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リアクション
■ 姉との思い出 ■
どのくらい本に熱中していたのだろう。
イルミンスールの図書室で本を読んでいたリース・エンデルフィア(りーす・えんでるふぃあ)は、ふと視線をあげて窓を見た。
一時やんでいた雪がまた、ちらちらと降り出している。
それを見ていると、地球での雪の日のことが思い出された。
雪がたくさん積もった日には、リースはよく姉たちと雪合戦をしたものだ。
パラミタに来てからは、そんな機会もなくなってしまったけれど。
(姉さんたちは元気にしてるでしょうか……いえ、きっと元気に決まってますね)
あの姉たちが元気の無い所なんて想像が出来ない。
そう思うとくすりと笑ってしまい、リースは慌てて口元を押さえた。
リースの姉たちは背中にヴァルキリーの羽が生えていた。
年上な上に空が飛べる姉たちに、小さかったリースが雪合戦で勝てるはずもない。
「ほら、リースちゃん、いくわよ」
姉が投げた雪玉が、空からリースを直撃する。
柔らかく握った雪玉は、リースに当たると簡単に崩れたから全然痛くはなかった。
けれど雪玉をぶつけられたということ自体が、そして崩れた雪玉で雪まみれになってしまうのが悲しくて、姉にまったく叶わないのが悔しくて。
リースは途中からいつも泣いてしまったものだ。
「ふぇ……ふぇぇ……ん……」
雪の上で小さなリースが泣き出す。
すると姉たちはいつだって大急ぎでリースの元に飛んできてくれた。
「ごめん、やりすぎちゃったわね」
姉の腕がリースを抱きしめ、雪を払ってくれる。
そして湯気の立つ飲み物を手渡してくれた。……まあたまには、適当すぎる姉の所為でそれが怪しい飲み物と化していたこともあったのだけれど。
慰められてあやされて。
リースの涙は次第に収まってゆく。
やがて家に入るときには、リースにも姉たちにも笑顔だけがあるのだった。
こうして遠くパラミタに来てはいても、いつだってあの優しい日々がリースに寄り添ってくれている。
あたたかな思い出に、リースは知らず微笑むのだった。
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