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ツァンダの休日



「まったく、何度呼び出しても出ないとは、何を怠慢こいとるのじゃ!」
 プンプンと怒りながら、エクリィール・スフリント(えくりぃーる・すふりんと)が、ツァンダの東にある森の中のジーバルスの里にあるハイコド・ジーバルス(はいこど・じーばるす)の新居にやってきました。
 雑貨屋いさり火の仕事関係で早急に連絡をとりたかったのですが、何度携帯をかけてもハイコド・ジーバルスが出てこないのです。
 業を煮やしたエクリィール・スフリントは、直接やってきたというわけでした。
「まったく、まさか、昼間からよからぬことでもしているのではないじゃろうな。おい、ハイコド、いるのか?」
 エクリィール・スフリントがずかずかとハイコド・ジーバルスの家に入っていきました。勝手知ったる他人の我が家、もちろん合い鍵を持っていますので完全フリーパスです。もし、空気読め状態に突入しても、いっこうに気にはしません。ええ、しませんとも。
「なんじゃ、この状況は!?」
 縁側でやっとハイコド・ジーバルスたちを見つけたエクリィール・スフリントが、あいたたと輝くデコをかかえ込みました。
 縁側で一家が寝ているのはいいのですが、中央に座ったハイコド・ジーバルスにまとわりつくように狼の姿のシンクと人の姿のコハクの二人の子供たちが横になって眠り、それを外側からつつみ込むようにして狼の姿のソラン・ジーバルス(そらん・じーばるす)ニーナ・ジーバルス(にーな・じーばるす)が寝ているという状態でした。
「まるで、太極図か独楽のような寝方じゃのう。面白い、ちょっと写真に撮っておくかのう」
 一家の姿を面白がったエクリィール・スフリントが、写真を撮り始めました。
「んんっ……、えっ!? エクル、なんでここにいるんだ!?」
 シャッター音で、やっと、ハイコド・ジーバルスが目を覚まします。それに気づいて、他の家族たちも目を覚まして、その場で大きくのびをしました。
 どうやら、ひなたぼっこしているうちに、みんながみんなハイコド・ジーバルスにくっついてきてしまったのだそうです。ちょうど手が届くからと、そのままハイコド・ジーバルスが全員をブラッシングしたため、お日様の暖かさとブラシの刺激が心地よくて、みんな眠ってしまったのでした。ハイコド・ジーバルスも、そのまま眠気が移って、一緒に寝てしまっていたようです。
「それで、全員毛がツヤツヤなのじゃな……いや、ハイコドはぼさぼさか」
 事前に子供たちにじゃれつかれたのか、ハイコド・ジーバルスだけ髪の毛がぼさぼさでした。
「で、あれを取りに来たのじゃが……」
 エクリィール・スフリントが、仕事の話をします。
「ああ、分かった、ちょっと待っててくれ」
 ハイコド・ジーバルスが動きだすと、ああと、家族たちがちょっと淋しそうな顔になりました。
「さあさ、みんなそろそろ起きないと。そうそう、エクル、夕御飯食べていくだろう。なかなか全員が集まるっていうのも少なくなったんだ、こういうときは一緒に食事でもしようぜ。おい、ソラ、二度寝しないで食事の用意だ」
「はーい」
 ハイコド・ジーバルスにゆり起こされて、ソラン・ジーバルスが人の姿になって目をこすりました。
 子供たちは、ニナママと言いながら、ニーナ・ジーバルスのしっぽにじゃれついて遊んでいます。ひとまず、子供たちの面倒は、ニーナ・ジーバルスの役目のようです。
「じゃあ、夕餉をいただいていくかの。うぬ、チビ共も元気じゃな、よしよし」
 さっさと仕事を済ませると、じゃれ合う子供たちを激写しながら、エクリィール・スフリントが言いました。

    ★    ★    ★

 パンパンパン!!
「誕生日、おめでとうですわ!」
「ハッピーバースデー! おにーちゃん&環菜おねーちゃん!」
「陽太様、環菜様、御誕生日おめでとうございます」
 自宅のホールの扉を開けたとたん、クラッカーの洗礼を受けて御神楽 陽太(みかぐら・ようた)御神楽 環菜(みかぐら・かんな)は、ちょっと面食らって目を丸くしました。
 御神楽環菜の誕生日は7月19日、御神楽陽太の誕生日は7月26日です。それを記念して、エリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)ノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)御神楽 舞花(みかぐら・まいか)がサプライズバースディーパーティーを開いてくれたのでした。
「これが、わたくしたちからの誕生日プレゼントですわ! レッツ、ミュージック!」
 エリシア・ボックが合図をすると、ホールの明かりが落ちて、スポットライトが三人を照らし出しました。
 演奏が始まります。エリシア・ボックがドラム、御神楽環菜がベースとサブボーカル、そして、ノーン・クリスタリアがメインボーカルとギターです。
「青空トレインいっくよー!」
 ピョンと跳びあがって、ノーン・クリスタリアが叫びました。
『A train runs to where
 Cross a mountain
 Cross a valley
 We will aim at the new world
 The frontier of a blue sky♪』
 ホールに、三人の演奏と歌声が響き渡ります。
 みごとに一曲演奏し終えると、ジャンと締めて、一同が一礼した後また拍手をしておめでとうの嵐です。
「ありがとうございます! 俺も環菜も、ちょっと言葉にできないくらい感動しています!」
 ちょっと感極まって御神楽陽太が御神楽陽菜の肩をだいたまま言いました。
 最初驚いていた赤ちゃんの御神楽陽菜も、すぐ慣れたらしくニコニコと笑っています。
「さあ、ケーキも用意してありますよ」
 御神楽舞花が、パーティーテーブルの方へと御神楽陽太たちを案内しました。テーブルの中央には手作りのホールケーキがあり、チョコレートに印刷された御神楽親子の写真が載せられていました。
「そうだ、ちょうどいいから、ちょっと便乗させてもらうよ」
 そう言うと、御神楽陽太が、御神楽環菜の誕生日プレゼントとして用意していた小箱を取り出しました。本当は、誕生日当日に本人に渡すつもりでしたが、今渡さないでどうするというのでしょう。
「これを私に? ありがとう、旦那様」
 そう言って、御神楽環菜が御神楽陽太にチュッとしました。
 プレゼントは、作りの銀製のロケットです。その裏側には、『YOUTA LOVE KANNA』と刻印がしてありました。
「さあ、パーティーを始めましょう」
 エリシア・ボックが皆をうながします。
「その前に、みんなで記念写真を撮ろう。来年は、みんなの写真をケーキに載せられるように」
 そう言うと、御神楽陽太は家族の集合写真を撮りました。