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 パートナーの付き添いで来たはずのルシェイメア・フローズン(るしぇいめあ・ふろーずん)が部屋を訪れたのは、大分時間が経った後だった。
 彼――アキラ・セイルーン(あきら・せいるーん)が、お菓子にも目もくれずに、立ち止まって考え込む姿に、何となく心中を察したのだった。
「相談……というよりも、どのような意見を持っているか、と聞きたいのだが」
 ラズィーヤは葦原明倫館から来たルシェイメアに労いや世間話をしかけてきたが、彼女は挨拶もそこそこに切り出すことにした。
「もしパートナーと別れねばならぬ時が来たら、貴様ならどうする?」
 それは急な質問だった。
 流石に虚を突かれたのか、ラズィーヤが少し驚いたような顔をすると、頬に手を当てて考え込むような仕草をした。それからあっさりと答える。
「メリットとデメリットを天秤にかけて、ですわね」
 そしてラズィーヤは一拍置いて、
「でも、わたくし、思いのほか静香さんのことお気に入りなのですわよ?」
 意味ありげに微笑すると、紅茶を口にした。
 瞼を閉じたその姿に何もこれ以上語らぬと見たか。
「そうか」
 ルシェイメアは短く答えると席を立った。
「すまぬ、つまらぬことを尋ねたな」
 頭を下げて退室すると、ルシェイメアはパートナーの姿をテーブルの一つに見つけた。
 マシュマロをココアに浮かべてぐるぐる溶かしているその目の前に、道すがら菓子を取ってきて並べる。
「……これはまだ食べてないか?」
 見た目からいっても、とても美味しそうなケーキ。パティシエの想定通りの味を、彼は味わえるだろうか?
 ルシェイメアは、そんな思いはおくびにも出さない。
「おー。あんがと。これを食べたら、あそこのクレープ取り行っていいかー? なんか屋台の味もあるらしいぜー」
「わしも一緒に行こう。まだまだ美味そうな菓子がありそうだな」
「おー!」
 もぎゅもぎゅ口に詰め込むアキラに、むせるなよと注意して。一緒に拳を振り上げて。
 ルシェイメアは、彼の隣を歩いていく――今は、まだ。