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リアクション
21・ハイナ、最終兵器を使う。
房姫の死はハイナの判断を鈍らせている。別の身体に宿っていると聞いても、自らの身体がナラカに落ちれば、もう戻ってはこれないだろう。
ハイナにも分かっている。最終兵器を使用すれば、葦原の地は草も生き物も生まれぬ死の大地となってしまうことを。
既に疲弊している人民の心は、いまよりももっとハイナから離れるだろう。
しかし。
「私が持つ金融資産、全てを投げ打ってもこの地を再興させます」
ハイナは物事を単純に捉えようと、あえて考えた。
「まず、ナラカ道人を殲滅させることが大切でありんすよ、この地は広い。肥沃な大地を探し、葦原明倫館は必ずや再興します、そしてこの地が再び緑にあふれたときに戻ってくればいい」
「そうすれば、房姫の身体は死を免れる」
ハイナは、転校してきたばかりの黒脛巾 にゃん丸(くろはばき・にゃんまる)を呼ぶ。
「そちならためらわぬと聞いた」
ハイナの隠密が調べてきたのだ。
「増え続けるナラカ道人、傷を付けずに殲滅するには、毒か火!ならば、一箇所に集め大量破壊兵器の使用も悪くはないと思います。しかし!」
ちょうどナラカ道人は城に集まりつつある。
「しかし、その後の荒涼を思うと」
ハイナは頷いた。
「ナラカ道人が封印された山陵は、獣も住まない岩のみの荒地だったと聞いている…しかし、5000年の時を経て、あの地に四季を問わず花が咲き、蝶がまう不思議な土地となった。兵器によって荒れ果てても、ナラカ道人の血肉を吸った土地ならば、すぐに再生するであろう」
にゃん丸は、兵器使用後の大地を思う。そう思惑通りにいくかどうか。しかし。
「学生の身のそちなら、敵も味方も欺けると思うでありんすよ」
ハイナは力強く言い切り、大きな箱を渡す。
「操作は簡単でありんす」
にゃん丸は、一人、城の天守閣に登ると、ハイナに言われたように箱を設置し、中にある黒いスーツケースのダイヤルを回した。
ダイヤルはゆっくり動き出す。
にゃん丸は、もうすぐナラカ道人が天守閣に押し寄せるだろうと予測した。
「そうか、道人は子どもだったな、あれは岩長姫か」
そのとき、鐘の音が鳴り響く。慌ててシェルターへと戻るにゃん丸。
「封印の方法が見つかった!」
書庫より持ち帰った御伽草子のなかに、ヒントが隠されていたのである。
「子どもの話をしらべればよかったんです」
ジョシュアが興奮して話す。
「継母に疎まれて、子を森に連れてゆくが殺せず…といった童話があったね、あれはお姫さまだったが、この本では男子になっている」
天音が指差す本を見るニャン丸。
「男子は、小さな鬼に助けられ生き延びるが、再び宝剣によって眠らされるんです、この話はここで終わっているんです」
北都が終わりのページを指さす。
「復活のシーンがないんです」
にゃん丸は、己の未熟さを悔いる。
「くっ…、俺は未だに恐怖に怯え地上的な考えしかできないのか!」
慌てて、城内の出口より天守閣を目指す。
そこには。
すでに、ローザ・セントレスとジェンナーロが来ていた。
「遅いわよ、あなたが作動させたところを見ていたの」
ローザは、にゃん丸が戻ってくることを予見していたようだ。
「最終兵器使用は葦原明倫館や米国の発言力低下を招く事になり同盟国であり母国のイタリアにとっても痛手、なんとかしないと」
「スーツケース型の止め方は幾つかあるの、間に合うといいけど」
メモリはあと3分を切っている。
「シェルターの皆を外に出してくれ。俺がこのスーツケースとともにシェルターに入る」
にゃん丸は自らの死で、この危機を脱しようと考えている。
「馬鹿なことを言わないで」
「もう少しだ」
一秒一秒が長く感じる。
「ふぅ」
ローザが溜息をついた。
「見て」
スーツケースのメモリが止まっている。しかし、ジェンナーロはスーツケースを銀色のバッグにしまった。
「無力化する。ここで行ってもいいが…」
すでに女たちが足元まで迫ってきている。
「そうね、いったん私たちが預かり、無力ががすんだらここに戻すわ」
「ハイナには内緒にするんだぞ、政治問題になりかねないからな」
三人は、急いで、部屋を後にする。その後、部屋は女たちで埋まった。
22・房姫の魂は眠っているのか
開耶とヴァーナーを乗せて走るローザ・セントレスのバイクは、後から追ってきたイーオンと共に、山陵の祠を目指していた。
「心の中の、房姫様が…」
祠へと向かうことを望んでいる、開耶はそうローザに告げた。
空飛ぶ箒に乗るイーオンは、祠に向かうことに躊躇していた。
「祠の中にはまだ、ナラカ道人がいるのではないか」
小型飛行艇のセルウィーとフィーネに近寄り、
「開耶が山陵の祠に行くことを望んでいる。我々だけでは援護するにも人数が足りない。セル、城に戻って援軍を頼む」
「分かりました、お気をつけて」
セルウィーは飛行艇の向きを城へと戻す。
既にこの地にはナラカ道人は殆ど見えない、しかし無ではない。
「不思議だな、ところどころで休んでいる女がいる」
「全員が城に向かうのならば、城を焼けば殲滅できるが。こうして残っていてはそれも意味をなさないのか。一体でも残れば、無限に増えるのあからな」
フィーネは、人でうごめく城を遠めに見ていう。
イーオンは、ローザのバイクに近寄る。
「みなが来るまで、待とう」
「時間が・・・」
開耶の身体が大きく揺れる。
ヴァーナーが支える。
「開耶おねえちゃん・・・」
ヴァーナーは、開耶がバイクから落ちないよう支える。
「たいへんです…このままでは開耶おねえちゃん、倒れてしまいます。」
開耶は先ほどよりヒールなどの回復系の力を使用しているが、開耶の顔色はどんどん青くなるばかりだ。
「とにかく、祠に行こう」
ローザはアクセルを踏んだ。
そのころ、長門は祠にいた。バイク音を聞いた八鬼衆は、それぞれに姿を消す。
長門はそのまま祠に留まり、内部にある屋敷へと向かう。
「ここで皆を待つか」
ローザがヴァーナーと開耶を下ろし、衰弱した開耶を抱えるように動き出した頃、復活の儀式に参加した面々が到着した。急ぎ来たのだ。
「シェルター内の情報によると、須世理姫のナラカ道人封印儀式は、城内の祠で行われるようだ」
総司と共に駆けつけた風祭優斗は、これまでの敬意をみなに知らせる。
「房姫さまがここに来たがったのには、わけがあると思う。しかし、房姫さまの身体は城にあるんだ。須世理姫がナラカ道人と共にナラカに落ちたら、房姫さまの魂はどうなってしまうんだろう」
「とにかく祠に入りましょう、須世理姫さんのことも気になるますしなぁ」
開耶のことも心配で駆けつけた柚子が決意したように告げる。
祠内の屋敷、ナラカ道人が復活したときに皆が見つけた屋敷だが、その奥にある寝室は誰も入らなかった。
隠し扉があるのだ。
その奥に、最初の、五千年を生きた岩長姫とその子、ナラカ道人が眠っている。岩長姫は老いている。不老不死の実験は、元々まやかしだった。もし目的がクローン技術の開発だったとしたら、その研究は成功だったのだろう、岩長姫は無限に増えている。不老不死と考えるのなら、失敗だ。岩長姫は老いている。クローンで増え続けるものには老いが訪れなかった。数千人の岩長姫の意識は共有している。老いて殆どの時間を横たわる岩長姫の頭の中には、絶えず、様々な思念が入り込む。
復活の儀式まで、岩長姫は眠っていた。それでも思念は紛れ込む。
最初に思念が来たのは、須世理姫によって封印されてすぐであった。須世理姫に託した子が、藩主の跡継ぎとして育てると約束された子が、この山陵で殺害されようとしたときだ。
子の恐怖は、岩長姫の心に届いた。
その子は、いま、ここで眠っている。子は不死ではない。すでに老い、ミイラとなっていた。他所で暮らし、封印から逃れた岩長姫のクローンやその子孫が、子・ナラカ道人の世話をしてきた。
今、岩長姫が望むのは、我が子・ナラカ道人の復活である。真に藩主の血を告ぐ男子である。復活の後は、葦原藩を取り戻し、ナラカ道人を藩主と据える。それが岩長姫の待望だ。
岩長姫の子孫がその血を流し、多くのものの血肉が山稜に散った。その結果、ナカラ道人はすこしづつ人の姿を取り戻している。五千年の時を経て、道人の頬は血の気を取り戻し、手足は今にも動きそうだ。
八鬼衆が再び胎内に戻り生まれ変わった後、ナラカ道人もその胎盤に包まれ、再びの生を受けようとしている。しかし、宝剣が足りぬ。
我を封印した宝剣、須世理姫は城の祠にあると思っておる、しかし、本当は天守にある。その宝剣さえあれば、ナラカ道人は復活する。
ふらふらと開耶は歩いている。いつしか、屋敷の前まで来た。
23・天守で宝剣を得たものは
大量破壊兵器が破棄され、ハイナは目が覚めた。
「まだ房姫は生きている、できることをして救うのでありんす!」
岩長姫のクローンは、天守を目指していると聞く。
「走るでありんす!」
ハイナは、天守に走った。白褌の5人衆も後を追う。
「やっと、出番だぜっ」
「ハイナさん、早いッス」
皆は、隠し扉から出て、壁の裏側の道を走り、天守閣へと向かう。
天守閣は、女たちであふれていた。皆が手を伸ばしているのは、ハイナ愛用の薙刀である。普段は高く掲げているため、素手では取れない。多くの手が薙刀に伸び、女たちは重なり倒れ、その上にまた乗り、そして倒れ、と高さを増して、薙刀へと近づいている。
「目的はあれか」
ラルクは、強化光条での素手格闘で女たちを倒す。
移動は全て軽身功を使っている。壁や女の背を使い、薙刀に腕を伸ばす。しかし、女の腕がその腕を噛む。
大きく転がるラルク。
その上に女たちが重なる。
「圧死するぞ」
竜司がその腕を引っ張る。
菊は、分裂しないよう、女たちの足の腱を切り、通路へと放り出す。
「こんなこと、したくないんだけどよ」
ナガンは凶刃の鎖を振り回している、その鎖に薙刀が絡まる。
「ひっぱれぇ」
薙刀が宙に浮かぶ。
サレンが女たちの背に飛び乗って、手を伸ばした。その手に薙刀が収まる。
そのまま、サレンは天守から地上へと飛ぶ。側にある、松の木に飛び移った。
「愛と正義のヒロイン「ラヴピース」は、運動神経抜群なんでありんすっス」
「走るぞ」
竜司はハイナを抱える。
「飛んだほうが早い」
「あたしゃ、飛べないよ」
「エエィ・・・飛べェェエエイ」
皆が飛ぶ。
ラルクがサレンの松に飛び移る。
「投げろ!」
「いいから投げろ!」
竜司は思い切り、ハイナを松に向かって投げる。
ナガンとラルクが二人を受け止めた。
菊と、サレンはすでに下りている。
「竜司!お前は飛ぶなよ」
しかし、竜司は既に飛んでいた。
松の木が大きくしなるが、樹齢を誇る大木だけあって持ちこたえている。
「これが、宝剣!」
ハイナが、薙刀の柄を取り外した。
「そんなこと、祠でしろ、とにかく須世理姫のところまで走るぞ」
23・祠と祠は繋がっているのか
須世理姫は、宝剣が木箱の奥に眠っていると思っていた。しかしその場所にはなく、天守閣の薙刀に隠されていた。
須世理姫は薙刀をしない。薙刀の名手は岩長姫である。
「道人のしわざだろう」
届けられた宝剣を前に、須世理姫は呪文を唱える。
多くの学生が、この騒動に関わった全ての学生が祠を取り囲んでいる。岩長姫のクローンが祠に入ろうと刀を手に襲ってくる。
あるものは戦い、あるものは能力を減らさぬよう、できるだけ待機している。儀式は止めようもない。既に房姫の身体は須世理姫の魂がある。房姫を戻すためには、儀式の完了が必要なのだ。
回復のスキルを持つものたちは、息を呑んで、その瞬間を待っている。
山陵の祠、開耶は屋敷の中に入り、岩長姫と対峙した。
「そなたを呼んだのは、妾じゃ」
岩長姫は言う。
開耶と見守る多くの友をみて、
「そなたは幸せじゃのう、友がいる。妾に友がおれば、このようなことにはならなかった」
開耶は疲れた身体を震わせながら、岩長姫の側による。
「ほんに、ご苦労なさいましたなぁ」
その老いた手を取る開耶、涙が流れ出る。
「宝剣は、須世理姫が持った。もうすぐ妾は封印される。しかし、こんどはナラカ道人も連れて行こうぞ。いろんなものと話た。愉快だったと共に伝えよ」
岩長姫は笑みを浮かべた。
「なんだか、笑うのは久しぶりじゃ」
そのころ悪徒は、道行となったナラカ道人と共に、城内にいた。
「どうやら、負け戦だったな、俺も天守に上るべきだったな」
「妾がとめたのじゃ、気にするでない」
「もう、消えるのか」
「そうかもしれぬ、そなたと一緒で楽しかったぞ、またあおうぞ」
「あえるか?」
「砂の葉にもあえるやもしれぬぞ」
悪徒は笑う。
「どうせなら、現世であおうぜ、冥土でなんてのはごめんだ」
儀式は始まった。
双方の祠の地面、女たちの足元に黒い穴があく。その中に吸い込まれていくはずだった。
しかし。
これまでナラカ道人と呼ばれていや女たちの身体は、次第に、小さくなる。
悪徒と共にいた女は
「おや、足元に吸い込まれるわけではなさそうだ、おや、そうか、封印ではないようだよ、戻るのか、そうか、おぬし、またあおうぞ」
悪徒に囁くと、女は小さな光の粒とあり、空へと駆け上がる。
光の粒は、山陵へと集まる。
長門はいつのまにか、八鬼衆と共にいた。
「我らもこれで去る」
みな、玉となり、空に向かう。
「挨拶にきてくらたのじゃのう」
長門は、頭上の隙間より、輝く空を見る。
岩長姫はナラカ道人と共に、光となった。
その身体に無数の光の粒が吸い込まれる。地上にあいた大きな暗闇が光を包むこみ、全てが終わった。
須世理姫は宝剣を胸にしている。須世理姫の意識が房姫の身体から宝剣にうつる。房姫の顔の傷が薄れる。
その瞬間、宝剣は房姫の胸を突く。
そのままナラカへと落ちる・・・はずだった。
しかし、宝剣がさしているのは、葦原太郎左衛門の身体だ。
刹那、太郎左衛門は房姫の前に身を投げ出した。
「岩長姫を陥れたのは我が祖先。須世理姫様、業が深いのは房姫も私も同じ。私をお連れ下され」
太郎左衛門の胸にささった宝剣が光る。
そのまま、闇に落ちてゆく。
房姫は暫くして意識を取り戻した。同じ瞬間、房姫が宿っていた開耶はガクッと身体を倒す。
24・宴
全てが終わり、街は再興された。城の改築も始まった。祠は清められ、花々で満たされている。
「葦原太郎左衛門様は、いつか…お戻りになる」
慕う弐識太郎は、その墓の前で佇む。
城では蕎麦は振舞われている。
職人は腕を振るうが、中に混じって朝倉千歳がいる。蕎麦作りにはまっているらしい。
何度もお替りをしていのは、鬼院尋人だ。
「やっと蕎麦が食えた」
思えば、尋人は、葦原明倫館に来たときより蕎麦を食べたがっていたのだ。薔薇の学舎の仲間が集っている。
牢の中にいた戦部小次郎は、ハイナの謝罪を受けて、やっと外にでた。
「出てあげる代わりに約束をかなえてくれ」
小次郎はハイナの胸を触ろうとするが、考える間もなく却下された。
ハイナの心は暗い。
房姫を取り戻したとはいえ、葦原太郎左衛門を失った。
25・葦原の神子
開耶が寝ている。回りには、柚子や晴明、甕星のほかに、房姫がいる。
開耶が目を覚ました。起き上がろうとするがうまくいかない。
「何だか…不思議な感じが…」
柚子が開耶を背中に手を添える。
「いったい、何が…開耶に起こっているんどす」
房姫を見る。
「覚醒したのですわ、神子としての能力が」
房姫は、自らの身体に戻ったとき、神子としての能力が失われていたことに気がついていた。
しかし、このことはハイナにも言っていない。
「ハイナを呼びましょう」
房姫はゆっくりと立ち上がった。
終わり。
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担当マスターより
▼担当マスター
舞瑠
▼マスターコメント
葦原明倫館キャンペーン第三回、最終回です。このたびは遅れまして申し訳ありません。
これからも宜しくお願いいたします。
6月2日 名前の間違いや誤字を修正しました。このたびはご迷惑をおかけし、本当に情けないです。