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リアクション
■ 雪合戦 氷合戦 ■
朝。
目覚めるといつもと空気の温度が違って感じられた。
「うーん……何だか寒いなぁ……」
そう言いながら窓の外を見た天苗 結奈(あまなえ・ゆいな)は、わぁと目を見開いた。
夜の間に積もったのだろう。
外は一面の銀世界。
「どうしたのじゃ?」
結奈の様子をいぶかしんだパンドラ・コリンズ(ぱんどら・こりんず)が起き出してきて、隣に並んで外を見る。
「おお雪じゃ、雪が積もっておるぞ」
「外に出てみようよ」
結奈は着替えるのももどかしく、外に飛び出した。
「わぁ、つもってるー!」
結奈ははしゃいで雪に足跡をつけていった。
雪を踏む感触が楽しくてたまらない。
つい結奈が夢中になっていると。
「きゃっ!」
背中に小さな衝撃。
と同時に、ぱっと雪が散る。
振り返ってみると、パンドラが笑っていた。
「ぱーちゃん、いきなり雪玉ぶつけるなんてひどいよ」
「子供のように浮かれておるからじゃ」
勝ち誇るように笑うパンドラに、よーし、と結奈も雪を集める。
「お返しに私も投げちゃうよっ」
集めた雪を固く握って、また次の雪を足してぎゅうぎゅうと圧縮してゆく。
「ぬお、結奈。そんなに固めては雪玉ではなく氷玉になってしまうのじゃ!」
パンドラは慌てたが、結奈はその様子も目に入らないくらいに雪玉……改め氷玉作りに真剣だ。
「できたー! さあ、思いっきりいくよ!」
「やめるのじゃ結奈!」
カチカチの雪玉を、結奈の全力でぶつけられてはたまらない。
パンドラは急いで身を翻した。
一方その頃。
「ん……あれ?」
目を覚ました次原 京華(つぐはら・きょうか)は、何かが聞こえたような気がして窓に寄った。
窓の曇りを手で拭ってみると、外で動き回っている人影が2つ。
「騒がしいと思ったら、結奈とパンドラが雪合戦してるのか……」
若い奴はいいねぇと呟きつつ、京華はもっとよく見ようと窓を開けた。
「今度はぜったいに外さないからね!」
「だからやめろと言っておろうに」
結奈が投げる雪玉から逃げようと、パンドラがこっちに走ってくる。
歓声を挙げる結奈と、慌てふためきながら逃げるパンドラとを高みの見物、と京華が洒落込む。
……つもりだったのだが。
ゴツッ!
身を屈めたパンドラの後ろから飛来した雪玉が、まともに京華に当たった。
「って、これ氷玉じゃねえか!」
石をぶつけられたような衝撃に、京華は額を押さえて怒鳴る。
「あはは、きょーちゃんゴメンね」
「まともに顔にくらうとは、おぬしもなかなか鈍じゃのぅ」
悪びれない結奈と、喉を鳴らして笑うパンドラ。
「……いい度胸じゃねえか、クソガキども! 潰してやる!」
待ってろよ、と京華も外に飛びだした。
「きょーちゃん、こっちこっちー!」
「良い的がやってきたようじゃ」
「んだと。オレの雪玉から逃れられると思うなよ!」
結奈とパンドラと京華。
雪玉を投げて投げられ、当てられ当てて。
雪の朝は賑やかな声に彩られるのだった――。
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