シャンバラ教導団へ

百合園女学院

校長室

薔薇の学舎へ

災い転じて福となる?

リアクション公開中!

災い転じて福となる?

リアクション


拒絶の壁

「ねぇ! 一体どうなってんの!? なんでアソオスと…というかどうしてアソオスが泣いてるの?」

 今の現状を飲み込めていない海たちを代表してルカルカが垂に聞いてくる。

「この子に両親の聞く事はタブーだ!」
「そうなの? わかった。みんな悪いんだけどルカかダリルはあの水晶をサイコメトリしたいんだ」
「どうにかしてアソオスの手から水晶を取り上げて欲しいんだ」
「なら、俺が行こう。説得は失敗になったがこれくらいはさせてくれ」
「いいえ、まだですよ。一回失敗したからと言ってお終いではありません」
「そうだよ! 説得なんて何回でもすれば良いんだから」
「行くぞ、ここで一夜の事件の幕を閉じるんだ」

 気を引き締めてアソオスと向き合う面々。
 ゴッドスピードをかけて垂とルカルカ、ダリルがアンデッドの中に突っ込んで行く。

「ねぇ! なんでアソオスはアンデッドたちのことをおにぃちゃん、おねぇちゃんって言うの!?」
「あたしをすきでいてくれる! おとうさんもおかあさんもあたしのこときらいなんだもん」
「知りたい事は水晶を読み取る。これ以上聞いても分かる事は少ないだろ」
「アソオス、ごめんな!」

 手にしていた光る箒でアソオスが持っている水晶玉を弾く垂。

「きゃう!」
「垂ナイス!」

 弾かれた水晶玉はルカルカの手に収まる。

「かえしてぇ!」
「ちょっとの間よろしくね」
「ルカ、時間が惜しい。俺も一緒に見るぞ」
「うん。その前に、と」

 忍法呪い影で四体の影を出すルカルカ。
 周囲にいるアンデッドの四肢を刎ねていく。

「おにぃちゃんとおねぇちゃんになにするの。やめてー!!」

「ちゃっちゃと読み取るぞ」

 サイコメトリで水晶玉を読み取っていくルカルカとダリル。
 その間、海はアルティマ・トゥーレをかけた妖刀村雨丸で襲ってくるアンデッドを斬って行く。
 三月は超感覚でアンデッドに捕まらないように柚を守っている。



◇          ◇          ◇




 飾られていた水晶玉に触れるアソオス。
 水晶玉を持って振り向くと、若い夫婦が顔を真っ青にしている。

「どうしたの?」
「それには触っちゃだめって言ったでしょ」
「なんで? これをつかえばおにぃちゃんもおねぇちゃんもたくさんつくれるんでしょ?」
「え?」
「そんなこと聞いたことないぞ……」
「だって、おねぇちゃんがいってたもん」
「おねぇちゃん?」
「……まさか、エピスィミアの亡霊か!?」
「これをつかえば、あたしをすきでいてくれるきょうだいができるっていってたもん!」

 アソオスの目が輝き、手にしている水晶から深紅の光が若い夫婦に飛んでいく。
 光が収まると若い夫婦の表情が無くなり精気のないアンデッドとなっていた。

「これでずっといっしょだね。おにぃちゃん、おねぇちゃん」

 嬉しそうに若い夫婦だったアンデッドに抱きつくアソオス。

 どこからか笑う妖しい声が響き渡る。


◇          ◇          ◇




 サイコメトリを止めるルカルカとダリル。

「どう思う、これ?」
「どうも何も本はそそのかされた事だとしても、自分で選んでした事だろう」
「選んだとしても……」
「おい! サイコメトリはまだ終わらないのか!?」

 海が斬っても斬っても溢れてくるアンデッドに焦りながら二人に聞いてくる。
 周囲を見回すルカルカ。アンデッドの数は垂がアソオスと話していた頃よりも増え、海たちを覆いつくしてしまった。

 アンデッドに覆い尽くされ、身動きが取れない海たち面々。
 そこにリリィ・クロウ(りりぃ・くろう)がバニッシュで埋め尽くしていたアンデッドの一塊を消し飛ばした。

「このバニッシュは邪悪を滅する聖なる光。不吉な死者達よ、この街から立ち退いて頂きましょうか」
「なに、いまのひかり。みんなきえちゃった……」

 光で消されたことに驚いているアソオスにプロミネンストリックと神速で接近した師王 アスカ(しおう・あすか)が、素早くアソオスの体を抱えて離れていく。

「はなして!」
「ごめんね〜。リリちゃん、よろしく!」
「ありがとうございます。これで気兼ねなくざっくり片せますわ」
「ルーツもあとよろしく〜」
「あぁ。アスカはしっかりその少女を捕まえておくことだな」

 ルーツ・アトマイス(るーつ・あとまいす)は魔道銃2丁に武器の聖化を施して光輝属性を付与させると、アンデッドの頭部を一撃で仕留めていく。
 リリィのバニッシュで消されても、ルーツに撃たれても後ろから後ろから歩いてくるアンデッド。

「これいじょうあたしのおにぃちゃんとおねぇちゃんをころさないでー!!」
「あれらは、もう命をもっていないのです。もしも親類でも居たならば、ご愁傷様でしたわね」

 アスカに抱えられたアソオスが止めて欲しいと叫ぶもリリィとルーツは容赦なくどんどん滅していく。