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紅き閃光の断末魔 ─後編─

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紅き閃光の断末魔 ─後編─

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第六章 振り出しに戻る……?


 デュオが不吉な発言をしたのは、皆が希望を持ち始めたその時だった。

デュオ
「フッ……ここまでの推理は見事だが、気づいているか?
 貴様達は推理を進展させたつもりで、
 むしろ自らを袋小路へ追いやったも同然なのだぞ」

クナイ・アヤシ(くない・あやし)
「……それは、どういう意味でしょうか?」

デュオ
「ククッ……副所長が共犯であることが明らかになったな?
 しかし、その前提で考えるならば、誰にでも犯行が可能なのだぞ。
 レベッカ、早川、俺様の3人まで絞れていたのに、振り出しに戻ったというわけだ……」

アメリー・フラット
「え、えぇっ、私もですかぁ?」

東 朱鷺(あずま・とき)
「言われてみれば、そうですね。
 トマスさんとアメリーさんの無実の証明は映像記録によるところが大きいですが、
 副所長が共犯者だったなら、彼らは姿を映したまま映像を切ってもらう事が可能です」

クナイ・アヤシ(くない・あやし)
「……それでも、アメリーさんだけは無実かと思われます。
 仮に偉い人ルームにいる時点で副所長に映像を切ってもらったとしても、
 その後、誰にも気づかれずに管制室へ行くのは難しいでしょう」

清泉 北都(いずみ・ほくと)
「確かにねぇ。
 トマスさんが仮眠室に資料を取りにいっているはずだし、
 移動しようとしたら、いつ鉢合わせしてもおかしくないよ」

夜刀神 甚五郎(やとがみ・じんごろう)
「ああ……
 仮にやり過ごせたとて、その後のトマス氏との合流状況が違ってくるしな」

早川 透
「っつーかさ。ぶっちゃけ所長が犯人なんだろ?」

トマス・クラーク
「……またあなたですか」

レベッカ・チッコリーニ
「アンタ少し黙っててくれない?
 デュオの言う通り振り出しに戻っただけよ……もう一度考え直さないと」

アキラ・セイルーン(あきら・せいるーん)
「アメリーさんだけは無実が確定してるってのは嬉しいんだが、
 いよいよ手がかりゼロになっちゃった系じゃないかコレ?」

東 朱鷺(あずま・とき)
「私の占いによれば、内部犯は残る3人のうちレベッカさんで間違いないのですが」

レベッカ・チッコリーニ
「…………」

ルシェイメア・フローズン(るしぇいめあ・ふろーずん)
「占いはともかく……レベッカ、早川、デュオである可能性が高いとは思うのぅ。
 映像が途絶えたのは22時05分じゃが、副所長の死亡時刻もほとんど同じじゃ。
 トマスが犯行をするには、廊下から並外れたスピードで管制室へ向かう必要がある」

セレスティア・レイン(せれすてぃあ・れいん)
「そんな勢いよく飛び込んできたなら、いくら共犯者だったとはいえ副所長が無抵抗だったのは変ですよね。
 じゃあ、やっぱりトマスさんも無実なのでしょうか?」

セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)
「そうね……。
 デュオの言い分も理解できるけど、
 やっぱり現実的に考えるとトマスとアメリーに犯行は難しいと思うわ」

ルカルカ・ルー(るかるか・るー)
「むう、結局わかるのはそこまでなのかな。
 ダリルがよく言う『不可能を消去して最後に残ったものが真実』……。
 消去できる不可能が見つからなくなったら、どうすればいいの……?」

 完全に行き詰まってしまった。
 そう感じた時、これまで記録に勤しんでいたなななが手を挙げた。

金元 ななな(かねもと・ななな)
「あの、記録係だけど発言いいですかっ!」

阿部 勇(あべ・いさむ)
「ん? どうかしたんですか?」

金元 ななな(かねもと・ななな)
「報告書読ませてもらった時から、ずっと気になってたことがあるんだよね。
 でも、なかなか議題に挙がらないからガマンできなくなっちゃって」

草薙 羽純(くさなぎ・はすみ)
「……それは何のことなのだ?」

金元 ななな(かねもと・ななな)
「ほら、副所長が持ってたはずの<セキュリティカードの位置>についてだよ。
 壁際の制御機材の下から発見されたらしいけど、
 これって彼を殺害した犯人がわざわざ隠したのかな。何のために?」

アキラ・セイルーン(あきら・せいるーん)
「あー、あれかあれね、アリスが見つけたやつだ。うんわかってた。
 重要なのはわかってたけど、誰か気づくかなって黙ってたんだよねー」

セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)
「……そういえば不可解よね。
 ただ、詳しい理由はわからないけど、殺害後に外されたってことはないと思うわ」

セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)
「いつもは首に提げているはずだものね。
 銃で射殺した後に外したんなら、流石に血痕が付いてしまうはずよ」

清泉 北都(いずみ・ほくと)
「つまり、副所長が殺害された22時05分より前に外されてたってこと?
 当たり前だけど、副所長がまだ生きてる時間帯だよねぇ」

デュオ
「フッ……歴戦の覇者である俺様には解けたぞ、この謎が……」

トマス・クラーク
「ほ、本当ですか? 
 事件を解決するためです。もったいぶらずに言ってください!」

デュオ
「簡単なことだ。内部犯と副所長は、共犯者などという関係ではなかった。
 そう、それだけのこと……ククッ」

早川 透
「共犯者じゃなかった……副所長は純粋な犠牲者だったんすか!?
 でもそれじゃあ、セキュリティの解除が出来ないですよデュオさん!」

羅 英照(ろー・いんざお)
「……脅されていたのであろう」

 唐突だった。
 議論を行っている舞台より壇上にあたる場所から、羅英照の声が言ったのだ。
 皆が驚きそちらを注視すると、やがて彼は階段を降りて、議論の舞台へ立った。

羅 英照(ろー・いんざお)
「議論の内容は聞かせてもらっていたのだよ。
 この短時間でここまで割り出した君達は、評価に値するが―――」

 言いかけて、少しの間皆を見回すように視線を動かしつつ、

羅 英照(ろー・いんざお)
「管制室に詳しい人物、セキュリティを操作できた人物に着目したのは良かった。
 しかし、そこから副所長が共犯者だったと決めるのは早計だったのだよ。
 彼はおそらく、『ハンドガン』を突きつけられ脅されていたのだ」

ルカルカ・ルー(るかるか・るー)
「脅されてた……!? …………そっか、そうだったんだ。
 <セキュリティカードの位置>の不自然さは、そういうことだったんですね!」

ルシェイメア・フローズン(るしぇいめあ・ふろーずん)
「なるほどのう……。
 仮に副所長を脅すなら、内部犯がもっとも恐れるべきは、
 セキュリティ無効化前にこっそりスイッチを押されてしまう事じゃ」

アキラ・セイルーン(あきら・せいるーん)
「あー、それを防ぐために銃を突きつけて開口一番、
 セキュリティカードを捨てるように命じたってことだな?
 触れられないように投げ捨てさせたんなら、あんな位置にあったのも納得だぜ」

セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)
「もしかして、無抵抗のまま背後から撃ち殺されてたのも―――」

セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)
「命令に従っていれば、撃たれないだろうと思ってたんでしょうね。
 その点でも、脅されていたという推論は納得できるわ」

金元 ななな(かねもと・ななな)
「さ、さすが参謀長……!
 あっという間になななの疑問が解消されましたよ!」

レベッカ・チッコリーニ
「確かに疑問は解けたけどさ……だからどうしたのって感じじゃない?」

アメリー・フラット
「そ、そうですねぇ。
 特に犯人を絞り込めたって事はなさそうですよ……」

羅 英照(ろー・いんざお)
「いや、もう終わらせよう。
 実は君達が犯人を3人まで絞り込んだ時点で、私には答えが見えていたのだよ。
 他にも事実が判明する事を期待し、暗礁に乗り上げるまで見守っていたが―――」

 それももう終わりだ、と。
 羅英照が指差した先にいたのは―――