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【ニルヴァーナへの道】決戦! 月の港!

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【ニルヴァーナへの道】決戦! 月の港!

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chapter.14 おっしゃれおしゃーれ♪……4 


「ええい、口ばっかりのクソどもが……! 不甲斐なさ過ぎる! もっとマシな奴はこの部隊にはいないのか!」
 メルヴィアはうぬぬぬ……と鞭をプルプル握りしめた。
「落ち着きぃや、メルヴィアはん。そんなんじゃ血管ブチ切れて逝ってまうよ」
 大久保 泰輔(おおくぼ・たいすけ)はポンと肩をたたいた。
「私の血管はそれほどヤワには出来ていないっ!」
「や、そういう問題やなくてやな……。ともかく、ここは僕らに任しとき!」
 泰輔はそういうと、優しげな目をグッとしかめて、道満を威嚇し始めた。
「おうおう、おっさん、好き勝手やってくれるやんけっ!」
「な、なによ、あんた?」
「お洒落カーストの術ぅ? あほくさ! 『身につけてる物』が価値で、中味は売りモンにならんスカタンかい!」
「初対面でこの横柄な態度……なんなの!?」
 コテコテのヤカラオーラを振りまく泰輔に道満もちょっとビビり気味である。
「ブランドモンちゃらちゃらぶら下げて、どこの大阪のオバハンや。そんなん野暮ったい成金趣味やっちゅーねん」
「失礼ねっ!」
「日本には『ボロは着てても心は錦〜♪』ちゅうありがたい名言があるんや。晴れ着はこの友情の制服で充分やで」
「制服が晴れ着って冠婚葬祭によばれた中坊じゃないんだから、もっとお洒落しないと……」
「お洒落なんざ知るかい、そんなもん! 世の中、お洒落よりもゼニやっちゅーねん!」
 くわわっと目を見開き、道満の衣装総額を素早く計算する。
「質屋に持ってったらええ小遣いになるなぁ。ほんまええもん着とるで、オッサン。可愛がったるわー」
 泰輔の合図でレイチェル・ロートランド(れいちぇる・ろーとらんと)フランツ・シューベルト(ふらんつ・しゅーべると)が飛び出す。
 なんだか完全にチンピラとその子分って感じがするが、まぁ気にしないでおこう。
「お洒落はよくわかりませんが、誰かのために着飾った姿がお洒落なのだろうと思います」
 レイチェルは光条兵器を抜き払う。
「したがって泰輔さんが戦いを望む以上、この戦装束こそ最高のお洒落。きっとそれで間違っていないはず」
「少なくとも道満さんの格好に劣っているとは思えませんよ」
 フランツの美的感覚において、彼のファッションセンスはどうにも優れてるとは言いがたい。
「まぁ僕も貧乏人の子だくさん家庭の生まれですから、そうそう背伸びする気も着飾る習慣もありませんが……」
 そういいながら、機関銃で弾丸をバラまく。
「世の中の住人すべてが道満さんのような格好をしていたら『個性』なんて埋もれてしまいます。ですから、かえって僕のように時代がかった時代遅れのスーツや、きまりきった制服をきちんと着る方が、お洒落になるかもしれませんね」
「そりゃ古いものでもきちんと着れば様になると思うわ。けど……」
 道満は放たれた銃弾をすべて弾き飛ばす。
「制服と一緒にグレートヘルムだの、レッドラインシールドだの装備してたらダメでしょうが!」
「ぶっ!」
 道満は親指を弾いて指弾を放ち、フランツの額をかち割った。
「フランツさん!」
「あなたもよ! 誰かのために着飾るのは素敵だけどなんで事務員なんて装備してるのよっ!」
「きゃああっ!!」
 レイチェルをキャノンソバット・ゴージャスがおもくそ吹き飛ばす。
「……ならばこれならどうだ?」
「!?」
 二人が注意を引き付けている間に、讃岐院 顕仁(さぬきいん・あきひと)が道満を間合いにとらえていた。
 道満は彼の装いを見るなり、ぶふーっと血反吐を霧のように吹き出した。
「ま、まさかの制服の下に晒! 耽美系バンカラ男子校コーデよ! シンプルだけど乙女心をくすぐる着こなしだわ!」
「清楚さと肉体美、これぞ日本の美意識よ。ぶらんど物に酔い溺れるそなたでも、この美はわかるようだな」
 顕仁は高周波ブレードで斬り掛かった。
 ごわごわと生い茂る腕毛をバリバリ刈りとり、中途半端に雑な剃り込みを入れてしまった。
「きゃあ! なにすんのよっ!」
「次は頭を逆モヒカンに剃りを入れてやろう。そなたにはそっちのほうが似合っているぞ」
「逆モヒ!?」
「それから、我の審美眼から新しいぶらんどを創り出してくれるわ、そなたの死体をオブジェにしてな!!」
「ふざけんじゃないわよっ! 店を持つ前に死んでたまるもんですかっ!」
「む……!?」
 顕仁の華麗な剣捌きを、道満は鍛え抜かれた体術ですべて叩き落とした。
 ダメージが入ったとは言え、見ての通り屈強な肉体の持ち主、一発ぐらいではまだ暴れる元気は有り余っている。
「これでは埒があかんな……」
「お困りのようなら、ここはあたしに任せてもらおうかしら!」
 突然、舞台に躍り出たのは季刊 エヌ(きかん・えぬ)
 彼女はコピー人形『エイト・イージー・ステップス』を式神の術で道満に接近させるとその姿をコピーさせた。
 顕仁も「なるほど、その手があったか」と平手を打った。
「これなら、あなたのお洒落基準で照らし合わせても、少なくともあなたと同じお洒落度になるはずよね?」
「やるじゃない。でもね、いいこと。お洒落カーストを破れるのは、あたしのお洒落度を『超えた』時だけなのよ!」
 道満の拳が人形をバラバラに吹き飛ばす。
「……なるほど、そうなるのね。でも、こっちなら効果はあるはずよ」
「!?」
 エヌはおもむろに画材を道満にブチ撒けた。
「ちょっと何してくれてんのよ! 高いのよ、これ! やっていいことと悪いことがあるって習わなかったの!」
「わー! なんか姉ちゃんたち楽しそうだなー!」
 そこにタイミング良く……いや悪く、ダッシュローラーに飽きて隼人が戻ってきた。
 べっとり色とりどりの絵の具がついた道満を見るなり、描画のフラワシで無邪気に服に落書きをし始めた。
 しかも茶色い粗相の絵を。
「ぎゃーっ! なにしてくれてんのよ、このクソガキ!」
「だって、おっちゃんこんな服着てんだから有名人なんだろー?」
「当たり前でしょ! 社会性だって1000ぐらいいってるはずよ!」
「じゃやっぱり茶色い粗相だー。社会性の高い奴は茶色い粗相が好きなんだろー。描いてやるよー」
「それ情報はしょりすぎでしょ!」
「……服より自分の心配したほうがいいんじゃないか?」
「!?」
 はっと見上げる道満の頭上を、のぞき部部長弥涼 総司(いすず・そうじ)はとった。
「さぁお仕置きの時間だぜッ!」
 隠しておいた自転車を物質化させる。
格安の自動車だッ!
「なっ!?」
もうおそい脱出不可能よッ! 圧迫祭RYYYYYYYYYY!!!
 ガンと自転車で道満に押しつぶすと、フラワシ『ナインライブス』の突きのラッシュを叩き込む。
「オラオラオラオラオラオラオラオラッ!!!」
 ガシャアンと自転車は落下し、ボコボコにひしゃげたそれの上に総司は降り立つ。
 とその瞬間、ケツの穴につららを突っ込まれたばりの悪寒に襲われた。
「体の動きが、に……鈍いぞ!? ち…違う、動きが鈍いのではない……、う、動けんッ!」
「あたしのお洒落カーストが攻撃を無効化したわ。あんたが自転車を投げた時点でね。そして脱出できた……」
 道満の放つプレッシャーに総司は身動きがとれなくなった。
 服を汚すことでお洒落度を下げることは出来たものの、総司自身のお洒落度が高くないので結局攻撃は効かないのだ。
 汚れてない道満の服>>>>汚れた道満の服>(超えられない壁)>>>>>>総司の私服。
 こんな感じ。
「あんたの敗因はたったひとつ。あんたは単純にダサすぎた
「ほぎゃあああああ!!」
 ナックルバズーカ・エレガンスが炸裂、ドガパァーッと総司は天高く吹っ飛んだ。