱石を見つけたよー」
「修理出来るくらい採れました?」
「うーん・・・たぶん足りるんじゃないかな。列車の方は見に行っていないから分からないけど」
「報告ありがとう、ノーン」
「また何かあったら連絡するよ。じゃーね」
「ノーン、電話終わりましたの?」
「終わったよ、残りを中に運んじゃおう」
 電話を切ったノーンは箒に乗せた鉱石を仮の研究室へ再び運び始める。



「あの・・・静香、ちょっといい?」
 2人の校長に頼み込もうと、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)はまず静香に声をかける。
「何かな?」
「魔列車を環菜に譲ってあげてほしいんだけど・・・」
 彼女の言葉に静香は黙って、考え・・・。
「―・・・さすがに個人のものとしてあげることは出来ないんだよね」
「パラミタ横断鉄道を作るっていう夢を叶えてあげたいの」
「叶えるといっても、あげることが全てじゃないよ。エリザベートさんもきっと、同じことを言うと思う」
「でも・・・」
「皆で頑張って発掘したり修理するんだし。作るといっても、それを所有したいってことにはならないよ?いつか横断出来るように、その夢のお手伝いをしてあげるだけでも、喜んでもらえるはずだよ」
「そうよね・・・。じゃあ、その手伝いをしてくるわ」
 環菜の夢を叶えるために、美羽は作業現場へ手伝いに向かう。