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リアクション
【2】来来空京中華街……1
空京中華街。
元々は中華系移民の集まる繁華街だったが、近頃は国交の生まれたコンロン系の住人も増えつつある。
そこに老師と愛美たち門下生の姿が見える。焼売、餃子、炒飯、拉麺、半ライスと食べ歩きを楽しんでいるようだ。
武闘家は身体が資本、腹ペコで出せる技なんてないのだ。
「遠慮はいりません。どんどん召し上がって下さい」
教導団中尉叶 白竜(よう・ぱいろん)の言葉にワーッと歓声が上がる。
「すまんのぅ。なんかいっぱい奢ってもらっちゃって……」
「いえ、それよりブラッディディバイン関係の激務が続き、チラシ配りの時間がとれず……すみませんでした」
「なに、気にするな。弟子はたんと集まった」
弟子を見つめる愛おしげな姿に、白竜もほっと安心する。
そしてその横では、万勇拳の一番弟子八ッ橋 優子(やつはし・ゆうこ)が姉弟子として愛美に助言をしていた。
「イメチェンしたいんだって?」
「うん、仕事の幅も広げてかないと、ガイドにもなかなかよんでもらえなくなるし……」
「じゃ、処女でも捨てて……」
「コラーーーッ!!」
あわてて世 羅儀(せい・らぎ)は危険な台詞を大声でかき消す。
「なんちゅーことをおしえるんだ、あんたは!」
「人生経験は大事だろ」
「……にしても、イメチェンと言えば、あんたもなんだか雰囲気が変わったな……」
練習着のチャイナドレスはともかくとして、二丁拳銃にティアドロップサングラス、そしてくわえ煙草。
完全なるマフィアな出で立ちに、地味にショックな羅儀である。
「ただでさえ、私服の白竜はマフィアっぽいってのに……」
「どうかしたの?」
「え? ああ、いやなんでもないよ。ははは」
愛美に話しかけられ、羅儀はどぎまぎしつつも、嬉しそうに笑った。
「やぁー……オレも門下生になろうかな」
「……羅儀」
「い、言ってみただけだよ。睨むなよ、白竜」
白竜はため息を吐いた。
「……ところで、老師。ひとつお訊きしたいのですが、黒楼館はどのような悪事に関わっているのでしょう?」
「ふむ?」
「それが中華街の治安に関わるようなら、教導団としても対応を考えるべきかと思いまして」
「武器の密輸、コンロン製の麻薬、対抗組織の抹殺などなど……様々な闇の出来事に関わっている、と言う噂じゃ」
「噂……ですか?」
「当たり前じゃ、一般人に犯罪の尻尾を掴まれる犯罪組織などおらんだろ」
「なるほど。おっしゃるとおりです」
白竜の目配せに気付き、羅儀は写真の入った封筒をこっそり渡す。
「……黒楼館の道場に出入りしてた連中の写真だ」
「教導団のデータに一致する者は?」
「最近、門下生になった連中には何人か前科持ちのチンピラがいる。しかしコンロンから来た連中はデータなしだ」
「幹部の素性は謎のままですか……」
「よう、そこの団体さん。むずかしい顔してないでうちの肉まんはどうだい?」
「?」
ふと見れば、そこにあったのは神崎 荒神(かんざき・こうじん)の営む肉まん屋台。
学生ながら料理の腕前はプロ級の彼、たまの休みの今日は、中華街でこうして料理修行に勤しんでいるのだ。
「外はふっくら中はジューシー、俺が言うのもなんだが絶品だ。まぁ百聞は一見にしかず、食べてくんな」
「よし、じゃあ人数分包みな」
煙を吹きかけるように優子は言った。その途端、荒神の頬を汗が伝う。
「……や、ヤクザじゃねぇか。このふてぶてしい態度、キレた狂犬ポジションの奴じゃねぇか」
「優子さん、路上喫煙はあまり……」
白竜が咎めると、荒神の頬を更なる汗が襲う。
「……こっちも完全にカタギじゃねぇ。ヤクザもヤクザ、インテリ系の若頭だろ、この人」
「肉まんまだかのぅ……」
「しばしお待ち下さい、老師。すぐに」
「おい、早く作れよ、肉まん屋」
「この二人が、こんだけ気を使うって、この猫ちゃんは一体……」
かわいいナリしているが、ヤクザに気を使われる奴がカタギであるわけもなく、とんでもないワルに違いない。
荒神はあわてて肉まんを包んだ。
「すみません。親分、今後ともご贔屓に……。あ、これサービスしとくんで」
「なんか知らんが気の利く店じゃのぅ。はぐはぐ……肉まんも美味しっ」
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