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【ニルヴァーナへの道】決戦! 月の港!

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【ニルヴァーナへの道】決戦! 月の港!

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chapter.12 おっしゃれおしゃーれ♪……2 


「さぁ、フィアナ、あんなケバイおじさんとっとと蹴散らしてやろう!」
「お洒落勝負ですか……」
 フィアナ・コルト(ふぃあな・こると)はううーんと首を傾げてる。
「フィアナは……まぁ統一感のある装備してるよね、うん。騎士っぽいっていうか、メカっぽいっていうか……」
「こらそこ、メカとか言わない。そもそもこのメカっぽい『可脱式機巧手甲』を改造したのはあなたでしょう」
「まぁそうなんだけど」
「お洒落とはお世辞にも言いがたいですが、ただ剣を振るうために構成された装備には一種の美しさが宿るんです!」
「あー……うん」
「ちょっと! お洒落とかよくわからない訳じゃないですよ! 本当にそう思ってるんですからねっ!」
 ムッとしつつも、道満に向かってポーズを決める。
「むむっ!」
 道満はくわわっと目を見開いた。
「戦闘特化の機能重視ファッションってわけね。必要のもとに作られた装備に無駄はなし……それもまた美ね。大剣『改式ランドグリーズ』と鎧『アーマードパック”極光”』の着こなしもグーだわ。特注品かしら、似合ってるわよ」
 続いて、なぷらも剣を構えてポーズを決める。
「こっちは正統派な聖騎士の装いね。オーダーローブと祝福のドレスグローブでシックに決める中にも『ゴスロリテンプルクロス』で遊び心もプラス。でもちゃんと見た目だけじゃなく、機能も計算して合わせてるのがポイント高いわ」
 二人のファッションを分析すると、不意に道満の目に鋭い光が宿った。
「……でも、そんな格好で代官山歩けると思ってんの!
「うわああ!!」
「きゃあ!!」
 必殺のキャノンソバット・ゴージャスが二人を吹き飛ばす。
 またの名をただの後ろ蹴りとも言うが、しかし道満の繰り出す後ろ蹴りは病院に入院するぐらい強烈だ。
お洒落の戦場は洞窟とか森じゃないのよ! 代官山とか表参道なのよ!
「結構いい線いってると思ったのに……」
 皐月の頬を冷たい汗が流れた。
 隻腕の彼は普段からお洒落に気を使うこともない。なのでここで頼れるのは仮にも女子のパートナーのみ。
「はいはい。お洒落とは縁遠い皐月は黙ってヘクトルさんの護衛でもしていてください」
「あ、はい……」
 今度は雨宮 七日(あめみや・なのか)が道満に挑む。
「あら、あなたはまともな格好ね。メンターローブとロングブーツで清楚は演出。清楚な中にもガーターで大人の雰囲気も出してちょいエロね。そして、その帽子はオーダーメイドかしら。これなら表参道でも……ぶふっ!!」
おや、吐血しましたよ
 結構お洒落だったらしく、道満は術の反動によるダメージを受けた。
「そも、身の丈に合わない格好をお洒落とは言いません。無駄に華美であれば下品なだけですし、着飾らないのも行き過ぎれば野暮ったいだけ。自分に一番相応しい格好が、その人にとっての最高のお洒落なんですよ」
「良いこというじゃない。でもそのファッション、あたしには及ばないわ……!」
「!?」
「なんか無難にまとめようとしてる感じがすんのよ! ナックルバズーカ・エレガンス!」
 鋼の拳が彼女の顔面に直撃する……その刹那、六本木 優希(ろっぽんぎ・ゆうき)が割って入った。
 アレクセイ・ヴァングライド(あれくせい・う゛ぁんぐらいど)とともに、繰り出される拳から七日を守ったのだった。
「女子にも容赦なく鉄拳制裁とはな。オカマだから女に嫉妬でもしてんじゃねぇのか、このおっさん」
「それもあるんでしょうけど、このマスターは女子も普通にボコボコにしたりするみたいですよ」
「また邪魔くさい奴らが……ん? あなたのその格好、もしかして……記者?」
 ああ、と優希は腕章をちらりと見た。
「ええ、『六本木通信社』のリポーター見習い、六本木優希と申します」
「んなこたぁどうでもいい」
 アレクセイは言った。
「覚悟しやがれ! 今日はやたらユーキに服装を注意されるから何かと思ったが、おまえのせいだったんだな!」
「ふうん……じゃあ、今日は二人ともお洒落してきたってわけ?」
「見りゃわかんだろ!」
「紋章の盾、銀のチェインメイル、魔法使いのマント……ここまでは統一感あるけど、そのサングラスはなに!?
「は?」
「どう考えてもこの装備に合わないでしょ! なんなの、ハードボイルド気取ってんの!?」
「ぐっ……!?」
 不意に、道満の放つ妖気に飲み込まれた。
「……だ、だってだって! ユーキが! ユーキが言うからぁ! 俺様悪くねーもん! うえええええん!」
「あ、アレクさん……!」
 子どものように泣き出す彼に優希はぎょっとする。
 お洒落耐久力の低いアレクセイは、お洒落カーストの特殊効果によって、幼児退行させられてしまったのだ。
「それから、あなたは……」
「ぎくっ」
 今度は優希に視線が向いた、
「記者の仕事を考えると、危険なところにも行くでしょうし、多少の武装をするのはわかるわ。でも、鎧の下はスカートだしワンポイントにリボンも付けて女の子らしく気を使ってるのは伝わる。でもね、あたしよりお洒落じゃないわ」
 バキボキと拳を鳴らし、優希に美のカリスマが迫る。
「お嬢に近付くな、下郎!」
 隠行の術で身を隠していた麗華・リンクス(れいか・りんくす)が叫んだ。
 乗っていた飛空艇から飛び出し、道満に不意打ちを仕掛ける。
 しかし、道満はあっさりと奇襲をかわすと、反撃のグーパンをみぞおちに決め、彼女をおもくそ吹き飛ばした。
「……っ!?」
 飛空艇に背中から叩き付けられた彼女はゲホゲホと喘いだ。
「な、なぜ、あたしの位置がわかった……?」
「決まってるでしょ、あんたがお洒落じゃないからよっ!」
 お洒落カーストの前に、隠行の術は無効化されていたので、道満に彼女は丸見えだったのだ。
「あたしの身体の傷痕はシャンバラを護る時に出来た誇りある傷だ! これがあたしの戦化粧なのだぞ!」
「お洒落は着飾るものなの! ありのままの自分でいいなんて、舐めた学生みたいなこと言ってんじゃないわよ!
「……う、うえええええん! 怒られたぁ!!」
 道満がお洒落さんかは置いといて、お洒落さんの前に生身で姿を晒すのは自殺行為にに等しい。
 麗華も幼児退行し、だばだば泣きわめき始めた。
 それから、道満は飛空艇に搭載されているビデオカメラをビシッと指差す。
「記者は記者らしく、あたしに歯向かうのをやめて、黙ってあたしの美しさをカメラにおさえてなさいっ!」
「一応、突入してからカメラは回してますけど、そういう使えない素材はちょっと……
「はぁ!?」
 普通に優希は嫌がった。
「もういい、それぐらいにしろ」
 先ほどから続く頭痛に悩まされつつも、ヘクトルは頑張って隊員たちにこの場からの撤退を指示した。
「どうもこの男は俺たちでは相性が悪過ぎる。ここは一旦退くぞ」
「ですが、シュトルムボックはどうするんです?」
「……メルヴィア大尉と場所を代わってもらおう。彼女なら女子だし、なんとか渡り合えるかもしれん……!」