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第一章 着せ替え狂想曲 6

 ともあれ。
 そうこうしているうちに、最初のうちに着替えに向かった面々が徐々に着替えを終えてロッカールームから出てき始めた。

(そ、想像以上に丈がみじけぇええええ!)
 表向きは仕方なく、内心ではわりと乗り気で超ミニスカのゴスロリドレスにチャレンジしてみたアイリであったが、実際に着てみるとその想像以上の丈の短さに愕然としていた。
(動いただけでパンツが見えそうってどんだけだよぉ……)
 いろいろと警戒してしまい、赤面しながらまるで歩き始めたばかりのペンギンのようにおぼつかない足取りでロッカールームを出てきたアイリ。
 すると、ちょうど反対側の男性ロッカールームから、着替えを終えたセス・テヴァン(せす・てう゛ぁん)が姿を現した。
 普段は品のある、落ち着いた装いの多いセスであるが……今日、ジョージアに渡されたのは、なんと薄紫のドレスシャツに黒スーツという組み合わせであり、この時点でどこからどう見てもホスト以外の何者でもない。
 さらに、セス自身もそのことに気づいたらしく、わざわざシャツのボタンを少し外して前を開けて……などとやっているため、ますますそれっぽく仕上がってしまっている。
 パートナーでもあり恋人同士でもある二人は、お互いの普段とは全く違った姿にしばし目を丸くし。
「セスの格好、なんだそれー! どう見ても夜のお仕事の人じゃねーか!」
 先に、アイリの方が耐えきれずに吹き出した。
「……ってアイリ、笑うことないじゃないですか!」
「いや、似合ってるけど、普段のお前とギャップありすぎて……!」
 そう言ってひとしきり笑った後、アイリは一度息を整えてからこう言った。
「なんかもう笑ってたら自分の格好がどうでもよくなってきたぜ。やっぱり普段と違う格好をするのも面白いな」
 その言葉に、セスも同じ笑顔を浮かべて頷いたのだった。
「まあ、これでアイリの気が紛れたなら良いことですし、ミニスカ姿な君もマーベラスにかわいいから許しちゃいますけどね!」

 次に出てきたのは、西ロイヤルガード制服の勇刃だった。
 そこへ、彼のパートナーであるセレア・ファリンクス(せれあ・ふぁりんくす)天鐘 咲夜(あまがね・さきや)の二人が駆け寄ってくる。
「…………!?」
 二人がいるのは、もちろん一緒に来たのだから承知の上なのだが……問題は、二人の衣装だった。
(咲夜とセレア、結構凄いのを着てるな……直視できない)
 まず、セレアはずいぶんと布地の少ない純白のビキニアーマー。
 こんなアーマーを着用している人物を彼も知ってはいるのだが、やはり見知った相手が、それももともとかなりスタイルのいいセレアがそんな格好をしているとなると、なかなか目のやり場に困る。
 そして咲夜はというと、すでにアーマーですらないマイクロビキニの水着だった。
 ジョージアが何を考えてこれを選んだのかとか、この時期にさすがにそれは寒くないのだろうかとか、まあ気になることはいくらでもあるのだが、いずれにしてもかなり刺激が強いことには変わりない。
 とっさに目を合わせないように視線をそらしてしまった勇刃であるが、そうは問屋が卸さなかった。
「あ、健闘様、わたくしのこの格好、どう思われますか?」
「えっと、健闘くん、この服なんですけど、似合いますか?」
 二人にほぼ同時にそう尋ねられては、さすがに目をそらしたままでいるわけにもいかない。
 勇刃は少し二人の方を見て、さらに少し考えてから、とっさにこんな言葉を口にした。
「心の砂漠に、オアシスができている気分だ!」
 それを聞いて、二人が嬉しそうに笑う。
「そうですか、ありがとうございます!」
「まあ、そんなにお気に召していらっしゃるだなんて、わたくしも嬉しいですわ」
 こうして、ひとまず事態は丸く収まったのだった。
(……あれ? 何か最初の目的忘れてないか?)