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二人の魔女と機晶姫 最終話~姉妹の絆と夜明け~

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二人の魔女と機晶姫 最終話~姉妹の絆と夜明け~

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■オペレーション・トワイライト 〜打ち砕け、防御結界〜
『我らはこれより、国家反逆者であるヴィゼルと反逆に加担する者たちを一斉に駆逐する。間もなくヴィゼルが乗る機動要塞・デイブレイカーがこちらで設定した迎撃エリアに侵入してくるはずだ。エリアに侵入し次第、事前に通達した作戦行動に沿って行動してもらい、国家を仇なす愚劣者たちを捕らえてもらいたい。なお、作戦行動開始とともに、行動責任は各自に委ねることとする。――時はきた。夜明けを覆い隠す黄昏もあることを反逆者に思い知らせろ……オペレーション・トワイライト発令、各自の活躍を期待している!』
 各イコンや契約者たちの通信機器を介して、シャンバラ国軍総司令である金 鋭峰(じん・るいふぉん)が最終作戦確認と作戦開始の発令が出される。総司令からの言葉に、士気を高揚させる契約者も多くいるようだ。

「ふん、シャンバラ国軍に手を貸すのはあまりにも不愉快ではあるが、今回ばかりは手助けしてやらぬことはない。あのような、前回我らを機動要塞に積んだ兵器で吹き飛ばしてくれたような輩に、先にパラミタを征服されてたまるものか!」
「気合入ってますねぇ、ハデス君」
「当たり前だ! 我らの目的はあくまでもパラミタ征服! その目的を崩されるような事態はあってはならぬのだ! ……そして何よりも、この俺より目立つ征服行動をするとは許せん!」
(あ、多分本音はそっちですね……)
 機動城塞オリュンポス・パレスに乗り込んでいるのは、悪の秘密結社オリュンポスの大幹部であるドクター・ハデス(どくたー・はです)天樹 十六凪(あまぎ・いざなぎ)、そして内部で様々な担当についている戦闘員たち。特にハデスはヴィゼルのパラミタ征服行動に(理由はともあれ)怒りを覚え、いつも以上に指揮に力を込めていた。
 十六凪もオリュンポス・パレスの制御コンピューターの役割があるらしく、タブレット型コンピューターの姿になってオリュンポス・パレスの制御のほとんどを担っている。
「他の艦や護衛機から通信が入ってきてますよ。回線開きますね」
『――こちら、ウィスタリア搭乗のアルマ・ライラック(あるま・らいらっく)です。今回はよろしくお願いします』
「フハハハハハ! 我が名は世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスの大幹部、天才科学者ドクター・ハデスだ! 邪魔をしないよう、よろしく頼むぞ!」
『せっかく苦労して直した要塞だというのに、それを使ってシャンバラを危機に陥れようとするなんて、許せません。作戦、絶対に成功させましょう』
 アルマの冷静な声と、ハデスの気合の入った声が通信を介して伝え合っていく。そこへさらに、もう二機の友軍艦からの通信が入ってきた。
『こちら重巡航管制艦 ヘカトンケイル搭乗のベスティア・ヴィルトコーゲル(べすてぃあ・びるとこーげる)! 負けられない大一番だから、協力は惜しまないよ!』
Arcem搭乗、国軍中尉のルカルカ・ルー(るかるか・るー)です。作戦の協力、感謝するわ。お互いに頑張りましょう!』
 作戦中のためか、いつも以上にきっちりとした対応ながら、軍としての強制を敷かない感謝の対応を見せるルカルカ。他の艦責任者たちもそれぞれで自分なりの挨拶を交わしていく。
 オリュンポス・パレス、ウィスタリア、そしてArcem。この三艦が契約者たちそれぞれの母艦となるようだ。そしてさらに、エリア内には各艦の護衛機として動くヘカトンケイルを始めとした、それぞれ独自で動くイコン部隊の姿もあり、迎撃の備えは万全といったところだろう。
 そしてさらなる上空では全員への情報管制役として名乗り出た佐野 和輝(さの・かずき)アニス・パラス(あにす・ぱらす)の二人がグレイゴーストに乗り込み、全体の情報管制や偵察をおこなっている。
「――デイブレイカーが迎撃エリア内に侵入! やっぱりというか……防御結界を張っているようだ!」
 グレイゴーストを操縦し、偵察をしていた和輝がデイブレイカーがエリア内に入ってきたことを全員に知らせる。そして、この通信が作戦の真の開始であることを明白にしていた。


 ――エリア内へと侵入してきた黒船。それを守護するかのように、ミリアリアが張ったと思われる豪強な結界が目に見える。
「まずはあの結界を破壊しないことにはどうしようもないわね。……各艦とイコン部隊による一斉攻撃で結界の破壊を!」
 総指揮を担当するルカルカの号令により、すぐさま全員へ一斉攻撃を通達。先手必勝とばかりにデイブレイカーに対して攻撃を開始していく!
『主砲、チャージ開始。それまでは艦載砲で対応します』
『オリュンポス・パレス、艦隊戦準備! 国軍に協力し、デイブレイカーを守る結界を破壊せよ!』
『了解しました、ハデス君。これより本艦はデイブレイカーを敵性戦力とみなし、国軍との協力による殲滅行動に入ります。本艦の主砲チャージが完了するまで、副砲による攻撃をおこなってください』
『ヤツの船体に大きな風穴開ける勢いで撃ち尽くしてやりな!』
「アイシャ殿がおるでな。空京にはこれ以上近づけはさせんよ。……本命をぶつけるためにも、一斉砲撃開始!」
 Arcemの操縦を担当している夏侯 淵(かこう・えん)も艦載砲による一斉砲撃を艦内に指示。今もシャンバラ宮殿にて祈りを捧げているであろう、友人であるアイシャ・シュヴァーラ(あいしゃ・しゅう゛ぁーら)のいる空京を守ろうとする意志は誰よりも負けてはいない。


ドゴォォォォォォォン!!


 ――微速前進を続けるデイブレイカーを守る防御結界へ、多量の弾幕を伴った一斉砲撃が浴びせられる。まるで着弾したかのような爆音を上げているのだが、結界がどうなっているのかは黒煙に包まれており、すぐには確認できそうにない。
「……なっ!?」
 ウィスタリア内にてイコン補給・整備要員として艦内に搭乗していた柚木 桂輔(ゆずき・けいすけ)が、モニターで艦外映像を見て驚愕する。そしてその驚愕は他の契約者たちも同時に起こっていた。
 ……防御結界は無傷だった。正確に言えば、何重にも張られた防御結界の内の一層が壊れただけに過ぎなかったのだ。
「一斉砲撃を続ければいつかは壊れるだろうけど……そんなことしてたら、空京が主砲の射程範囲に入っちゃうわね」
 時間をかけるなら一斉砲撃を続ける方法でいいだろう。しかし今現在は時間もなく、デイブレイカーが目標地点に到達したらそれでアウト。悠長としていられないのが現状である。
 さらにそこへ、偵察役の和輝から更なる情報が送られてきた。それによると、結界内部にて次々と層のある防御結界が生み出されているというのだ。
「そんな……! これだけの魔力量の結界を次々に作っていたら、ミリアリアさんの魔力がすぐに尽きちゃいます!」
 《空飛ぶ箒スパロウ》に乗って戦線に参加しているリース・エンデルフィア(りーす・えんでるふぃあ)が、国軍より支給された小型通信機から流れてきたその情報に驚く。魔法使いとして、これだけの魔力量の放出が危険だということを理解しているのだろう。
 なんとか結界を破ろうと、四艦同時一斉砲撃やドラゴネット化したナディムことナディム・ガーランド(なでぃむ・がーらんど)の『ドラゴンブレス』を始めとするイコン部隊の一斉攻撃で結界へ攻撃を仕掛けていくものの、結界自体が一層壊れると一層増えるという無限の循環状態になっていた。
 さらに不気味なのは、結界を攻撃している間デイブレイカーからの反撃が全くない状態であること。沈黙を守り、ひたすら結界任せの微速前進をする黒船に、うまく手を出せずにいる。
「これじゃあ突破口を見いだせない……!」
 和輝と同じく、デイブレイカーよりも高い上空にて攻撃時に発生する結界消失の好機を狙うべく、アルマイン・マギウスのセタレに乗る遠野 歌菜(とおの・かな)月崎 羽純(つきざき・はすみ)の二人だったが、デイブレイカー側からの攻撃がない以上、作戦を実行することができそうにない。
(いや、そんな……まさかとは思うけどね)
 まるでこちらの意図を読んでいるかのような動きに、ルカルカは思わず思案してしまう。……しかし、いつまでも手をこまねいているわけにもいかない。
「今はまだ結界が厚くて突貫できそうもないな……」と、夏侯淵。結界が薄いのならば突貫による破壊も考えてはいたみたいだが、そうもいかなさそうである。
「急ごしらえだから、結界の状態は安定していない……でも、それが何層にも重なってるから層ごとの結界が不安定同士合わさって、結界の固さを高めています……! 多分、このままだと全員の最大火力をぶつけても全部壊せないかもしれません!」
 結界の状態を間近で確認しながら、リースはその情報を和輝へと通達。すぐにその情報は契約者たち全員に伝えられていく。――間もなく、デイブレイカーが目標地点へ到達しようとしている。何としてでも、到達前には結界を……そして、武装を破壊し無力化を図りたいところではあるが……。
(このままじゃ――でも、絶対諦めたくありません……!)

 ――その時であった。そのリースの想いが通じたかのように、ウィスタリアから友軍用通信にてある人物たちから連絡が行き渡る。その人物たちの名は――姫宮 みこと(ひめみや・みこと)早乙女 蘭丸(さおとめ・らんまる)の二人だった。
『おっまたせ〜! みことの特製レシピとあたしの配合術の全てを注ぎ込んだ共同作品――対結界薬ができたわよっ!』
 責任重大な配合を成功させたからか、それともみことの期待に応えられたからか、蘭丸は上機嫌な声。続いて、みことが全員へ連絡を続けていく。
『ボクが結界の材料であるキノコを、とある経緯で食べてしまったのですが……その時に使った解毒薬を参考に、ウィザード的解釈を加えた対結界配合レシピを蘭丸に実践してもらいました。これを使えば結界の力を一時的にですが弱めることができるはずです!』
 契約者たちにもたらされた、一筋の光明。すぐにそれを使うべく、結界破壊担当の中では一番小回りが利き、なおかつウィザードとしての知識を持つリースが対結界薬の使用者という大役を担うこととなった。すぐにリースはウィスタリアへ一時帰還し、みことたちから対結界薬を受け取っていく。
「あ、あの……私で大丈夫なんでしょうか?」
 かなり大きな任務だ。リースが不安になるのも仕方がないだろう。と、そこへ事の成り行きを聞いていたらしいレオパルド・クマ(れおぱるど・くま)がリースへ一言通信をかける。
「なぁに、生きとれば大役を受けるんは何度かあるしのう。意外と何とかなるもんじゃけん、頑張りぃ。わしも取材陣へのホスト役は自信なかったがのう、意外と何とかなるもんじゃ」
 かっかっか、と笑うレオパルド。リースはその言葉と笑いで勇気づけられたのか、ありがとうございます! とお礼を返すと、急いでウィスタリアを出発。結界の境界線付近まで《空飛ぶ箒スパロウ》を飛ばしていく。ナディムもドラゴネット化したままリースの護衛として並走していった。
「リースが対結界薬を使用し、結界の力が弱まったのを狙って、全員最大火力による一斉砲撃を行うわ。――タイミングを見誤らないでね」
 全員へタイミングを見計らっての一斉攻撃を指示するルカルカ。その言葉に頷く夏侯淵を始めとする、各艦の面々。そして……敵の攻撃がないまま、リースが防御結界に対して対結界薬を使用し、すぐにその場から退避する。
 ――防御結界の色が、わずかにだが変わる。対結界薬の効果が発動し、結界の力が弱まった!
「今がチャンス――撃てぇぇぇぇぇ!!」
『チャージ完了、グラビティキャノン発射』
『武装全門解放、派手にぶっ放してやりな!』
『悪の秘密結社オリュンポスの力を見せてやれ! 主砲、反重力量子砲(グラビティキャノン)……発射!』
 機は逃がさぬとばかりに、力の弱まった結界に向けてArcem、ウィスタリア、パレス・オリュンポスによる各艦同時の最大火力一斉砲撃が放たれる。それに加え、ヘカトンケイルの武装全門開放一斉砲撃、ナディムの『ドラゴンブレス』や各イコン機の武装による遠慮のない多段弾幕攻撃が結界を打ち砕かんと撃ちこまれていく。
 ……再び上がる黒煙。またしても結界を破れなかったのか……そう誰もが考えた刹那。その黒煙を切り裂くように、デイブレイカーの側面に備え付いた武装――全方位型対空機銃の弾幕が周囲の空間へばら撒かれていく!
「ひゃわぁぁぁぁぁっ!?」
 突然の攻撃に驚くリースであったが、『氷術』による分厚い氷の壁を作り、自身やナディム、そして周辺のイコン機を弾幕から守ろうとする。先ほどの防御結界のやり方を応用した、何層にも及ぶ分厚い氷の壁による防御で何とか弾幕を防御していく。
「――まずいぞ、ルカ! デイブレイカーが目標地点に到達、主砲のチャージが始まっておる!」
 夏侯淵が状況をすぐに報告する。攻撃を仕掛けてきた、ということは結界を完全に打ち破れたということ。だがデイブレイカーはすでに空京を主砲射程距離範囲内に捉えており、カウントダウンが始まっていたのであった――!