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【第二次架空大戦】流星、堕つ!

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【第二次架空大戦】流星、堕つ!

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03:『流星機に集いし運命(さだめ)』(前編)

『死ぬぜ! 俺の姿を見た奴はなぁ!』
 ダークスカルは邪悪な笑いをこぼすと、カリバーンを操って勇者たちに攻撃を開始する。
 エクス・カリバーンからビームが放出され、周囲をなぎ払う。
 その攻撃は国軍も造反部隊も関係なしに巻き込み、大きな被害を生んだ。
『おのれ! どちらもお構いなしか!!』
 洋は忌々しげに叫ぶと、部隊に指示を出して再編成し、狙いを国軍に絞って攻撃を始めた。
『特尉は標的をこちらに絞ったか……まあ、妥当だな。ブリッツフューラーより各機へ、あの金ピカの相手は勇者に任せろ。わしらは教導隊を叩くぞ!』
 甚五郎の司令に了解の言葉が帰ってくると、甚五郎はプラヴァー(高機動パック仕様)を操作して造反部隊へと突入していく。
『ターゲットインサイト……ファイア!』
 ブリジットが火器を管制して攻撃をしかける。
 それに引き続いて部隊のプラヴァーが次々と攻撃を仕掛ける。
 熟練のブリッツ小隊は次々と造反部隊を落としていくが、洋率いる教導隊を相手にするとさすがに互角からやや不利といった様子だった。
『特尉、お相手願おう!』
『いいでしょう。全力で行くであります!』
 甚五郎と洋は一対一で相対すると、互いに持つ空戦技術のすべてを駆使して激戦を繰り広げる。
 蒼き疾風の猟兵とでも訳すべき洋の機体は兵装が全て射撃武器遠距離向き、対して甚五郎のプラヴァーは近接兵装と格闘兵装。そのため、洋は距離を取りつつ射撃し、甚五郎が弾幕の合間を高機動ですり抜け、至近距離から格闘兵装を叩きこもうとする。それを洋は機体の限界ギリギリの激しい戦闘機動で回避するという、高度な機動戦が展開されていた。

『ルカルカ大尉、このままでいいのか?』
 国軍の科学者ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)が、ルカルカ・ルー(るかるか・るー)に向かってそう言葉を投げかけると、ルカルカは『とりあえず援護するしかないわねー』と返しながら回避運動からの静止、カノン斉射をして離脱を繰り返しつつ、確実に敵機の数を減らしていっている。
「そうだ、それでいい。脳波コントロール装置は順調なようだ。これがうまく行けば、勇者も国軍もパワーアップするだろう」
「はい、博士」
 そしてルカルカは造反部隊を狩り続ける。


 機体と機体が交差し、銃撃を交わし、お互いに回避する。
『やりますな特尉!』
『大尉こそ。それだけの腕がありながら勇者の前座を努めようとするなどとはもったいない……どうです? 今からでも私とともに戦いませんか?』
『お断りする。反逆者の手を取ることはできん』
『言いますね。だが、勇者に、民間人の、しかも子供に戦わせる軍隊が果たして健全と言えますかな?』
 二人の会話に、トマスが割って入る。
『戦争の歴史を顧みれば、少年兵というのは珍しくない。
 特に今の僕達のように、戦力的に困窮している陣営というのは、どうしても子供を戦場に投入するものだし……もちろん人道的にほめられたことではないし倫理的道徳的にもあまりよろしくない。
 それでも、我が国は魔神や怪生物に対抗できるほどの火力と装甲を持った機体を所有していない。
 今は戦時中だから勇者を解析してその技術を導入した新兵器の開発は急ピッチで行われているが……』
『完成して実践に投入されるまでの間は、彼らの頼るしかないというのが現状です。特尉もお分かりでしょうに……』
 トマスの言葉をミカエラが引き継ぐ。
『わかっている。とはいえ、それでは正規軍としてのプライドが許さんのだよ』
『そんなプライドなど犬に食わせてしまえばいいんだ。特尉のやっていることはプライドにとらわれて国と国民に害をなしているだけで、軍にも一切利益をもたらしていない』
 トマスの辛辣な言葉が洋に突き刺さる。
『私は軍のために……!』
『だから軍にとっても百害あって一利なしと言っているのですよ!』
 トマスは冷たい口調で洋の言葉を切って捨てる。
『ならば戦ってその正しさを示せ!』
『お断りだ。政治的にも軍事的にも意義を持たない特尉の造反ごときに、賭けられるほど、軍人の命というのは軽くない! ましてや、自分自身の重みにすら耐えられない僕には荷が重すぎる』
『逃げるのか臆病者め!』
『臆病者で結構。特尉と戦って死んでも犬死だ。こんなくだらないことで二階級特進なんて真っ平御免だね!』
 その言葉は、洋の自尊心を徹底的に打ち砕いた。
『おのれええええええええええ! 全力管制を行う。洋孝、これよりイェーガーによるストライクアタックを仕掛ける!』
「全力管制? やっちゃうの? じゃあ、必殺! アサルト・コンバット・パターン! フェンリル!」
 ブースターを全力で吹かし、ブリッツ小隊とレーヴェ小隊にミサイルとレーザーバルカンの弾幕を叩きつける。
 ブリッツ小隊の面々が次々に撃墜されていくが、偵察任務のために兵装を極力排除して身軽になっていたレーヴェ小隊はなんとか生き残っていた。
 しかし、甚五郎とすれ違いざまに人型形態に変形したイェーガーは、アックスでプラヴァーに斬りかかる。
『なっ!』
『回避不能です!』
 虚を疲れた甚五郎は、ブリジットの情報処理による必死のサポートの甲斐もなく、両断されて撃墜してしまう。
 幸い脱出装置が正常に動作して二人は無事だったが、隊長を失ったブリッツ小隊は教導隊に蹂躙されてしまう。
『トマス大尉、次は貴様だ!』
 洋が吠える。
『お生憎! 手品の種はもう見たから、奇手は二度と通用しない!』
『ほざけええええええええ!』
 洋は頭に血が上っているようだった。
『洋様! エリス、サポートを!』
『了解!』
 みとが機関銃を乱射しながら洋を庇う様に位置取る。そしてそれをカバーリングするようにエリスが援護射撃を行う。
 しかし、トマスは人型形態に変形して機関を停止させると、重力に従って機体を落下させる。
『特尉と同じ機体だから、カスタムは違っても扱い方は心得てる!』
 トマスがそう叫んだ時、通信回線に聞きなれない声が響いた。
『やれやれ……こんな大変な時期に……』
『何者!?』
 突然の乱入に洋は周囲を警戒する。しかし、レーダーにも反応がない。
『どこだ!!』
『ここだよ!!』
 それは、太陽を背にして姿を隠しつつ、ECMでレーダーをジャミングしていた紫月 唯斗(しづき・ゆいと)魂剛であった。
 急速に落下してきた魂剛は、手にする鬼刀でイェーガーを両断してしまう。
『人間同士で争うなど……愚かなことよ。のう?』
 そう言い放ったのはエクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)。唯斗のパートナーである。
『全くだ』
 それに対して唯斗は大げさな声つきで同意する。
『支援感謝する。職務から問うが、君の所属と氏名は?』
 トマスの質問に唯斗は
『残念ながら答えられることは少ないが……世界の剣とだけ言っておく』
 それを聞いてトマスはカリバーンと戦う勇者たちを見た。
『勇者かその類と?』
『まあ、そういうことだ』
『了解。深くは聞かない。とりあえず敵対しないなら歓迎する』
 多少いい加減に思えるかもしれないが、戦力が不足していて、現場に居るものの中で一番階級が上のトマスには、この場の裁量権が与えられている。
 甚五郎が健在なら先任である甚五郎が優先だったのだが、撃墜されてしまった以上トマスの指示が現場の判断だった。
『さて、各部隊は残敵掃討! 勝利は目前だ。ザンダーレーヴェは勇者の支援に入る!』
 そしてトマスは、勇者たちと戦うカリバーンにあらゆる観測機器のセンサー向ける。エネルギー量、勇者の攻撃とその防御結果からカリバーンの装甲値を弾き出し、その動きを録画して即座に分析することで行動パターンを解析する。その結果――
「拙い!」
「どうしたの?」
 トマスの上ずった声に、ミカエラが疑問を挟む。が、トマスは答えることなくカリバーンに突撃をかけた。
 その瞬間、急速にエネルギーが上昇したカリバーンは、勇者に向かって突撃をしかける。
 バリアを攻撃手段に変えての体当たりだった。
 トマスはカリバーンがその体当たりを仕掛けるためにバリアーを展開する直前に、手にする剣をカリバーンの関節部にねじ込んだ。
 そのためカリバーンは軌道が狂い、地面に激突する。
 土埃を巻き上げてカリバーンが倒れこむと、それと同時にバリアーのエネルギーの直撃を受けたザンダーレーヴェはコントロール不能になり、機体のあちこちから小爆発が起きる。
 トマスは潮時と悟ると脱出装置を起動させて機体を放棄した。

「やるじゃないか。だが、まだまだあ!」
 スカルが叫んで暴れる。その力は、勇者たちをピンチに陥れる。
『勇者カリバーンが敵になるとはのう。じゃが、これもまた一興。行くぞ!』
 エクスがそう言って笑い、それから口上を述べる。
『我等は世界の剣なり! 斬鬼天征! 剣帝武神! 我が名は魂剛! 行くぞ、カリバーン!』
 そして、カリバーンに襲いかかる。
 剣のみにて剣の勇者カリバーンと渡り合い、追い込んでいく。
「す、すごい……」
 ギャラリーからは、ため息さえ溢れる。
 そして、気合一線。カリバーンの装甲にひびを入れる。

「カリバーン! 勇者たちのデータは十分にとれた。撤退するぞ!」
「了解!」
 そして、カリバーンとハデスは虚空へと姿を消した。

 安堵したのもつかの間。唯斗は、勇者たちに剣を向けた。
『次は貴殿らだ』
『な、なんだって?!』
 桜葉 忍(さくらば・しのぶ)が驚きの声を上げる。
「何を考えている!?」
 ウルスラーディ・シマック(うるすらーでぃ・しまっく)が詰問する。
「これは、試練……」
 アポロン・サン(あぽろん・さん)の言葉に、フレイが疑問符を浮かべる。
「美羽さん……」
「そうね」
 美羽とベアトリーチェは戦闘態勢をとった。
「マスター、戦闘準備OKです」
「応ともよ!」
 セイファーと勇平が構える。
『その意気やよし』
 そして、唯斗の魂剛は剣と体捌きだけで、勇者たちを翻弄する。
 想像を上回る圧倒的な技量。太刀打ち出来ないほどの力量の差。
 文字通り、太刀に太刀打ちでき無かった。
『弱過ぎる! その程度で戦場に出るな!』
 唯斗はそう一括すると、そのまま飛び去った。
 
 勇者たちは駆けつけた国軍に回収されて補給を受けると、そのままヘルガイアの艦隊へと向かって、悔しさと克己心を胸に飛び出した。