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『第一部も残す試合数は後二つ! セミファイナル第九試合! 通常ルールシングルマッチを行います! まず入場はマーツェカ・ヴェーツ(まーつぇか・う゛ぇーつ)選手! ボディスーツのようなコスチュームを纏って入場! 今回マーツェカ選手はテレジア・ユスティナ・ベルクホーフェン(てれじあゆすてぃな・べるくほーふぇん)さんの身体を借りての試合となります』
『愛らしい見かけに騙されるなかれ。宵の子猫は冷酷で残忍……通常ルールであるけど、試合は荒れると予想』
『おっと、見かけで騙されていけないのはこの方も同じ! 続いての入場は外見は『お巡りさん、この人です』のスーパーパンツマシン1号国頭 武尊(くにがみ・たける))選手!』
『パンツを被った見かけは何処からどう見ても変態。しかしそんな見かけとは裏腹にファイトスタイルは技巧派ストロングスタイル……どうしてこうなった』
『リングで雌雄を決する両者、最後に立つのは子猫か、パンツを被ったマシンか! その結末を見逃すな!』

(やりにくい奴だな、こいつは……)
 マーツェカを見て、国頭は思う。
 マーツェカのファイトスタイルはラフに当たる。だがそのラフ殺法の中に、真っ当な戦法を織り交ぜてきていた。
 打撃に持ち込んだかと思うと、いきなり掌を返したように国頭の打撃を関節で返したり、中々ペースを掴ませない。掴みどころがない選手である。
「おいおいよそ見してんなよ!」
 マーツェカの地獄突きが国頭の喉を貫く。
「ぐぁッ!」
「おまけにもう一丁!」
 続いてローリングソバット。喉元を押さえ、蹲る国頭の頭を狙った一撃に、たまらずダウン。
「もう一丁いっとこうか!」
 更にマーツェカは起き上がり、膝立ちになった国頭に走り込みシャイニングウィザードを放つ。
「ちっ!」
 これをブロックしようと腕を顔の前に出すが、膝は国頭の頭上を空かす。
「甘いんだよ!」
 そして着地すると、そのままソバットの要領で後頭部を蹴り抜いた。前のめりにダウンする国頭をちらりと見ると、追い打ちをかけずマーツェカはコーナーポストに歩み寄る。
『おっと、マーツェカ選手コーナーポストで何やら怪しげな動きを見せますね』
『ポストのクッションを外している模様』
 クッションを外し、剥き出しになった金具を見てマーツェカが口の端を歪めた。
 ダウンした国頭を無理矢理引き起こすと、アラバマスラムの体勢で抱えあげる。だが着地点は先程のコーナー。剥き出しになった金具に国頭が体を強打。
『強烈な一撃! コーナーにマーツェカ選手がアラバマスラム!』
『金具がダイレクトに当たった。あれは痛い』
 背中をのけ反らし、ダウンした国頭はたまらず場外へ転がりエスケープする。立ち上がり背中を押さえ、回復を狙うが、
「逃がすか!」
 マーツェカが反対のロープへ駆け出し、反動を利用し勢いをつけるとそのまま頭からトップ、セカンドロープ間を潜り、国頭にエルボーを叩きつける。
『狙った獲物は逃さない! マーツェカ選手がエルボースイシーダで襲い掛かった!』
『スピード、タイミングは十分。これにはマシン選手もたまらない』
『そのままマーツェカ選手、マシン選手を引き起こしてエプロンへ寝かせる! 何を狙うか!?』
 国頭を場外からエプロンへ上げ引き起こすと、マーツェカは股に頭を入れて持ち上げようとする。
「行くぜぇ……アックスギロチン!」
 狙いは断崖式アックスギロチンドライバー。頭から叩きつけるこの技を食らっては一溜まりもない。
 国頭の身体が僅かに宙に浮く。だが食らうまいとロープを掴み、堪える。
「させるかよ!」
 着地すると国頭はマーツェカの背中にパンチを数発落とした。僅かに呻き声を漏らし、動きを止めるマーツェカ。
 その隙を国頭は逃さずにそのまま腕を捻りあげ、アームロックを極めた。ロープ際のこの技はブレイク対象となる。レフェリーが反則カウントをとるが、国頭はお構い無しに絞り上げる。
「ぐ……あぁッ……!」
 痛みと共に関節が軋む感触に、マーツェカの口から苦悶の声が漏れる。
 カウント4。国頭が技を外すと、よろけながらマーツェカが上体を起こす。
 その瞬間、国頭はロープを掴みながら飛び上がり、延髄切りの要領で顔面に蹴りを叩き込んだ。
「あうッ!」
 マーツェカは転がるように場外へ転落。それを見ると国頭は悠々と一人、リングに戻った。

『エプロン際の攻防戦、制したのはマシン選手! ジャンピングハイキックにマーツェカ選手場外へ転落!』
『返し技のアームロック、あれでマーツェカ選手腕を痛めたかも。試合に影響しそう』

 泉空の言う通り、マーツェカが腕を押さえる場面が目立つようになった。
「せぇッ!」
 その腕を狙う様に、国頭が蹴りを放つ。
「くぅッ!」
 苦痛に顔を歪めるマーツェカ。そのまま国頭は攻撃の手を休めず、ハイアングルのボディスラムでリングに叩きつける。
「あうッ!」
 基本的な技であるが、腕を痛め満足に受け身の取れないマーツェカにはダメージが大きい。すぐに起き上がれない彼女を国頭は捕らえると、『もう一度』と人差し指を立てると高々と掲げ、叩きつける。
 ダウンしたマーツェカを無理矢理引き起こし、再度ボディスラムで掲げる。
「調子に……乗るなよ……ッ!」
 だが、掲げ上げた所でマーツェカが勢いを利用し、国頭の背後に着地。そのまま投げ、ではなく丸め込むように後ろに転がると、リングをゴロゴロと回転。
『ここでマーツェカ選手が見せたのはローリングクレイドル! ラフファイトばかりでないことを見せつける!』
 数度回転を見せた所でマーツェカはフォールではなく、技を解いた。そして取り出したのは、先程のコーナーポストを縛っていた紐。その紐を、国頭の首に回し食い込ませる。
『あっと! マーツェカ選手がロープで首を絞め上げる! 勿論これは反則です!』
 レフェリーが反則のカウントを取る。その間も食い込む紐が国頭の首を蝕み、呼吸を止める。国頭が足をばたつかせもがき、逃れようとする。
 4を数え終えた所でマーツェカが解放し、国頭を引き起こす。
「さて、そろそろ終わらせるか!」
 痛む腕を堪え、国頭を捕らえるとそのまま背後からバックドロップで持ち上げる。だが、国頭も先程のマーツェカ同様、勢いを利用し背後に着地する。
 そして自身が履くパンツから、紐状の何かを取り出すと、お返しとばかりにマーツェカの首に巻きつけた。

『マシン選手の逆襲! マーツェカ選手の首を絞め上げた! ……あれ、何だろ?』
『はっきりとは見えないけど……あれ、ストッキングっぽい』
『何でそんな物をパンツの中に……』
『本当どうしてこうなった』

 カウント4で開放し、紐状の何か――ストッキングを放り捨てると、今度は国頭がマーツェカを引き起こす。
「てぇッ!」
 が、マーツェカが国頭の喉元に痛む手で作った手刀の突きを放つ。突かれた国頭は捕らえた手を離し、喉元を押さえる。
「そぉれもう一丁!」
 マーツェカが国頭の頭を掴み、再度地獄突き。
「頂きぃッ!」
 だがその腕を掴むと同時に国頭が飛びつき、体重を利用しマーツェカをグラウンドに引き込む。飛びつきの腕十字。
 転がされた時には、マーツェカの腕は伸び、肘を支点に逆関節へと曲げられる。可動域の限界を超えた関節が悲鳴を上げる。
「ぐぁぁッ!」
 マーツェカが痛みと技を解く為にもがく。ロープは近い。身体を揺すり、ロープに足をかけるが国頭は手を離さない。
 レフェリーの反則カウントをギリギリで解放。マーツェカが腕を押さえて蹲る。
「じゃあそろそろ終わらせるかぁッ!」
 国頭が無理矢理マーツェカを引き起こし、掌底を一発。マーツェカの頭を脇に捕らえ、先程腕十字を極めたのと逆の腕をハンマーロック。
「決めるぜぇ、魔神風車!」
 掛け声と同時に反り投げる。片手は固められ、もう片手は痛めているマーツェカは受け身を取れない。
 国頭はそのままブリッジを解かない魔神風車固めでフォールに入るが、ダイレクトに衝撃を受けたマーツェカは返す事が出来ない。
 カウント3が数えられ、ゴングが鳴り響いた。

『試合終了! 最後にリングを立っていたのはマシン選手!』
『最後は伝家の宝刀、魔神風車固めで勝利』
『技とラフが入り混じった見ごたえのある試合でした! さていよいよ次で第一部はラスト! 最後まで白熱した試合を見逃すな!』