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リアクション
第2章 侵入者たちよ・・・倒さねば先へ進めぬぞ ステージ1
「ちょっと待て、アゾート。100年に1度開くってどこで聞いたんです?遺跡の防御機能についての文献などあれば、教えて貰えますか」
なぜアゾート・ワルプルギス(あぞーと・わるぷるぎす)が知っているのか気になり、ヴァイシャリー湖の遺跡について聞こうと高月 玄秀(たかつき・げんしゅう)が呼び止める。
「え・・・?数100年に1度・・・だね。うーん・・・賢者の石関連の伝承を調べていて、イルミンスールの森に住むヴァルキリーの長老から聞いたんだけど」
「その長老は今、どこにいるんですか・・・?」
「ううん、運よく会えた感じだし。所在は誰も知らないんだよね。でも興味深い感じだったから、今も覚えているよ」
「なるほど・・・。その本にガーディアンや防衛機能のこととかは聞きました?停止させる方法などがあれば知りたいんですけど」
「どうかな、そこまで聞かなかったし。たぶんだけど停止出来るとしても、創造主以外には止められないじゃないかな?アダマンタイトはとても貴重な金属だと思うし。それを盗掘させないようにするわけだから。そんな方法を残す愚か者はいないだろうし、ボクだったらそうするね」
「そう簡単に手に入れられるほど、守りは甘くはないってことですね。容易く採掘出来るなら、すでに他の者が盗掘しているでしょうから」
採掘するために手っ取り早い方法がないものかと思ったが、それで取れるなら遥か昔に盗掘されていただろう。
「特徴を紙に書いておいたから、皆にも見せてあげてね」
「油性・・・ですよね?」
「うん、海水の中だからね。一応、耐久性のある油紙に書いたから、長持ちはすると思うよ」
「ありがとうございます、アゾート」
「(何だか私って、空気ですね・・・)」
熱心にアゾートと情報交換する彼を軽く睨み、ティアン・メイ(てぃあん・めい)は不機嫌そうな顔をする。
「話は終わりましたか?今日しか入り口が開かないんですから、早く行きますよ!」
表には出さないものの、姉代わりのような自分を放っておいて、2人だけで話している感じだった。
嫉妬したのか気分を悪くした彼女は、さっさと先に行ってしまう。
「(何か怒っている感じがしますけど・・・。どうしたんでしょうか?)」
ムッとして背を向けるティアンの後を追いかける。
「特殊な金属か・・・。前校長が頼み込んだらしいし、1度亡くなる前は世話になったしな」
エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)はダイビング用の装備をし、トボンッとヴァイシャリー湖に飛び込む。
「あれ?先に飛び込んじゃった人がいるね」
百合園の水着にバニーガールの要素を足したデザインの、ラビット隊のパイロットスーツ姿をした葦原 めい(あしわら・めい)も湖の中へ入る。
「(確か、タンクは3時間分でしたよね。吸いすぎないように気をつけなきゃ・・・)」
彼女と同じパイロットスーツを着た八薙 かりん(やなぎ・かりん)はレギュレーターで呼吸の調節をする。
「この機会を逃したら、一生入れないってことだよね」
「えぇ。再び開く頃には、その場所を記憶している者もいないでしょうからね」
クリス・ローゼン(くりす・ろーぜん)はフィンをつけると神和 綺人(かんなぎ・あやと)の後についていく。
「なんだかおもいっきり沈んでいっているような気がするが・・・」
「(ん〜・・・重量オーバーなのかしら)」
湖に入ったガラン・ドゥロスト(がらん・どぅろすと)を、サキコキネシスの浮力で竹野夜 真珠(たけのや・しんじゅ)が持ち上げようとするが、どんどん沈んでいってしまう。
「手伝いましょうか?」
「うん、お願いね。1人だとキツイわ・・・」
「うわっ、精神力がどんどん減っていくような気がっ」
「後、ちょっとで入り口につきそうよ!」
重量級の彼を月詠 司(つくよみ・つかさ)にも手伝ってもらい運ぶ。
「(これが扉かな?閉じたままだと岩にしか見えないかも)」
閉ざされたままじゃ、どこか入り口か分からないね・・・と、めいが扉に触れる。
「百合園にいても気づかないですよね・・・。―・・・て、聞こえますか?」
マスクと一体化した水中ライトに接続したマイクで、かりんがめいに話しかける。
声がライトに伝わり、めいのスピーカーに発せられる。
「うん、聞こえるよー!」
光波を受信した彼女にだけ骨伝導で聞こえた。
「(明りがついていないね、真っ暗だよ)」
「侵入者を排除されるためにカーディアンが作られたなら、向こうは私たしが見えなくても音を頼りに襲ってくるでしょうね」
闇の中から不意打ちされないよう、クリスがめいたちに光波を送り声をかける。
「ともあれ・・・採掘する体力も残さなければいけませんし・・・」
「各エリア、分担して倒した方がいいということか?」
「なるべくならですけどね、エヴァルトさん。今日中に採掘を終わらせるわけですから。少し休んだ後とか・・・まだ頑張れる人は戦ったりするといいかもしれません」
「―・・・なるほどな。まぁ、かなり頑丈なヤツらしいな。このエリアは俺がライトをつけたまま相手をしてやる。それならがガーディアンの位置が分かるし、ローゼンさんたちが泳ぐ音を聞かれたとしても、位置まではすぐにバレないだろう?」
「それなら倒しやすいですし・・・ノクトビジョンがなかったり、ダークビジョンのスキルがなくても分かりますね」
エヴァルトが点けているライトの明りを頼りに、静かな遺跡に潜むガーディアンの襲撃を警戒する。
「人工に細工されているはずですが、まったく分からないですね」
天井や壁を見ても、天然の岩にしか見えない。
「扉の裏側に何か書いてあるな」
光の指輪の精霊を明り変わりに、ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)は水中カメラで周りを撮影する。
「来客には甘いキャンディーをプレゼント。丸々と太らせた者をじっくりと料理しておもてなし・・・?」
文字を指でなぞりながら読み、その言葉の意味が何なのか考える。
「この来客は、たぶん遺跡に入った者のことだな。ていうことは・・・俺たちか。プレゼントと料理は・・・これから起こることに関係しているのかもな」
口元に片手を当てて、童話のような言葉の謎を解こうとする。
「ねぇねぇ、水の色が凄くキレイだよ。何か青の洞窟みたいだね、かりんちゃん」
「えぇ・・・。夏の観光スポットとしてはイイ感じですが。今回は遊びに来たわけじゃないですし、気をつけませんと」
「まぁ、そうなんだけどね・・・」
ゆっくり遺跡の中を見てみたい気もしたけど、めいは任務遂行を最優先させなければと彼女の傍に寄る。
「―・・・アヤ、敵の気配が近づいていきます!」
「海底の方から近づいてきてるよ」
「(ほう・・・、海底か)」
騒ぐなとエヴァルトが口元に人差し指を当てる。
「(直撃を受けても、俺は他のヤツほどはくらわないだろうからな)」
クリスと綺人の視線の先へ目を移し、戦闘用ドリルで少年型のガーディアンの身体を抉る。
ドリルは高速回転しギュガガガガガッと荒荒しく唸り声を上げ、硬質化した肌を叩くように水が飛び散る。
「(体格のわりに硬いやつだな・・・)」
得物の先はターゲットの背に見えかかっているものの破壊しきれない。
暴れるロボドールに足を蹴られながらも耐え、海底から迫るドールたちに向かってジャイアントスイングでぶん投げる。
「ガーディアンが回復していますよ!しかもあの数多・・・すぎじゃないですか!?」
目を凝らして水面を見たクリスが思わず綺人に言う。
「うわっ、こっちにくるよ」
2人の光波の明りに気づいたトイフェル・ヘンゼルが鋼鉄のスティックキャンディーで襲いかかる。
「(おまえらのターゲットはこっちだ)」
損傷が癒えきらないドールの群れにドリルを突っ込み、エヴェルトは自分の方へ引き寄せる。
「(―・・・くっ、さすがに避けきれないか)」
背後を狙われイナンナの加護で察知してもかわしきれず、じわじわと身体に痛みが蓄積していく。
「(やばそうですね、支援してあげなくては!)」
彼を助けようとかりんが命のうねりで治してやる。
「(ダメージの蓄積は八薙さんが回復してくれるみたいだな。このままあの細い通路にやつらを誘い込むか)」
チカチカとライトを点滅させて呼び寄せ、通路に侵入するターゲットどのも位置を確認する。
「(スキルで治る前に砕いてやるっ)」
鋼鉄の得物を投げつけられながらも、胴体にドリルをぶち込む。
砕かれた破片が壁にぶつかり、ガガガッと騒音を響かせる。
その音を聞き侵入者を排除しようと、並の少女の5倍ほど大きなサイズのドールが、鋼鉄のフライパンで彼の頭部を狙う。
間髪ドリルでガードし、鈍い金属音がドガンッと響く。
「(んっ、ぐぁ!)」
食材をひっくり返すように得物ごとフライパンで投げられる。
そう何度もくらってられるかと身を屈め、アクセルギアの加速でトイフェル・グレーテルの脇をくぐり抜ける。
相手の四肢を狙おうと、アクセルギアを30%程度の出力に調節し、相手の攻撃を受け流し翻弄しようとする。
ギギギギィ・・・ッ。
「(1撃では砕けないか・・・)」
ロボドールの足にドリルを突き立て破壊しようとするが、相手もかなり打たれ強く、そう簡単に倒れてはくれない。
ドガンッガンッ。
得物でフライパンをガードするものの、どんどん水の中へ沈められていく。
「(あのドールを接近戦で叩くためには、まず亀裂を入れてやりらなければ!)」
かりんは凍てつく炎で相手の注意を自分へ向け、歴戦の魔術でターゲットの身体にヒビを入れる。
「めいさん、回復される前にっ」
「おっけー♪てぇええい!!」
彼女がロボドールに入れたヒビを目掛け、則天去私で殴り両足を砕く。
「壊れながらも、まだ反撃しようとするとは・・・」
めいの頭部を叩き潰そうとフライパンを握る手をエヴァルトがドリルで破壊する。
「それだけ命令に忠実なんだろうね」
沈んでいくガーディアンをめいが見下ろす。
「まだいるみたいだぞ。どこかでこっちの様子でも見ていたのか?」
「どうするの、エヴァルトちゃん」
「見られていたなら、通路に誘い込むのは無理だな」
「僕たちが亀裂を入れるから、そこを狙ってみるとかさ」
「ふむ、俺と葦原さんが壊せばいいか?」
「うん、お願いね。それじゃあクリス、いっぱい走る時みたいに、スノーケルで酸素を吸う量を調節して」
「はい・・・っ!」
クリスは殺気看破で迫る相手の気配をたどり、綺人と2人で壁を蹴りバーストダッシュで間合いを詰める。
波状攻撃をしかけようとガーディアンたちを囲み、歴戦の必殺術で亀裂を入れようとする。
「キャンディースティックやフライパンでガードされてますよ、どうしますかアヤ」
「うーん・・・下から仕掛けてみようか?」
正面や背後・・・両サイドと頭部を狙っても防がれるなら、下から攻めてみようとカーディアンたちの下へ泳ぎ、壁を蹴って弾丸のように突っ込み平突きをくらわす。
「回復する前に倒しちゃって!」
沈んでいく者を胴にビキキッとヒビを入れる。
「グレーテルは俺がやる。葦原さんはヘンゼルの方を頼む」
「分かった、任せてっ」
うさぎが鉄拳を繰り出すかのように殴り、機能を停止させる。
「ふぅ、これで何十体目なんだ?」
無限に出てくるんじゃないかと思うほどの数にエヴァルトが顔を顰めた。
「もう気配は感じなくなりましたね」
「そうだな、奥に進んでみよう」
クリスの声に軽く頷き奥へと泳ぐ。
ライトを点けながら進んでも、もうガーディアンが襲撃してくる気配はない。
「魔法陣のようなものが水の中に見えるな」
「えぇ、このステージのヤツは、全部倒したということですね」
「その真下辺りの水の底がぼんやりと光っているようだが・・・そこにもあるのか?2つの陣の間を通れば、次の場所への転送装置のようなものかもな」
「ひゃわぁあ!?消えちゃったよ!」
試しにエヴァルトがその中へ入ってみると一瞬で姿が消え、驚いためいが声を上げる。
「たぶんだけど、この先の場所へ移動したんじゃないかな?」
「へぇー・・・めいも入ってみようっ」
目の前で起きたことを考えるとそうとしか思えず、綺人の言葉になるほどと頷き陣の中へ入る。
「それでは私も!」
「皆さん行ってしまいましたね、アヤ」
「僕たちも行こう、クリス。何だかちょっとしたゲームみたいだね。てことは、またガーディアンがいるのかな・・・」
2つ目のステージの道を開いた綺人たちは、次ぎなるエリアへと進んだ。
「皆、結構ガンガン戦っちゃう派なのかな?」
クマラ カールッティケーヤ(くまら・かーるってぃけーや)はノクトビジョンで視界を確保し、ガーディアンの停止スイッチとかないか、水の底に沈んだ残骸をピッキングで調べる。
「クマラ、何か分かったか?」
「ううん・・・造りが複雑すぎて、見つからないよ・・・」
ロボドールの停止方法をエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)と一緒に探すものの、それらしいものは発見出来なかった。
「でも、そんなのがあったらさ。もう誰かが採掘しちゃって、残ってないかもしれないよね」
「確かにな・・・。簡単に採れるなら、こんな目に遭うヤツだってないだろうし」
ガーディアンにやられたのか、明らかに湖の生き物じゃなさそうな骨をエースが見下ろす。
単純にクリア出来る方法あれば数百年前に侵入した者の亡骸が、大量に転がっているはずはないとふうに呟く。
アダマンタイトを奪われないように守る者を造ったなら、当然数十体じゃなく大量に配備しているだろう。
「迂回路とか隠し通路もなさそうだよ、エース」
「まぁ、ほぼ1本道だから目印も必要なさそうだから、道くらいは大丈夫だろ。とりあえず調べたことを、他の人も教えようか」
これも1つの情報だし教えてあげようと、2人は先に進んだ皆の後を追う。
先に遺跡へ入った者たちが次ぎのステージに進む頃、情報提供してもらおうと、アゾートと会話をしていた玄秀はティアンと共に遺跡へ向かう。
「遺跡の中にはガーディアンがいるらしいから。動きやすいようにダイビングスーツでいいですね」
ヴァイシャリー邸でダイビングスーツに着替えてきた玄秀はタンクを背に固定し、湖の中へ飛び込む。
「話している間に、他の皆はかなり進んじゃっているんじゃないの?」
「ティア・・・、ヴァイシャリー邸の時といい、何か不満でもあるんですか?」
ムスッとしている彼女の顔を覗き込み、理由が分からない彼はどうしてご機嫌斜めなのか聞く。
「いいえ、別に!ただでさえスロースターターなんだから、急がないとね」
「(う〜ん・・・。まぁ、しばらく経てばそのうち機嫌も直るでしょうし。ティアの言う通り、先に行った人たちに早く追いつかなくては・・・)」
チクッとトゲを刺すように言うティアンの様子が気になるものの、今は皆に追いつかなくてはと遺跡の中へ入る。
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