百合園女学院へ

薔薇の学舎

校長室

波羅蜜多実業高等学校へ

花粉注意報

リアクション公開中!

花粉注意報

リアクション




風が薫る温泉旅館――

 広大なイルミンスールの森の中……
 そこだけ時間が止まったかのように冬の景色が広がっていた。

 氷術によって周囲を雪に囲まれた温泉旅館・薫風。
 積もったその雪が緩衝材となったのか、ここだけは花粉の被害と無縁だった。

「二人とも、気分はどう?」
 湯煙が立ち込める露天風呂。
 この旅館の若女将、縁自ら湯加減を確認していた。
「とっても良いわ、花粉症なんて嘘みたいよ」
 湯船に浸かりながら、アルメリアが返事する……
 重度の花粉症によって倒れた詩穂とアルメリアの二人だったが、温泉によってすっかり回復していた。
「ホントに気持ちいいです……でも、こんなに良くしてもらっちゃっていいのかな……」
 こちらは詩穂だ、どこか申し訳なさそうに湯船の中で小さくなっている。
「いいのよ、困った時は助け合わなきゃ、ね?」
 笑顔で応える縁。
 彼女は花粉症の人々を集めて無料で治療しているのだった。

「でも、せっかくだからお礼にお手伝いさせてもらっていいかしら?」
「うん、詩穂も手伝うよ!」
「本当? すごく心強いわ」
 ……人手はいくらあっても足りないはず……
 二人の申し出は快く受け入れられたのだった。

 そうこうしている間に、旅館に新たな客が訪れたのだった。
「縁さん、温泉に浸かりにきたにゅ〜」
「は〜い、すぐ案内しますね」
 ……温泉旅館・薫風は今日も大忙しだ。