シャンバラ教導団へ

百合園女学院

校長室

薔薇の学舎へ

太古の昔に埋没した魔列車…エリザベート&静香 前編

リアクション公開中!

太古の昔に埋没した魔列車…エリザベート&静香 前編

リアクション


第4章 侵入者たちよ・・・倒さねば先へ進めぬぞ ステージ3

「ふぅ、やっと追いつきましたね」
「ここまで泳いでくるのに、だいぶ時間がかかったわ・・・。遺跡の中が水中じゃなかったとしても、ずっと走っていける距離じゃないし・・・」
 玄秀とティアンがヴァイシャリー湖から遺跡に入り追いつくまで、1時間以上かかってしまった。
「最後のステージと合わせて、後200体いるってことよね」
 ティアンはバスタードソードの柄を握り突きの構えのまま、大人2人が並んで通れるくらいの幅の通路へ入る。
「こいつがガーディアン?何なの、この硬さ!大きく剣を振る斬りは不利ね」
 細い身体を貫こうとするが、その鋼鉄のボディーになかなか刃が通らない。
「見た目と違って、かなり頑丈だわ」
「・・・・・・ねえ、ティア。このぞろぞろいる連中を、全部1体づつ相手にするつもりなの?」
 メジャーヒールですぐに回復されてしまい、まだ片手で数えられるほどしか破壊出来ない様子を見て、玄秀は顔を顰める。
「し、しょうがないじゃない。全部倒さないと先に進めないっていうし!」
「ヒールの使える固い敵を、1体1体殴って黙らせるなんて効率が悪すぎる。範囲魔法で一掃するから集めて来て」
「(簡単にいってくれるけど、攻撃がかなり重いのよね)」
 囮役を引き受けたティアンは、女王のバックラーで鋼鉄の武器をガードしつつ敵を集める。
 水の底を進み、1撃受ける度に盾から振動が伝わり腕が痛む。
「(この水圧じゃ、持久戦は厳しいわ・・・)」
 歴戦の防御術で受け流しても、陸上での戦いよりも疲労が激しい。
「天井まで水位があるし、感電しやすいから撃たないと・・・」
 ターゲットの真上に九曜の魔法光陣を描き、円状に九曜召雷陣“サンダーブラスト”の雷を撃ち下ろす。
 落雷をくらったロボドールたちはギギ・・・と鈍い金属音を立て、メジャーヒールで修復し始める。
「まったく効いていないわけじゃなさそうだけど、あれだけ集まると回復するスピードも早いですね」
「うぅ・・・、私は痺れ損ね。まだついてきてるのもいるし」
 直撃はくらわないものの、あまり魔法光陣から離れてしまうと、敵のターゲットにされているせいで、避難先までついて引き連れてしまう。
「あら、もしかしてわざとですか?」
 ミゼは青色の瞳をキラキラと輝かせ、同類を発見したというような眼差しをティアンに向ける。
「はぁっ!?違うわよ!」
「いいんですよ、隠さなくっても。最初は恥ずかしく思っても、そのうちに他の人に気づかれても平気になると思いますよ?」
「だから違うってば、私にそんな趣味ないわっ。シュウ、誤解しないでよ、私は違うからね!」
「―・・・いったい何のことを言っているの、ティア・・・」
 2人の会話の光波が届いていない彼にはさっぱり分からず、必死に叫ぶティアンの姿に首を傾げる。
「とりあえず修復される前に倒さなきゃ」
「いっきに片付けるか。竹野夜、ロボの破壊を手伝ってくれ」
「りょーかいよ、つぐむちゃん」
 ロボドールの身体に傷をつけ、致命傷となる回路や線を我は射す光の閃刃を放ち露出させようとする。
「よし、放電実験で破壊するぞ!」
 敵の位置がバラバラにならいようにつぐむはわざとらしく言うと、装着している機体の加速で真珠の腕を掴み離れる。
「さぁ、そうぞ〜つぐむ様っ!!」
 囮に残されロボに囲まれているミゼがカモーンッと両腕を広げる。
「あ、あぁああっ、ふぎゃぁああん」
 電気の渦に巻き込まれたミゼはパタンッと地面に倒れる。
「まだ動いているやつがいますね。酸素がもったいないんで、さっさと壊れてください」
 ショートしている者たちを回復しようとしている敵に、玄秀が九曜召雷陣の落雷で留めを刺す。
「いやぁあ、つぐむ様じゃないといやぁああ!!」
 ミゼはロボドールたちの爆発に吹っ飛ばされながら、つぐむの放電実験を求めるように叫ぶ。
「何だか怒っているようですけど?巻き込んでしまったからでしょうか」
 騒ぐミゼにライトを向ける。
「あぁ、モセダロァのことは気にするな」
「逃げもしなかったので、魔法を撃ってしまいましたけどね」
「むしろ感電しに行っているような感じだからな」
「じゃあ僕も気にしないことにします」
「この・・・・・・放電プレイ。やめられない・・・ですね、ウフ・・・フフフ・・・・・・」
 もうミゼは完全に便利な囮で、ズタボロになっても誰からも心配されない子になってしまう。
「(そのうちナラカに直行するんじゃないの・・・)」
 ギシギシと音を立てて動こうとする敵を破壊しつつ、囮な生贄扱いを受けているミゼをティアンがチラリと見る。



「ちょっと喋るみたいだけど、命令にだけ忠実に動くタイプで自我らしいものはないみたいだね」
 壊れたまま言葉を繰り返すガーディアンを、クマラがつんと指でつっつく。
「こっちがはっきり見えるわけじゃないみたいだから。ルカが先に行くね」
 ダークビジョンで暗闇でも見えるルカルカ・ルー(るかるか・るー)がスイスイと泳ぎガーディアンを探す。
「(ライトをつけっぱなしにすると、途中で電池が切れてしまうから消して後についてきてくれ)」
 ダリルは光精の指輪の精霊を光源にし、離れている生徒たちにテレパシーを送る。
「囲まれて襲撃されないように気をつけないとな。キャンディーのプレゼントをもらいたくないし、料理されるのもごめんだ」
 ガーディアンが潜んでいないか、水の中を明りで照らす。
「何だ・・・この音は」
 ギギ・・・ギシッ、カタカタカタ・・・ガタンッ。
 歯車が動くような音が聞こえ、天然の岩のようにカモフラージュされた扉が開く。
 中を見ると子供が1人だけ入れるようなサイズだ。
「わわっ、こっちにくる!」
 トイフェル・ヘンゼルに顔面を狙われ、クマラは慌てて水中銃を撃つ。
 カカカンッ。
 矢のように細長い弾丸がキャンディースティック型の得物にあっさり弾かれてしまう。
「ぎゃぁああ、うっそぉお!?」
「容易く切断出来ないなら、群れを集める餌にでもなってもらいましょうか」
 遙遠は氷製のショートソードでロボドールの片腕の関節に突き立て、ターゲットを彼に変えた敵の反撃をドルフィンに乗ってかわす。
 ロボたちがギョロリと彼の方へ振り向きターゲットロックオンする。
「後は俺とルカが片付ける」
「では、お願いしますね」
 集団で袋叩きしようとするガーディアンの群れの中へ、ドルフィンのスピードを利用し傷を負わせた1体の背を氷の刃で押しやり、ダリルの声に頷き攻撃に巻き込まれないようにすぐさま離れる。
「ルカ、頭の上辺りに剣を持ってくれないか」
「ん?こうかな」
「もう少し平行にする感じだな。―・・・よし、その位置でいい。いけっ、ルカ!」
 ダリルはカタクリズムでルカルカの剣をスクリュー回転させ、彼女ごと群れに突っ込ませる。
 明りの傍から離れている彼女の位置を見つけられないまま、大剣の迅雷斬で機体を損傷させられる。
「ルカに特攻させるのーーっ!?」
 高速スピードで回転するカキ氷機のように、鋼鉄のボディーをガガガッガリガリッと削る。
「ふにゃぁあ〜ん・・・酷いわ・・・」
 彼女は目を回しながら水の底へ沈んでいく。
「まぁあれだ、細かいことは気にするな」
 メジャーヒールで修復しようとする者たちを機能停止させるべく、蒼き水晶の杖を掲げ・・・。
 機体を岩に叩きつけ、荒れ狂う念力の餌食にする。
「んもぅ、ルカを飛ばすなんて!」
「ねぇねぇ、ルカ。遊園地のアトラクションだと思ったらいいんじゃない?」
「ひぃい〜ん、こんなの過激すぎるわっ」
 ニコニコ笑顔で言うクマラに簡便して!というふうに金色の双眸に涙を浮かべる。
「何にしても倒さなくては採掘が出来ないからな」
「じゃあティアを囮に集めますから、よろしくダリルさん」
「間違っても私にぶつけないでよね」
 スクラップ状態にされたガーディアンの悲惨な光景を見たティアンがぼそっと言う。
「シュウ、広いフロアに集めたほうがいい?」
「うん、その方が倒しやすいかも」
「―・・・・・・っ。(これだけ集まると無傷っていうわけにはいかないわ)」
 致命傷にはならないものの、鈍器が足を掠めじわりと血が滲む。
 細い通路に避難したティアンはライトをチカチカと点滅させて合図を送る。
「大丈夫みたいだな」
 合図をダリルがダークビジョンで確認する。
「そしてルカが突っ込むのね。早く倒すためだもの、頑張るわ・・・しくしく」
「剣じゃなくって拳で移動しながら壊してみるか?」
「念力で足につけたフィンを押してもらったり、ウォータブリージングリングを引っ張ってもらうならその方がいいかも。鈍器の直撃が怖いから、取り扱いに注意してね♪」
「こうして見ると、リモコンで操作しているみたいだな」
 格ゲーで遊ぶかのように金剛力で岩場に殴り飛ばすルカルカを操作する。
「ちょっと手が痛くなってきたんだけど!」
「ヒールを使われると面倒だし、もうちょっと頑張れ」
 エースが命のうねりでルカルカの拳を治してやる。
「念のため精神力を回復させておくな」
 我は与う月の腕輪でダリルの精神力を回復させておく。
「もうそろそろいいな、よしこっちに戻ってこさせよう」
 ギューンッとルカルカを自分の傍に待機させると、ダリルは敵を光の精霊の明りで照らす。
「このステージはこれで全部でしょうかね」
 それを目印に玄秀は円状に雷を落とし、ガーディアンを完全にショートさせる。
 機能が停止したロボドールはプシューン・・・と音を立てて動かなくなった。
「魔方陣みたいなのが出たよ!次にいけるみたい」
 敵を引き寄せてもらっている間に、奥の方で待機していためいが玄秀たちを呼ぶ。
「次ぎのステージをクリアすれば、やっと採掘出来ますね」
「ルカも拳が砕けちゃわない程度に手伝うね♪」
 またダリルに操作されるのかな、と思いつつ最後のステージへと進んだ。