シャンバラ教導団へ

百合園女学院

校長室

薔薇の学舎へ

災い転じて福となる?

リアクション公開中!

災い転じて福となる?

リアクション


歩みを止めないアンデッド

 海の所へ集めた情報を持って来る和輝。

「海」
「和輝か。どうだった?」


…………
   …………


「『血縁の水晶』を使ってアンデッドを生み出しているのなら、水晶を壊せばこれ以上被害の拡大は抑えられるな」
「そうだよね! 原因は水晶であってアソオスちゃんは悪くないもん」
「そうは言ってられないと思うぞ?」
「どうしてよ?」
「さっき和輝が言ってただろ。水晶を持つ前から人を操ることができたと」
「コントロールは出来ていなかったみたいだけどな」
「でしたら水晶は壊し、アソオスちゃんはこれからちゃんとコントロールできるように私たちが教えれば良いんですよ」
「それが一番良いだろうな。アソオスを待っている人もいることだし、アンデッド討伐隊にはアソオスを殺すようなことがないよう手を回さないと」
「それは俺がやろう。海は目の前の事に集中してくれ」

 和輝はクローフィ街にいるアンデッド討伐隊に、今決まった事を伝える為、海たちと別れた。



◇          ◇          ◇




 ワンピース姿で走っているラナ。首から下げている緑のペンダントが走るたびに跳ねる。
 路地裏に逃げ込むラナ。

「はぁ…はぁ……。なんなの、あの子のお見舞いに来たら変な人たちが街に溢れかえってるし」

 息を整えるようにペンダントを握る。

「こんな風になってるなんて……テオールを連れてこなかったのは良かったかもしれないけど」
「あぁ………………うぅ………あのこの……ため、に」

 はっとしてラナは声がした方へゆっくり首を動かす。
 そこには無数のアンデッドが路地裏に入って来ている。
 逃げ場所を探すがそこかしらからアンデッドが来ている為、ラナは無情にもアンデッドに捕まってしまう。


…………
   …………


 アソオスの所へ連れてこられたラナ。

「離して! 離してったら!!」
「あたらしい、おねぇちゃん?」

 灰色のフードをかぶっていたアソオスがフードを外し、ラナの手を掴んでいるアンデッドに聞いてくる。
 アンデッドが小さく頷と、アソオスは嬉しそうにラナを見る。

「そうなんだ! よろしくね、おねぇちゃん?」

 アソオスの目が輝き、手にしている水晶から深紅の光がラナに飛んでいく。

「きゃあああぁぁぁぁぁ!!」

 深紅の光に包まれたラナ。
 光が収まるとラナの表情が無くなり精気のないアンデッドとなっていた。

「おねぇちゃん、これからはいっしょだよ」

 嬉しそうにラナだったモノにアソオスは抱きついた。
 ラナだったアンデッドも抱き返し、アソオスの頭を撫でる。
 それを上空で見ているエッツェル・アザトース(えっつぇる・あざとーす)は良い物を見たといった表情を浮かべた。

「ほう……アンデッドと言っても死体を生み出すようなモノではないようですね。それに水晶だけの力じゃなく、あの少女の力も合わさっての物のようですし、研究材料として欲しいところです」

 エッツェルがいろいろと思案していると、地上ではアソオスの前に朝霧 垂(あさぎり・しづり)が現れアソオスに声をかけていた。

「よお。こんなところで何やってるんだ?」
「おねぇちゃんとおはなししてるの」
「ここにいる皆は家族なのか?」
「そうだよ。あたしのおにぃちゃんとおねぇちゃんなの」
「こんなにたくさんお兄ちゃんやお姉ちゃんがいるのか?」
「うん」
「お父さんやお母さんはどこにいるの?」
「いらないよ。あたしにはおにぃちゃんとおねぇちゃんがいればいいの!」

 泣きそうな表情できつく水晶を抱きしめるアソオス。

「こんなひどいこといってくるおねぇちゃんなんか、あたしいらない!!」

 アソオスの傍にいたアンデッドはアソオスを守るように垂に向かって襲いかかってくる。

「おい! 俺はただ家族について聞いてるだけだ!」
「うるさーい!」

 垂がアンデッドの攻撃を避けながらアソオスに言葉を伝えようとするも、それは届かない。
 そこへ海たちがやってくる。