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伝説の焼きそばパンをゲットせよ!

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伝説の焼きそばパンをゲットせよ!
伝説の焼きそばパンをゲットせよ! 伝説の焼きそばパンをゲットせよ!

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 購買部では後片付けに追われていた。一番不機嫌なのが、獣 ニサト(けもの・にさと)と焼きそばパン(実は焼きうどんパン)を作って販売した田中 クリスティーヌ(たなか・くりすてぃーぬ)だ。
 ニサトが焼きそばパン(実は焼きうどんパン)分の売上げを抜き取ろうとしたところ、一足早く売上げ全部が回収されていた。こうなると只働きどころか、材料費や光熱費が持ち出しとなる。
「全く、美味い酒はどこに行ったのよ、ブツブツ」
 普段から不機嫌そうに見える顔が、本当に不機嫌になっていた。ニサトはどうやって機嫌をとろうかと、頭の中で酒の銘柄選びに懸命だった。

 またマンドレイク焼きそばパンを提供した多比良 幽那(たひら・ゆうな)も、アクシデントに見舞われていた。
「マンドレイク焼きそばパン、終了でーす」
「伝説の焼きそばパンが話題になって、しかも無料なら当然か。でもなかなか気分が良いものね」
「どうもありがとうございました」
 購買部の面々や手伝っていた風紀委員から感謝の言葉が続く。
「どういたしまして、さぁ、帰りましょう」
 そこでアルラウネが1人も居ないことに気がついた。
「あら? どうしちゃったの? 何か他の用事でもあるのかしら?」
 購買部を見回すが、誰も見つからない。
「あなた、ご存じない?」
 火村 加夜(ひむら・かや)が「連れて行かれちゃいましたけど」と恐る恐る言った。
「連れて行かれた? 誰に?」
 多比良 幽那(たひら・ゆうな)は、激しく足踏みして加夜を問い詰める。
「マンドレイク焼きそばパンを差し上げた人に」とクロス・クロノス(くろす・くろのす)が口ぞえする。
「私も見てました」と藤井 つばめ(ふじい・つばめ)も付け加えた。
「オレ、見てたんですけど……」滝川 洋介(たきがわ・ようすけ)が説明する。
「アルラウネっていうんですね。マンドレイク焼きそばパンをあげるときに『無料です』って言ったら、『良いの』ってそれごと」
「ど、どうして止めてくれなかったのよ!」
 そこにいた何人かが手を上げた。
「私、『ホントにあげちゃっても良いんですか』って聞いたんですけど覚えてません? 『どんどんあげちゃって』って答えたのを」
 言われてみれば、そんなやり取りをしたような気がする。まさかその時はアルラウネのこととは思いもしなかったが。
 多比良 幽那(たひら・ゆうな)は、購買部を飛び出した。
「可愛い私の子供達ー! 帰ってきてー!」

 空京の片隅にある駄菓子屋。もんじゃ焼きのこうばしい匂いでいっぱいだった。
 伝説の焼きそばパンを運ぶのを手伝って戻ってきた葉月 可憐(はづき・かれん)アリス・テスタイン(ありす・てすたいん)。焼きそばパンから駄菓子屋に興味を持った佐々木 弥十郎(ささき・やじゅうろう)フィン・マックミラン(ふぃん・まっくみらん)。この4人が村木婆ちゃんと一緒に、もんじゃ焼きを作っていた。
 可憐、アリス、弥十郎の3人はきちんと座っていたが、フィンだけは興味たっぷりに駄菓子屋を見て回っている。「3つだけ買って良い」と弥十郎に言われ、杏飴とニッキをすぐに決めたものの最後の1つを決めかねているらしい。
「そろそろ良いよ。こうヘラで少しずつ食べてね」
 村木婆ちゃんに教わるままに4人はパクッと食べる。
「美味しい!」×4
 もんじゃ焼きは、あっと言うまになくなった。
「も1つ食べるかい?」
 村木婆ちゃんの言葉に、4人とも「はい」と応じる。また良い匂いがたちこめる。
「焼きそばパンは、大人気でしたよ。ある意味怖いくらい」
 佐々木 弥十郎(ささき・やじゅうろう)は、携帯電話を取り出すと写真を見せた。購買部の前の人だかりは、戦場もかくやと思わせる。
「もっとも焼きそばパンがなければ、ワタシもここに来ることはありませんでした」
 可憐とアリスも「そうそう」と同意した。
「あ、コレ……すっごぉい!」
 アリスは1枚の写真に見入る。黒髪の女性が猛然と購買部に突撃しているところだ。
「高校生には……みえないねぇ。大学生かなぁ」
 弥十郎は携帯電話を操作して、写真を拡大する。
「教導団の軍服を着ていますね」
「ふぅん、そうなんだぁ」
「今日は料理人の1人として、良い経験になりました。食欲でこれほど人は変わるものなんだと。そして懐かしさや思い出も最高のソースになり得ること」
「佐々木様、料理人なのですね。私も料理が大好きなんです」
「可憐の作るもの美味しいよぉ。私がよく味見するんだよ」
「アリスのは、味見かつまみ食いかはっきりしませんけど」
 その後も笑い声と楽しい話題が続いた。
  
 蒼空学園の会議室では、風紀委員の慰労会が行われていた。風紀委員以外にも、中継を担当した鈴虫 翔子(すずむし・しょうこ)羽瀬川 まゆり(はせがわ・まゆり)に放送部員。
 伝説の焼きそばパンを買い損ねたライカ・フィーニス(らいか・ふぃーにす)五月葉 終夏(さつきば・おりが)秋月 葵(あきづき・あおい)なども会議室を訪れていた。
 昼休み早々に校長室を飛び出していったルカルカ・ルー(るかるか・るー)も、「買えなかったよー、涼司さんにお土産であげようと思ってたのに」と気落ちして戻ってきた。
 テーブル中央には、山葉言うところの、伝説になるかもしれないナポリタンパンが山積みになっていた。名前はともかく味そのものは好評で、来週あたり購買部に並んでいるかもしれない。
「でも不思議な報告があがってます」
 花音・アームルート(かのん・あーむるーと)が山葉校長に端末を見せる。
「売上げが多いんですよ。まるで予定外のものをたくさん売ったみたいに」
 獣 ニサト(けもの・にさと)田中 クリスティーヌ(たなか・くりすてぃーぬ)は、冷や汗を流す。
「あー、あれじゃないか。焼きそばパンで最後の1個の時に、金を投げていったのが何人もいたぜ」
 ニサトが取り繕うものの、花音は納得しない。
「そんな金額程度ではないんですけど……」
 パートナーのクリスもフォローする。
「マンドレイク焼きそばパンだけど……、無料って言ったのに、お金を置いてった人、いましたよ」
「それなら私の時もありました」
「ああ、私も」
「そうなんですか……」
 それでも渋る花音に、山葉が「まぁいいだろ」と指示を出す。
「足りないのならすぐにでも調査すべき問題だが、多いのならとりあえずどこかにプールしておこう。今後何かあったときに使えるように」
「はい」と花音は従った。
「だぁりん、伝説の焼きそばパン、買えたわよー」
 飛び込んできたのは、滝川 洋介(たきがわ・ようすけ)のパートナー、源 静(みなもとの・しずか)。その分厚い胸板に小さな袋を抱えている。
 伝説の焼きそばパンの存在に会議室の注目が集まった。
「ちょうだーいっ!」
 一番に叫んだのは秋月 葵(あきづき・あおい)
 購買部に突撃して買えなかったライカ・フィーニス(らいか・ふぃーにす)五月葉 終夏(さつきば・おりが)、そしてルカルカ・ルー(るかるか・るー)も同様に欲しがった。そして風紀委員達も、はっきり口にこそ出さなかったが、いかにも食べたそうな雰囲気を見せていた。 
 異様な雰囲気に源 静(みなもとの・しずか)もひるむ。
「そうね。2つあるんだから、1つはあたしとだぁりんで半分こするとして、もう1つは誰かにあげちゃうわ」
 伝説の焼きそばパンを1つ残すと、滝川 洋介(たきがわ・ようすけ)を引っ張って会議室から出て行った。
「じゃんけん」
「くじの方が!」
「風紀委員の貢献度合を山葉校長に判断してもらって」
「それはかえって不公平だよ」
 混乱は収まりそうになかった。
「明日からはどうするんですか?」
 花音・アームルート(かのん・あーむるーと)火村 加夜(ひむら・かや)が、山葉に尋ねる。
「メールと学籍なんかで、完全予約の抽選になる予定。午前11時までに応募した人の中から選んで、メールの返信画面を見せて購買部で引き換える形だ」
「いろいろ抜け道もありそうですが」
「完璧な方法なんてありえないさ。まずいところがあったら、おいおい直していくさ」

「ゲームで勝負だ」
「あっち向いてホイで」
「いっそイコンを」
 伝説の焼きそばパンをめぐる攻防は、どこまでも続きそうだった。


 なお多比良 幽那(たひら・ゆうな)のアルラウネ達は、山葉校長の指揮と風紀委員の協力により、夕方には全員発見し幽那の元に返された。


担当マスターより

▼担当マスター

県田 静

▼マスターコメント

初のゲームマスターを務めました県田静です。多くの方々の参加、ありがとうございました。

多くのアクション、楽しく拝見させてもらいました。
不思議なことに、他の人が買った焼きそばパンをヒャッハーするアクションを選択した方がいませんでした。
山葉校長の威光なのか、風紀委員候補に恐れをなしたのか、原因は不明ですが面白いことがあるものです。

いろいろなアクションを示していただきましたが、他の参加者との兼ね合いで、斜め上どころか裏側のリアクションになってしまったキャラもいます。
キャラクターの特性を極力生かすように書いたつもりですが、力不足の点がありましたら、なにとぞご容赦ください。

また何人かの方には、称号をお贈りしてあります。どうぞご確認ください。

それではこの次のシナリオがありましたら、その節はよろしくお願いいたします。