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リアクション
☆
『魔王軍』と『勇者』相田 なぶら達はDトゥルーとの戦いを続けている。
状況は劣勢だ。
「大丈夫か、瑠璃!!」
なぶらは叫んだ。
「だ、大丈夫なのだ……っ!!」
なぶらとカレン・ヴォルテールが攻撃の準備に集中している間、時間稼ぎ瑠璃の仕事だ。
そこに、クリームヒルト・ブルグントも加わって接近戦を挑む。
クリームヒルトは魔鎧になる前は剣の花嫁だった。その頃の光条兵器のロングソード『ブライド・オブ・ソウル』を『バキュー夢』で作り出し、攻撃を繰り出している。
「ふん、ぬるいな!!」
だが、接近戦を挑んだ二人を立てから発する闇の弾で難なく弾き飛ばすDトゥルー。何度やられても戦いを挑む二人の気力は充分だが、やはり実力の差は歴然だ。
「ちっ!!」
シュヴァルツ・ヴァルトが銃撃で二人を援護する。魔王軍のリーダーであるジークフリート・ベルンハルトも魔法の炎でそれを手助けした。
「なかなやるじゃないか!!」
そこに、シュリュズベリィ著・セラエノ断章も雷術を加え、威力を増す。
しかし、それらの魔法はすべてDトゥルーの盾と鎧に弾き返された。
「ジークさん!」
ミシェル・シェーンバーグは叫ぶ。『たいむちゃんの時計』や『歴戦の立ち回り』で仲間のサポートをしていたミシェルだが、次第に劣勢に追い込まれているのは明らかだった。
「つまらんな――これで終わりだ!!」
Dトゥルーはそう吐き捨てると、強力な魔力を込めた剣を一直線、真横に薙いだ。
「うわあああぁぁぁーっ!!!」
大きな衝撃波が魔王軍となぶら達を襲い、陣形が崩されていく。魔王軍のメンバーと共に、元魔族6人衆のウドも破壊されていく。
一瞬の静寂の後、王の間に立っているのはDトゥルーだけだった。
「――この程度か……」
興醒めしたように、一行に背を向けて玉座へと向かうDトゥルー。
そこに、声が響いた。
「はい、私の術ではこの辺が限界だったようです。それでは、ここから皆さんの本気をお楽しみ下さい」
「何っ!?」
Dトゥルーが振り向くと、そこには今しがたDトゥルーの攻撃で無様に倒されたはずの『魔王軍』となぶら達が立っている。
声をかけたのは、ミシェルと矢野 佑一に同行していた狐の獣人 カガミ。ジークフリートのパートナーであるクリームヒルトのミラージュと共に、なぶらやジークが攻撃の準備に時間をかけている間、瑠璃と共に幻術で時間を稼いだのだ。
「へへ……やったのだ!」
臨場感を出すために、瑠璃だけは本物。接近戦でDトゥルーの気を引いている間に、なぶらやジークは戦闘態勢を整えていた。
「ふはははは! 今度はこっちの番だ!!」
ジークフリートの叫び声が王の間に響く。
禁じられた言葉と絶対暗黒領域を組み合わせた魔法の詠唱を始めると、Dトゥルーの足元に巨大な魔方陣が出現する。蒼黒い炎がちらちらと舌を出し、今にも襲いかかろうとした。
「だが、その前にこっちだ」
シュヴァルツは魔弾『タルタロス』を込めた魔銃から、歴戦の必殺術を放つ。
「ぐうううっ!!」
それを辛うじて盾で受け止めたDトゥルー。魔方陣から出さないための足止めとしては充分だ。
「はい、ちょっと失礼しますよ」
と、そこにブラックコートと迷彩防護服で気配を消した佑一が機晶スタンガンを放つ。バチンと始める音がして、Dトゥルーの動きを封じた。
「佑一さんっ」
ミシェルが声をかけるが、プリムラ・モデスタがあまり前に出ないようにとそれを制する。
「……危ないから、ああいうのは野郎どもに任せておけばいいのよ」
佑一の攻撃にひるんだDトゥルーに、クリームヒルトがウドから借り受けた機晶爆弾が炸裂する。
「ふん……まがいものの光条兵器とはいえ、面白かったぞ」
クリームヒルトが一直線に投げつけたロングソード、ブライド・オブ・ソウルが機晶爆弾を直撃し、爆発を起した。
ジークフリートの魔方陣に、さらに禁じられた言葉で魔力を増幅したセラが、助力を加える。
「いくよ……ジーク!!」
「おお……面白い、我が魔王軍の力、とくと見よ!!」
ジークフリートの魔方陣の上にセラのサンダーブラストが走る。炎と雷、二つの力は強力な爆発力を持って、Dトゥルーに襲い掛かった!!
「ブラウ・エクスプロージョン!!!」
ジークフリートとセラの合体魔法がDトゥルーを大爆発に巻き込んでいく。蒼黒い炎と稲妻が王の間中を駆け巡り、爆風と熱波が一行の髪を揺らした。
「今だ!! カレン!!」
そのチャンスを活かさないわけにはいかない。剣に光術を集中させていたなぶらが同じく無数の光術の弾を待機させていたカレンに合図をした。
「おら、外すんじゃねぇぞ!!」
一瞬で凝縮された光術がなぶらのシュトラールに集中していく。
かつてなぶらが編み出した光術と剣術の必殺剣は、自分ひとりで光術を展開し、それと共にライトブリンガーで切り裂く攻撃だったが、光術の展開に時間がかかりすぎることと、光術の操作が煩雑で、剣に集中できないという欠点があった。
その欠点を補うため、なぶらよりも魔法が得意なカレンに頼んで、光術の操作のほとんどを任せたのである。それにより、自分は剣とわずかな光術に集中すればいい。
のだが。
「おうっ!? これ、意外と……キツイぞ……!!」
なぶらは驚きの声を上げる。専門の魔法職であるカレンが集めた光術は、なぶらが自分で操作するものとは格段に威力が違う。さらにそれを剣先に集中させたことで、威力も格段に上がったが、取り扱いが非常に難しい。うっかりすると暴発してしまいそうだ。
「うっせぇ!! それくらいできなくって、何が勇者だよ!!」
カレンぼ叫びになぶらは苦笑し、ジークフリートのセラの合体魔法が炸裂した直後のDトゥルーに突進した。
「いくのだ、なぶら殿!!」
瑠璃の応援が背中を押す。なぶらは、強烈な光を放つ剣を振り下ろした。
「くらえ、俺の必殺技パート2! シャイニング・ブレイク!!」
なぶらが放った剣は正確にDトゥルーを捉え、合体魔法の爆発の中にさらに光の爆発を起した。一点に凝縮された光の塊が炎と雷と作用してDトゥルーの身体を光の中に砕いていく。
爆発と光の奔流の中、Dトゥルーは叫んだ。
「――見事だ!! ならば、こちらも本気でいこうか……!」
☆
「え?」
「何!?」
その場の全員が、戸惑いの声を上げた。
Dトゥルーと戦っていた七誌乃 刹貴と四谷 大助は、緋桜 ケイやソア・ウェンボリスのサポートもあり、Dトゥルーと互角の戦いをしていた。
「何だ!?」
「ヒャッハー!?」
「これは……」
Dトゥルーと激しく切り結んでいたバーサーカー ギギと茅野 菫も同様だ。また、それを見つめていた葉月 可憐も驚きを隠せない。
「どういうことですのぉ!?」
「な、なんということだっ!?」
緋桜 遙遠とリフィリス・エタニティア――魔法少女ハルカと、コア・ハーティオンは今しがたDトゥルーに必殺の攻撃を加えたところではなかったか。
「――まだまだこれから、ってこと?」
緋柱 透乃はニヤリと笑う。緋柱 陽子との4属性攻撃は、確実にDトゥルーの身体を破壊したのだ。
「どういうこと!?」
「――」
Dトゥルーにどとうの攻撃を行ない、完全に制圧したはずのルカルカ・ルーもさすがに驚きを隠せない。ダリル・ガイザックは冷静に状況を分析するが、まだ行動には至らない。
「な、なんじゃこりゃあ!?」
カメリアもまた驚きの声を上げた。
鬼崎 朔や小鳥遊 美羽、そしてコハク・ソーロッドの連携により、Dトゥルーの『核』を貫いた直後だった。
「……これが、お前の本気か」
そしてジークフリートは呟き、セラは不敵な笑みを浮かべ、ミシェルは戸惑いの表情を浮かべる。
「……たこ焼きの材料、増えた」
と、スウェル・アルトは呟き。
「だから何でたこ焼きなのさっ!?」
と、パートナーのムメイ突っ込んだ。
そこは『王の間』だ。王の間には8つの扉があり、空中宮殿の迷宮に繋がっている。
そして、今ここにいるDトゥルーは7人。今まで、王の間でDトゥルーとそれぞれのコントラクターが一体ずつ戦っていたはずなのに。
「正直、お前たちがこれほどの強さを持っているとは思わなかった。戦力を分散していた非礼を詫びよう」
Dトゥルーの声が響いた。ルカルカや美羽と朔、そして魔王軍となぶら、透乃たちが肉体を砕いたDトゥルーの鎧と身体は崩壊し、その鎧の中からおぞましい数の触手がうねりを上げて這い出てきた。
「きゃっー!!」
「ご主人!!」
雪国 ベアはソアを助けようと『触手殺し』を振るうが、いかんせん数が違いすぎる。その抵抗は、バケツひとつで津波に立ち向かうようなものだ。
そして、今だ破壊されきっていなかったDトゥルー4体は、ボロボロの身体を抱えながらも平然と宙に浮かび、触手で埋め尽くされた王の間の中で苦しげにうめくコントラクター達を見下ろした。
「この身体は我の魂の入れ物……一本の足はタワー前で倒されたが、ここには残る7本があった。
我はのこの王の間の空間を捻じ曲げ、一体ずつお前らの相手をしていた、というわけだ」
「ここでの戦い……それ自体が罠だった、というワケですか」
バルログ リッパーに辛うじてガードされながら、それでも可憐とアリス・テスタインの身体は触手によって自由が奪われている。
「その通だ。、とはいえ、我が本来の力はこの身体すべてを合わせたもの……ここから本気を出したとて、文句を言われる筋合いはない」
冷徹に言い放ったDトゥルー。
もちろん、各人はどうにか触手を振り切ろうとするが、一瞬で部屋を埋め尽くすほどの触手には誰も対応しきれなかった。
「とはいえこの通り……本気を出したら一瞬でカタが付いてしまうようだがな……さらばだ」
冷徹にDトゥルーが言い放つ。宙に浮かんだ4体のDトゥルーは、それぞれが手にした剣や盾から集中した闇魔術を放とうとしている。
コントラクターが全員自由を奪われているこの状況は、まさに絶体絶命と言えただろう。
だが。ただひとり――いやふたり、身体に絡みついた触手から逃れられる者がいた。
元魔族6人衆のバルログ リッパーと、機晶姫 ウドだ。
「リッパー様!?」
可憐が作り上げた肉体から離脱し、リッパーは空中のDトゥルーの魔法を受け止めた。
「ウ、ウドくん!?」
「こ、これは何であるか!?」
とり驚いたのはメフィストフェレス・ゲオルクとノール・ガジェットだろう。
傍らに付き添っていたウドの鎧が触手ごと弾け飛び、その中身――蒼白い光つ、流線型の金属質の身体だ――が露になったのである。
「……!!」
ウドはまた無言でリッパーの背中に並び、Dトゥルーの魔法に反して強力な光を放った。
「可憐……我らがこれからDトゥルー様の魔力を利用して、お前らをこの部屋から脱出させる。体勢を立て直し……ザナドゥドライブを破壊するのだ」
リッパーとウドが放つ光が、輝きを増していく。その内圧が高まっているのを感じる。
「……リッパー様、どうして」
可憐は呟いた。リッパーとウドは自分達を逃がすために、主であるDトゥルーに歯向かい、魂の身体でありながらもその命まで賭けようというのか。
リッパーは、静かな声で呟いた。
「……可憐、お前は確かに甘い……理想を追いすぎている。放校されたというならそれも一興。もっともっと現実を知り、社会を経験し、世界を学べ。そして――理想を追い続けろ」
「リッパー様……」
「お前の理想はまだまだ甘い……だが――嫌いではないぞ」
「おのれ、ここまで我を裏切るか!!」
Dトゥルーが叫び、魔力の出力を上げる。リッパーとウドはひるむことなく、その攻撃を受け止め続けた。
「やめるんです、ウドくん!!」
「そうである!! このようなことは……!!
メフィストフェレスは悲痛な叫びを上げた。物言わぬウドは、そのまま二人を、そしてジークフリートの顔を見て、微笑んだように見えた。
「ミンナ……ト……ラーメン……タベテミタカ……ッタ……」
「やめろぉーーーっ!!!」
ジークフリートが叫んだ。リッパーとウドは自らのすべてを力に変え、Dトゥルーの魔力を吸い込んでいく。
そして、宮殿を揺るがすほどの大爆発が起こった。
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