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プリズン・ブロック ~古王国の秘宝~

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プリズン・ブロック ~古王国の秘宝~

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回復 


 運動場での暴動は、首謀者が刑務所からいなくなった事や、腕利きの看守やロイヤルガードが応援に駆けつけた事で終焉を迎えていた。
「わるさをしたらダメなんです! めっなんです〜」
 応援に駆けつけた一人ヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)は、シーリングランスでおしおきした囚人に「めっ」とする。
「す、すみませんでした」
 便乗して騒いでいた囚人は、がっくりとヒザをつき、頭を下げる。
 ヴァーナーは可愛く幼い女の子に見えるが、実は囚人が束になってかかっても、まったくかなわない程に強かった。
「しゅーじんさんは、乳蜜香って知ってますか? ボクたち、それを探してるんですけど、なんだかはちみつミルクみたいであまそうです。飲めたらいいなぁです♪」
 ヴァーナーはロイヤルガードとして聞いてみるが、囚人は首を振るだけだった。
「いや……そんな飲物は聞いた事ねぇ……ないです」
 プライドがボロボロになって落ち込んでいるようだ。
「もうわるいことはしないでくださいね」
 ヴァーナーは囚人の頭をなでなでしてあげた。


「怪我をされた方はいませんか? 皆さん、ご無事でしょうか?」」
 女囚刑務所では、パトリシア・ハーレック(ぱとりしあ・はーれっく)が優しく女囚達に呼びかける。口調とは裏腹に長身で精悍な彼女だが、この場合は相手により安心感を与えていた。
 医師ガートルード・ハーレック(がーとるーど・はーれっく)は白衣に身を包み、看護士役のパートナーたちと共に女囚に怪我がないか見回っていた。
 ガートルードは、呼吸困難と心神喪失状態で座り込んでいた女囚に、清浄化を施し、さらにSPリチャージで元気付けてやる。
「もうご安心を。最近は乱暴者やサイコパスな外道が幅を利かせて、嘆かわしいものです」
 他にも、騒動に取り乱して泣いている女囚もいる。
 パトリシアは「どうなさったの?」と彼女の髪をなでながら、そっと聞く。幸い、酷い目に遭わされた訳でなく、驚きで泣いているようだ。逃げようとして転び、ヒザを切っていたので、パトリシアはヒールで癒す。
 対してシルヴェスター・ウィッカー(しるう゛ぇすたー・うぃっかー)の看護(?)はなかなか手荒だ。
「そうピーピーわめかんでも、見てやるけえのう」
 怪我をした、と騒ぎたてる女囚を暴れないように、ぐいと押さえつけてその場にドスンと座らせる。
「わしゃぁ二人のようには優しくないけえのう」
 ドスを利かせるシルヴェスターの風格に、興奮状態でわめいていた女囚も思わず黙る。すると今度は、ティータイムで飲物を出してやる。
「これでも飲んで、順番までおとなしゅう待て」
「あ、ど、どうも」
 シルヴェスターに渡されたコップを、女囚はまるで杯でも持つようにして口に運ぶ。

 地べたに転がっている男囚人をネヴィル・ブレイロック(ねう゛ぃる・ぶれいろっく)が引きずり起こす。巨体に物を言わせて、そのまま胸倉をつかんで宙に浮かせる。
「起きろ。こんな所に落ちてるという事は、乱暴狼藉を働いたクチか?」
 コワモテマッチョのネヴィルに睨みつけられ、囚人はぶんぶんと左右に首を振った。
「ち、ちげぇよ! 兄貴が騒ぎを起こすって言うから、言いつけ道理にワーワー騒いでて看守の奴らと殴り合ってたら、気付いたらこっちに来てて……ボコられて目が覚めたトコなんだよぉ!」
 囚人は顔を引きつらせて弁解する。
「なら、とっとと出るんだ。こっちは女囚用の刑務所だからな」
「その前に傷の治療を……」
 離された囚人はのこのこと、治療をしているガートルードたちに近づこうとする。ネヴィルはその首根っこを捕まえた。
「向こうに戻って月崎くんか和原くんに頼むんだな」
 ネヴィルは男女刑務所の境界である金網を修理している所に行くと、その囚人を金網の向こうに押しやった。
 美女三人であるガートルードたちに、スケベな輩を近づける訳にはいかない。
 ネヴェルは彼女達の元に戻り、治療を邪魔しない距離から、その護衛に務めた。


 ガートルードたちの奮闘で、怪我人は治療され、泣き叫んでいた者も落ち着きを取り戻す。
「先生、どうもありがとうございます」
 治療を受けた女囚は口々に礼を言う。実は、ガートルードは多くの女囚が聞いたらビックリするような年なのだが。
「聞けば先生は四天王だとか。ここから出たら先生の舎弟にしてはいただけないでしょうか?」
「本当ですか? いつでも歓迎です」
 ガートルードは鷹揚な態度で受け入れる。が、実はこれこそが目的だった。
 しっかりと手当てをしてくれ、気持ちの良い性格のガートルードは一部の、特に昔堅気の囚人から信頼された。務めを終えた後には、彼女の下で舎弟になりたい、という者がたくさん出てくるのもうなずける事だった。