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はっぴーめりーくりすます。4

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はっぴーめりーくりすます。4
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2


 今年もイブがやってきた。
 去年は生憎休みが取れずに会えなかったが、今年は違う。休みは無事、勝ち取れた。
 一日休み。
 琳 鳳明(りん・ほうめい)は、なんていい響きなのだろうとひとり、笑った。だって、丸々一日あるのだ。なんだってできる気がする。
 だからかどうか、人形工房のドアを開けてリンスと目が合った瞬間、「ご機嫌だね」と言われた。
「えっ。そう? わかる?」
「琳が犬だったら、今全力で尻尾振ってるんだろうなって感じ」
 リンスにこうも喩えられるくらいだから、相当なのだろう。少し恥ずかしく思った。でも、嬉しいのは事実なのだから仕方がない。
「メリクリっ。早めに来れたから、今日はなんでも手伝うよ。飾り付けでも料理の準備でもなんでもこいっ」
 手伝うという言葉に、クロエが先に反応した。はぁい、と元気よく挙手している。
「じゃぁじゃぁ、いっしょにかざりつけやりましょ? みんなでわいわい、たのしいとおもうの」
「もちろん! ……あっそうだ。忘れないうちに渡しておくね」
 クロエの手を取ったところで、ふっと思い出した。鳳明は、鞄を探ってふたつの贈り物を取り出す。
「はい、クリスマスプレゼント!」
 小さな箱を、クロエに渡した。途端にクロエは目を輝かせて見上げてきたので、「開けていいよ」と頭を撫でる。
「わぁっ、かみどめ! おはな! かわいい!」
「喜んでもらえたみたいで何より。……で、こっちはリンスくんに」
「ありがとう。開けてもいい?」
「開けるの?」
「駄目なの?」
「駄目じゃないんだけど、なんていうか……は、恥ずかしい」
 あげたくせに何を言っているのだろう、とは思ったが、事実恥ずかしいのだから仕方がない。視線を落としてそわそわとしていると、リンスが「じゃあ後で見る」と言った。ほっとする反面、寂しさもあった。
 開けて、もらいたかったのだろうか。自分で止めたくせに。
「ほうめいおねぇちゃん、リンスにはなにあげたの?」
「えっ? ええと……」
「わたし、きになる。みたいなぁ」
「クロエ」
 よしなさい、と言うようにリンスが声をかける。が、鳳明はその声を遮った。
「いいよ。開けてもらって」
「いいの?」
 うん、と頷くと、リンスは鳳明のプレゼントに手をかけた。するするとラッピングが解かれ、プレゼントが中から顔を覗かせる。
「マフラー」
「う、うん」
「長いね」
 端的で正確な感想に、鳳明は口許をこわばらせた。
「あー、えーっと、あの、ほら。わ、私不器用だから! 気が付いたらこんな長さになっちゃってて……!」
 嘘だった。
 本当は、一本のマフラーをふたりで巻く、というシチュエーションに憧れたからだ。憧れて、そうしたくて、ここまで編んだ。けれど当然、言えるはずもない。
 果たして嘘の言い分は、リンスにすんなり受け入れられていた。ふうん、と相槌を打ってまじまじとマフラーを見ている。
「ありがとう。大切に使う」
「う、うん。どういたしまして」
 それだけ言うと、鳳明は逃げるようにクロエの傍に寄った。
「ほうめいおねぇちゃん、おかおまっかよ。やっぱり、みないほうがよかった?」
「……ううん。見てもらえて、良かった。たぶん。わかんないけど」
 言っている自分にもよくわからない。
 でも、大切に使う、と言ったリンスが小さく笑っていたから、それを見れたのは良かった。