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リアクション
「止まーー!!」
甲板に轟くような葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)の叫び声。
だが、その声を聞き終わる前に爆音がかき消してしまった。
「あっちゃあ〜」
吹雪は警告のために機晶ロケットランチャーを構えたのだが、ついつい叫ぶと同時に引き金を引いてしまったのだ。
「なんか予定とは違う形になってしまったでありますね。
どうするか……ま、いっか」
吹雪がビシッとポーズをとる。
「魔法少女(臨時)葛城吹雪 見参!!」
鋼鉄 二十二号(くろがね・にじゅうにごう)の肩に乗った吹雪が眼下に向かって叫ぶ。
吹雪達は戦艦の装甲部分から、甲板を見下ろしていた。
「……」
「ほら、さっさと名乗るであります!」
「……魔法少女 見参」
吹雪に肩を踵で蹴られ、二十二号は渋々口にしていた。
今回の作戦に参加するにあたって、二十二号はマスコットにされなかったものの、代わりに魔法少女にさせられた。
それにより二十二号の緑色の装甲は、全身ピンク色に染まり、あちらこちらに桜のイラストがプリントされるという。なんとも可愛らしい感じになっていた。
「なんという屈辱……後で覚えとけ」
「ん? なんか言ったでありますか?」
「ふんっ……」
そっぽ向く二十二号。
すると、敵が銃を撃ってきた。
弾丸は二十二号の装甲をかすめ、後方へと飛んでいく。
吹雪がにやりと笑った。
「反撃開始であります!
吹き飛べ悪党!! 魔法爆撃(マジカルボミング)!!」
吹雪は両手に抱えた機晶爆弾五つを、慌てて逃げ出す敵に向かって放り投げた。
ドッドッドッドッドッーーン!!
爆発音と共に灰色の煙と火薬の匂いが周囲に広がる。
「なんだかど派手になってきたな!
俺も暴れさせてもらうか!」
「よっしゃ、憂さ晴らしついでに魔法少女の力、見せてやるよ!」
一歩進み出たエヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)の横に並んで、フィーア・四条(ふぃーあ・しじょう)が仁王立ちする。
エヴァルトが右手を天に向かって振り上げる。
「いくぜ、ティィィィルセッタァァアアア!!」
次の瞬間、エヴァルトの体を光が包んだかと思うと、どこからともなく現れた鋼鉄の装甲が体を覆っていった。
「こっちも……」
フィーアが両手の拳を強く握りしめる。
そして、勢いよく伸ばした手を左から右へと移動させーー
「変……身……!!」
一瞬にして魔法少女の衣装へと変身した。
「ティールランサー!」
エヴァルトは走り出しながらティールランサーを取り出すと、向かってきた敵陣に飛び込む。
その背中に向かってミュリエル・クロンティリス(みゅりえる・くろんてぃりす)が叫ぶ。
「ちょっと待ってください、お兄ちゃん!
へ、変身! ミュリエル・ザ・マジカルアリス!」
ミュリエルは慌ててその場でくるりと回転すると、素早く変身を行った。
「置いていかないでくださ〜い!!」
涙目になりながら、ミュリエルはエヴァルトの後を追いかけた。
その様子を見送り、軽く体を動かして準備運動していたフィーアがにやりと笑みを浮かべた。
「さて、僕らもいくよ、トゥルーデちゃん!」
「了解!」
走り出したフィーアの後を、マスコットの『機晶妖精のトゥルーデちゃん』になったヴァルトルート・フィーア・ケスラー(う゛ぁるとるーと・ふぃーあけすらー)がふわふわ飛びながら追いかけた。
甲板上で生徒たちが敵と衝突し、激しい戦いが繰り広げられ始めた。
剣が舞い、魔法が放たれ、銃弾が飛び交う。
「は、はう〜」
生徒達が次々と敵に突撃する中、魔法少女ポラリス(遠藤 寿子(えんどう・ひさこ))はまだ後方に留まっていた。
そんなポラリスに桐生 理知(きりゅう・りち)が優しく声をかける。
「寿子ちゃん、もしかして緊張してるの?」
「あ、はい。少し……」
「じゃあ、緊張しないおまじない教えてあげる!」
理知はニコニコ笑いながら、広げた手のひらに人差し指で文字を書き始めた。
「こういう時はね。手のひらに「野菜」って書いて飲み込むの……」
「それ手のひらに「人」って書いて飲み込むのと、「人を野菜だと思う」のと混ざってるから!」
「あ、そっだっけ?」
北月 智緒(きげつ・ちお)に指摘されて目を瞬かせる理知。
智緒はやれやれと呆れていた。
「……ふふ」
そんな二人の様子を見てポラリスが笑い出す。つられて理知と智緒も笑みを浮かべた。
「私も智緒も、一緒にいてポラリスちゃんとアウストラリスちゃんのこと見守ってるからね。
だから緊張も心配もしなくていいんだよ、大丈夫だからっ!」
理知はポラリスの手を握りしめ、じっと瞳を見つめていた。
握った手を通して暖かい理知の体温が伝わってくる。
ポラリスは微笑むと、「ありがとう」と感謝の言葉を述べていた。
「ポラリスちゃん、これからよろしくねっ。
はいっ、これ飴ちゃんあげる♪」
智緒がポラリスに取り出した飴玉をプレゼントする。
両手の上に置かれた可愛らしい包装がされた飴玉を、ポラリスはじっと見つめる。
「これはお友情の印なのっ。美味しいから食べてね」
「はいっ。じゃあ、頂きます――うぐっ」
「ちょっとポラリス!?」
包装を取り外して勢いよく飴玉を口に放り込んだポラリスが苦しそうにする。
様子を窺っていた魔法少女アウストラリス(アイリ・ファンブロウ(あいり・ふぁんぶろう))が、慌てて近づいて背中を叩いた。
すると、喉に詰まっていた飴玉がポラリスの手に吐き出されてきた。
「しっかりしてください、ポラリス……」
「ご、ごめん」
ポラリスはしゅんとしていた。
生徒達の攻撃が過激化していく。
そんな中、甲板で戦う生徒達を囮にして、一部の生徒達は≪シャドウレイヤー≫発生装置の元へ急いだ。
「では、後は頼みます」
「うむ。ここはわしらに任せておくがいい」
甲板を後にする前に、中原 鞆絵(なかはら・ともえ)がアルフェリカ・エテールネ(あるふぇりか・えてーるね)に声をかけた。
若干ゴスロリ寄りの魔法少女服に身を包んだアルフェリカは、【天のいかづち】を放ちながら答えていた。
「アルフェリカさん、お体に気を付けてくださいね」
「わしのことより、おぬし自身のことを気にした方がよかろう」
アルフェリカが無邪気な笑みを浮かべる。
「また後でな」
鞆絵は頷き、その場を後にする。
そんな二人のやりとりを見ていた瀬乃 和深(せの・かずみ)が、ぼそりと呟く。
「ババァが無茶しすぎだろ……」
「さて、そろそろ俺達もこの場を切り抜けたい所だな」
エヴァルトはティールランサーで敵を薙ぎ払いながらつぶやく。
背後を振り返りアイコンタクトをとる。ミュリエルがこくりと頷いていた。
「お兄ちゃん、援護いきます!」
「おう!」
「ファイアストーーム!!」
エヴァルトが飛び上がると、そこへミュリエルの杖から放たれた炎が敵へと襲いかかった。
さらに怯んだ敵にエヴァルトが追撃をかける。
「こいつも喰らえ!
パラテッカァァァァァァ!!」
解放された肩部装甲から強烈な魔法が敵を一掃していった。
「てぃ、リリカルヒールホールド!」
フィーアは敵の右足を抱えて関節技を決めていた。
悲鳴を上げている相手を見下して、フィーアがニヤリと笑みを浮かべる。
「おらおら、もう降参か?
でも残念。まだまだつづ――うおっ!?」
爆発音に続いて突如、フィーアの目の前に敵が吹き飛ばされてきた。
「うぐぐ……」
フィーアは覆い被さっている気絶した敵を力任せにどかすと、立ち上がって上から機晶爆弾を投下しまくっている吹雪に叫んだ。
「いてえな。この野郎!」
「お? おおっ、すまなかったであります!」
吹雪は「えへへ」と笑いながら、敬礼をする。
その手から爆弾がポロリと転げ落ちる。
「おおい! 謝りながら爆弾手放すなぁ!」
フィーアは自分の所へ転がってくる爆弾から逃げながら叫んでいた。
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