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リアクション
★ ★ ★
「オベリスク、見えてきたよー。あれっ? なんかいるみたい」
レーダーを見ていたアニス・パラスが、地上にイコンの反応を見つけて佐野和輝に言った。
「イコンだと? イレギュラーじゃないですか。これだから、事前情報ってのはあてにならないという……」
武装のセーフティーを解除していきながら、佐野和輝がぼやいた。いったんグレイゴーストでオベリスク上空を飛びすぎてから、旋回して攻撃態勢に入る。
『オベリスクですが、何らかの防御機構が稼働しているようね。あの理不尽な輝きはバリヤーとしては奇妙だから、魔法的なものだと思うけど』
地上すれすれからオベリスクに接近したアルヴィトルの中で、四瑞霊亀がシフ・リンクスクロウに告げた。
「イコンもいるよ。アルマインタイプが二機!」
「分かっています。どうやら、まずあちらから排除する必要がありそうですね」
注意をうながすミネシア・スィンセラフィに、シフ・リンクスクロウが答えた。
「ずいぶん、話が違いますね」
中空から一直線にオベリスクにむかっていたレイナ・ライトフィードが、予想外の状況に眉根に皺を寄せた。
「なあに、よくあることだ。初撃で、まず戦闘力の大半を奪うぞ! セーフティー解除。ターゲットロック。フルバースト!!」
すでに攻撃態勢を整えていた閃崎静麻が、ミサイルの射程に入るなり一ダースのミサイルを次々に発射していった。全弾発射後に、急上昇して回避行動に移る。
「ミサイルだって!?」
「イコンに戻るのだ」
攻撃に気づいた緋桜ケイにむかって、悠久ノカナタが叫んだ。
「間にあわねえ、御主人こっちに来い!」
爆風を予見して、雪国ベアがソア・ウェンボリスと『空中庭園』ソラをその巨体でつつむようにだきかかえた。
「あいさつもしないのは酷いですよ、ぶんぶん!」
あせる緋桜ケイたちとは違って、メイちゃんは少しもあわてていなかった。
「コンちゃん、ランちゃん! やっちゃお!」
その言葉に呼応するかのように、オベリスクの周囲を回転していた光の帯の一つが一気に広がった。ミサイル群のほとんどを吹き飛ばし、続く二つ目の光のリングで完全に迎撃する。
「おいおい、冗談だろうが! 避けろレイナ!」
ミサイルを吹き飛ばし、さらにこちらに迫ってくる光のリングに、レイナ・ライトフィードが機体を急激にロールさせて軌道を変えつつ、変形による急降下でそれを避ける。同時に、20ミリレーザーバルカンを乱射したが、防御結界を破壊するには至らず、機体で木々を薙ぎ倒すようにして着地した。
「こちらゴースト1、目標到達。これより攻撃を開始する。なお、未確認機を二機確認。注意されたし。さて、いくぞ、アニス」
「う、うん、いいよおぉぉ……」
一応の報告を入れてから、佐野和輝がグレイゴーストを0時方向から急降下させた。見た目、垂直方向への防御はなさそうに見える。急降下爆撃でグレネードをばらまく作戦だ。
だが、オベリスク中程の壁がスライドしてそこから対空砲らしき物が現れた。直上をむいたその先端から青白い光条が迸った。
「ブレス・ノウ機動。アニス、少しきついかもしれないが、我慢してくれ」
とっさに、佐野和輝がグレイゴーストのベクターノズルを全開にして、機体をロールさせつつ90度回頭させた。そのまま、二条の光線の間を縫って緊急離脱していく。その後ろで、投下したグレネードが光条に薙ぎ払われて爆発していった
「ひゃああぁぁ……」
Gに耐えていたアニス・パラスが、さすがにこの無茶な機動に目を回す。
「どうりでイコンが大量に必要なはずだ。あの隊長め、うまく俺たちを填めたな」
迂闊なパイロットなら、とうに撃墜されていると佐野和輝が唸った。
ミサイルの爆風をオベリスクの魔法陣による結界で凌いだ緋桜ケイたちは、すぐにイコンの中に戻った。
『いったい、何者だ。ザナドゥの魔族には見えないけれど』
『来ますよ、は、速い!?』
機体をならべてマジックカノンを連射しながら、緋桜ケイとソア・ウェンボリスが叫んだ。
さすがは第二世代機だ。機動力はアルマインの倍近くある。
攻撃を避けつつ、サイコビームキャノンで反撃が来た。
さっと、アルマイン二機が左右に分かれたところへ、背後にあったオベリスクから、新たな砲台が現れてアルヴィトルを狙撃した。オベリスクに戻ったメイちゃんが撃ったものだ。さすがにふいをつかれたアルヴィトルの偽装した装甲の一部が吹き飛び、その下のレイヴンの装甲が一部露出する。
『ヒャッハー、やってるやってる! 俺も混ぜろや、ごらあ!!』
本格的な戦闘が始まった頃合いに、傭兵たちの第二陣が到着し始めた。ソニックブラスターで騒がしくわめきながら、ゲブー・オブインがなだれ込んでくる。
『ゲブー様、サイキョー!』
ピンクの光るビームモヒカンをゆらめかせながら、宇留賭羅・ゲブー・喪悲漢が、剣を切り結ぶ緋桜ケイのアルマインとアルヴィトルの間に割って入ってきた。
「さすがだよね、ピンクモヒカン兄貴。ホントに最強だよね。敵も味方も、逃げ回ってるんだもん。よっ、さいきょ、さいきょー」
TPOなど無視したゲブー・オブインの攻撃に、これまたTPOを無視してバーバーモヒカンシャンバラ大荒野店が褒めちぎった。
「く、邪魔な……」
タイミングを崩されたシフ・リンクスクロウが、ソア・ウェンボリスからの射撃を避けていったん後退する。
高性能機にとって、やはり最大の敵は味方ということだろうか。むろん、訓練を共に積んで連携のとれる味方は本当の切り札となり得るのだが……。
★ ★ ★
「どうしたの、レガートさん?」
突然騒ぎ出したペガサスのレガートさんに、乗っていたティー・ティー(てぃー・てぃー)があわてて首筋をなでて落ち着かせようとした。
だが、レガートさんの興奮は静まることもなく、さらに、少し離れたところから爆発音が響いてくる。
「いったい何が……」
困惑するティー・ティーの頭上を、イクスシュラウドの巨体が通りすぎていった。
音速以下の飛行とはいえ、かなりの突風を受けてレガートさんがいったん着地してやり過ごす。さらに、その頭上をフリューゲルレーヴェFとフォイエルスパーが次々にオベリスクの方向へとむかって飛び去っていった。
「なんでこんなにたくさんのイコンが……。こんな所で戦闘なんてしたら森が……」
どうしようかとティー・ティーが戸惑っているうちに、宇都宮祥子のプラーティーン・フリューゲルがティー・ティーを発見した。
地上のレガートさんを追い越したところでプラーティーン・フリューゲルが変形して反転する。いきなりイコンに行く手を立ち塞がれて、ティー・ティーがあわててレガートさんを羽ばたかせて逃げだそうとした。
「了解、排除します」
目撃者をどうするか隊長に問い合わせていた宇都宮祥子が、淡々と応答した。
「どうするのですか?」
排除とは穏やかではないと、イオテス・サイフォードが訊ねた。
「要は、作戦終了まで、通報とかされなければいいのよ」
さすがに、無関係な者を巻き込むのは気が引けたのか、そこまでの命令は報酬の範囲外だと言いたげに宇都宮祥子が苦笑した。
逃げるレガートさんの翼を、スナイパーライフルで正確に射貫く。
「きゃー!」
ティー・ティーを乗せたまま、翼の力を失ったレガートさんが墜落した。それでも、かろうじて木立の間に軟着陸する。そこへ、ガトリングガンの銃弾が雨霰と降り注いだ。
だが、ティー・ティーとレガートさんにへの直撃はなく、近くの木の幹が銃弾によって粉砕されていった。それによって倒れてきた木が次々にティー・ティーたちの上に覆い被さり、木の枝で埋めてしまう形になる。
「これで、しばらくは身動きがとれないわよね」
「ええっ、普通死んでしまいますわよ」
やれやれというふうに言う宇都宮祥子に、イオテス・サイフォードが大丈夫なのかと聞き返した。
「契約者だったら、このくらいじゃ死なないわよ。さあ、手間取ったわ、行くわよ」
事実、積み重なった木々が下から押し上げられるようにして少し動くのを確認してから、宇都宮祥子は飛行形態に戻って先を急いだ。
★ ★ ★
『よし、始まったようだな。本機はここで固定する。エネルギー充填まで、お前は周囲を警戒しろ』
戦闘開始の報告を受け、オベリスクがかろうじて目視できる地点で、隊長のミキストリが地上に降りて静止した。
『ここでですか?』
隊長機と共に最後尾を進んでいたテレジア・ユスティナ・ベルクホーフェンが聞き返した。
『なに、先行隊が充分に目を引いてくれるだろうから問題は無いはずだが、周囲にまだイコンが潜んでいるとも限らないからな』
そう答えながら、隊長がミキストリのアウトリガーを展開して機体を地上に固定した。背部にあったキャノンがガイドレールを移動してショルダーキャノンとしての位置に納まる。同時に左右のバインダーキャノンが回転して砲口を前方にむけた。開いて降りてきたグリップを、ミキストリがそれぞれの手でつかんで照準をオベリスクに定める。
『あの結界を抜くほどの攻撃はチャージに時間がかかる。周囲の警戒を怠るな』
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