百合園女学院へ

薔薇の学舎

校長室

波羅蜜多実業高等学校へ

イルミンスールの命運~欧州魔法議会諮問会~

リアクション公開中!

イルミンスールの命運~欧州魔法議会諮問会~

リアクション


●エピローグ

「はぁ……今日は皆さんが帰ってくる予定の日ですねぇ」
「そうですね。……気になりますか、お母さん?」
 校長室で、ぼんやりと呟いたエリザベートを見つめながら、ミーミルが問う。
「そりゃ、気になりますよぅ。もし諮問会が失敗に終わりでもしたら、私は校長じゃなくなっちゃうかもしれないんですよぉ?」
 エリザベートの心配を、ミーミルは微笑んで受け止め、ふわり、と近くに舞い降りて羽と腕とで抱きしめる。
「大丈夫です。きっと皆さん、無事に帰って来ます。だから私たちも祈りましょう……皆さんの無事を」
「む〜……すっかりミーミルが、ちび、じゃなくなってしまいましたぁ。これからはミーミル、と呼んであげないといけないですぅ」
 そんなことを話していたエリザベートとミーミルを、訪れる者の姿があった。
「校長先生、ミーミル様、只今お姉様から連絡がありましたわ! 審議の結果、EMUはイルミンスールを、これからもミスティルテイン騎士団主導とする決議を下した、と伝えてくださいました!」
 珍しく興奮した様子のティティナ・アリセ(てぃてぃな・ありせ)が、真言から伝えられた情報をエリザベートとミーミルに伝える。一行はつい先程、空京に帰還を果たしたとも情報が伝えられた。
「そ、そうですかぁ! もちろん私は、あなたたちがちゃんとやってくれるって信じてたですぅ!
 さあミーミル、空京に飛ぶですよぅ! 私自ら出迎えてやるですぅ!」
「お母さん、無断で外出は危険です……ごめんなさいティティナさん、私はお母さんと一緒に行きますので、残っている方にお伝えできませんでしょうか」
 エリザベートを止めようとするミーミルが、流石にもう止められないことを悟り、ティティナに伝言を頼んで一緒に空京へテレポートする。
(お姉様、お疲れさまです。わたくしはここで、お姉様方のお帰りをお待ちしていますわ)
 ふふ、と微笑み、ティティナがイルミンスールに残っていた者たちへ、吉報を知らせに行く――。


「……そう。……はぁ、結局一人も殺せなかったし、諮問会でミスティルテインを蹴落とすことも出来なかったし、骨折りといいところね」
 椅子にふんぞり返って、あらかたの報告を聞いたメニエスはふん、と鼻を鳴らし、眼前にひざまづくエーアステライトを見下ろす。
「……で? あなたは次に、何を考えているのかしら?」
 メニエスに問われ、エーアステライトが顔を上げる。審議の結果、EMUはひとまずの間、ミスティルテイン騎士団主導でまとまること――直ぐに議会選挙が行われるため、その結果次第では情勢が変わることもあり得るが、今回の結果からそれは見込み薄になった――になったことを報告したエーアステライトは、しかしその表情に落胆や焦りといったものを感じさせなかった。
「……メニエス様は、ザナドゥをどの程度ご存知でしょうか?」
 逆に問われ、メニエスはあんたよりは知ってるわね、と答える。パラミタで多くの悪魔や魔鎧といった存在を見てきたし、話も聞いている。アーデルハイトがザナドゥに行ったことも、諮問会で知る前に既に耳に入れていた。
「今回の諮問会は、結果として失敗に終わりましたが、一つ大きな成果を得ることが出来ました。それはEMUが、ザナドゥを興味の対象として入れたことにあります。ミスティルテイン騎士団は既にパラミタの種族、あるいは街とそれなりの結び付きを得ていた、それが諮問会の失敗に繋がりましたが……」
「……今度は、ミスティルテインに先んじて、ザナドゥと結び付きを得ようって話?」
 ご理解が早くて助かります、とエーアステライトが告げる。つまり、ホーリーアスティン騎士団は今後、ザナドゥと積極的調和路線を取り、結び付きを強めようという算段であった。
「アーデルハイトのザナドゥ行き、そして行方不明……これはザナドゥで何かがあったと考えるのが筋。そういえば話に聞いた限りですが、シャンバラの隣国、カナンにはアーデルハイトの血縁がいらっしゃると?」
「あぁ、イナンナのこと? あたしも聞いた時は間違いじゃないのって思ったけど、どうやら本当らしいわね」
 メニエスの回答を受けたエーアステライトが、何かを考えるような仕草を見せ、そして口を開く。
「……近々、それらの周辺で大規模な動きがあるでしょう」
「なにそれ、予言者のつもり? ホーリーアスティン騎士団の代表サマは、そんなことも出来るわけ?」
 メニエスの嘲笑に、エーアステライトは恭しく礼をするに留める。
「ザナドゥは必ず動く……その時が私たち、ホーリーアスティン騎士団……いいえ、あの方の悲願が達成される時――」
 最後にエーアステライトが漏らした呟きは、誰の耳にも届くことなく掻き消える――。


 こうして契約者たちは、少なからぬ犠牲を払いつつも、諮問会での報告を終え、一抹の安寧を手に入れた
 しかし、アーデルハイト不在の状況は未だ変わらない。行方不明になる前に向かったとされるザナドゥ、そこでは今何が起きているのだろうか。
 それを知る者は、誰もいない――。


『イルミンスールの命運〜欧州魔法議会諮問会〜 完』

担当マスターより

▼担当マスター

猫宮烈

▼マスターコメント

猫宮・烈です。

……えー、下書きでは色々と書いていたのですが、どれもこれもごめんなさいだの言い訳だのばっかりだったので、消しました(汗
ただ一言、この手のシナリオはまとめるのが非常に大変である、というのを思い知りました(汗々

シナリオの結果を端的にまとめると、

・イルミンスール魔法学校はこれからもミスティルテイン騎士団が主導していくことに落ち着きました。
 但し、欧州魔法議会選挙が6月にあるので、その選挙結果次第ではどうなるか分かりません。

・襲撃は防ぐことが出来ましたが、犠牲者ゼロは(敵が全員自爆するなり消滅するなりしたので)なりませんでした。
 契約者にも一部、負傷者が出ました。

・EMU、およびホーリーアスティン騎士団が、ザナドゥに興味を持ったようです。

・『イナテミス防衛戦』で損傷したウィール支城は、ニーズヘッグと精霊との働きによって、元通り……とまでは行きませんが、通常の機能を発揮できるくらいには回復しました。その他、防衛戦で負傷した龍騎士団団員や、アメイアも普通に動けるくらいになっているようです。

三番目がある意味一番大きいのではないかと。
ホーリーアスティン騎士団は(もしかすると、EMUも)今後、ザナドゥとの接触を持とうとすることになるでしょう。


……で、EMU編も一応の決着が付き、さて、自分が前々から言っていた『ザナドゥ編』に移る……と思いましたね?
ええ、まあ、移ります。ですがもう、『ザナドゥ編』とは言いません。

『ザナドゥ編』は『ザナドゥ魔界戦記』と名を変え、『カナン再生記』終了後の新シリーズとして展開されることが決まったからです。

……さらりと言いましたねこの人。
ええ、物凄く大きな規模になりました。

詳細等は、カナン再生記同様特設ページが設けられる予定ですので(随時更新もされていきます)、そちらでどうぞ。
シリーズ開始にあたり、『透子』様に新規登場キャラ等多数、描いてもらいました。ぜひお楽しみに。

そして、ザナドゥ魔界戦記最初のシナリオ、グランドシナリオは6月4日公開予定となっております。
こちらへもぜひ、ご参加のほどよろしくお願いいたします。

……宣伝になってしまいましたが、皆様、今回のシナリオ参加、ありがとうございました。
また次の機会に、よろしくお願いいたします。

(6月5日追記)
ご指摘に基づき、リアクションを修正しました。
とても失礼なミスでした、反省です。