リアクション
◇ ◇ ◇ クローフィ街の乱戦から離れた場所。 和輝たちはクレヴォ・アグノスの両親が住む家に訪れていた。 「突然の訪問すみません」 「いいのよ」 「こうやって誰かが遊びに来てくれることもなかったからのぉ。ましてやアソオスちゃんの友達なら大歓迎じゃよ」 「ささ。ばぁが作ったお菓子でもお食べ」 「うわーい。いただきまーす!」 嬉々として出されたケーキをもぐもぐと食べ始めるアニス。 「お譲ちゃんも食べると良い。ばぁさんが作るお菓子は美味しいぞ」 「いや、私は遠慮しよう」 「そう言わずに食べなさい。小さい子が遠慮なんてするもんじゃない」 「そうですよ。アソオスちゃんもこのケーキを好きだと言ってくれてねぇ」 「ええい! 私を孫や子供扱いをするな、この老人どもが!! 私は貴様らより年上だぞ!!」 ガタリと立ち上がり息まくダンタリオン。 「リオン、ちょっと落ち着け。あの、アソオスちゃんの両親が3年前に亡くなったそうですけど詳しく教えてくれませんか?」 「そうねぇ、どこから話しましょうかね……アソオスちゃんはまだ小さくて自分の魔力をうまくコントロールできなかったの」 「そのせいでクレヴォとスパオに苛められてのぉ」 「虐待か……?」 「そうみたいね。アソオスちゃんを守るように隣の家に住んでいた兄妹が引き取ったのよ」 「引き取ってから少し経った頃かの? クレヴォとスパオが殺されたんだ」 「死因は刺殺と斬殺ですよね」 頷く老夫婦。 「アソオスちゃんは家にいなかったから無事だった事が唯一の救いじゃが、今はどこにいるのかのぉ……」 「むぐむぐ……んぐ。ねぇ、その兄妹ってどんな人なの?」 「確か一緒に写っている写真はなかったかの、ばぁさんや」 「ありましたね。ちょっと待っててね」 老婆は椅子から立ち上がりアルバムを取りに行った。 「その兄妹について詳しく教えてくれませんか?」 「あまり多くは語れんよ」 「それでも構いませんのでよろしくお願いします」 「そうかの」 老爺が言うには両親の虐待からできた傷を隣の家に住んでいた兄妹に怪我を手当てしてもらっていた事。 そのせいか両親よりも兄妹の方にひどく懐いていた事。 よく「あたしのおにぃちゃんとおねぇちゃんならいいのに」と言っていた事。 そこまで老爺が話すとアルバムを持って来た老婆が戻ってくる。 「ごめんなさいねぇ。なかなかアルバムが見つからなくって」 「慌てないでも良かったんですよ」 「そう? ありがとうね」 パラリとアルバムを捲っていく老婆。 「ここに写っているのがアソオスちゃんとその兄妹よ」 老婆が一枚の写真を指さす。 そこにはアソオスを挟むようにして立っている兄妹が写っている。 「おーどっちも綺麗な人だね!」 「薄くて見にくいがけっこうあるな」 「そうだな。あの、この写真をお借りしても良いですか? あとでちゃんとお返ししますので」 「あのね。もし良かったらその写真、もらってくれないかしら?」 「え……ですが」 「その代わりと言っちゃなんだけどね、アソオスちゃんを見つけたらで一向に構わないから私たちに逢わせて欲しいの」 「……分かりました。見つけ次第連れてきます。もしかしたら俺たちの他にも同行する人がいるかもしれないですが大丈夫ですか?」 「あらお客さんが来るのは嬉しい事よ」 「アソオスちゃんも一緒ならなおさらそうじゃな」 嬉しそうにしている老夫婦を残し、和輝たちはその兄妹を調べる為に家を出ていった。 |
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