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リアクション
『わずかに白さを帯びて』黄色い花粉が降り注ぐ――
「うぅ……暑いよぅ……」
久世 沙幸(くぜ・さゆき)にも花粉の症状が現れ始めていた。
暑さで足元もフラフラになっている、危なっかしい。
「沙幸さんったら、そんなに暑いのでしたら脱いでしまえばよろしいのに……」
心配というよりも、期待に満ちた目で藍玉 美海(あいだま・みうみ)が提案する。
「だ、だってぇ……こんな所じゃ……恥ずかしいよ」
「周りの方々をよくご覧なさい、誰もそんなこと気にしてませんわ」
「で、でも……」
すでに周りには下着姿の人間も多い、だが沙幸は頑なに拒んでいた。
「でもじゃありませんわ、そんなにフラフラになって……えいっ!」
「きゃっ! ねーさま?!」
美海が軽く小突いただけで、フラフラになっていた沙幸は転倒してしまった。
「う……ベトベトして気持ち悪いよぅ……」
「あら、ごめんなさい……でもこれで服を脱……着替えないといけませんわね」
「そんなぁ……ひどいよぅ」
「沙幸さんったら、こんなにねっとりと汚しちゃって……そこの路地裏でしたら人目につきませんわよ?」
「う、うん……」
……しぶしぶ路地裏で着替える事にする沙幸だったが……
「う、ベタベタして脱ぎにくい……」
「仕方ありません、わたくしも手伝いますわ……ハァ、ハァ……」
「ね、ねーさま?」
荒い息遣いが背中にかかる……とっても嫌な予感がした。
「えいっ」
「ひゃぁっ! ねーさま?!」
次の瞬間、沙幸は後ろから押し倒されていた。
「うふふ……脱ぎにくいのはこれかしら? それとも、こっちかしら?」
「そ、それは……脱がしちゃダメなんだもん!」
美海の手が下着にかかる……激しく抵抗する沙幸。
「ふぅ……わがままな沙幸さん……周りの方々をよくご覧なさい、嫌がる人なんて沙幸さんくらいですわ」
そんな馬鹿な……そう思いながら周囲に目をやった沙幸は、恐ろしい光景を目にするのだった。
「あ……ダメ……ダメぇぇ!」
「ダメだなんて言っちゃって……でも、身体は正直ね……」
セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)を押し倒すセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)……
「セレンったら、もうこんなにべとべとじゃない……ちゅる……」
……確かに二人の身体は花粉でべとべとになっていた。
花粉によって汚された身体を綺麗にしようというのか、セレアナは花粉をていねいに舐め上げる。
「それは……ああんっ!」
「ふふっ、セレンの花粉……とってもおいしいわ……」
「ずるい……あたしもセレアナの花粉を味わいたいわ……ちゅ……」
体勢を逆転させ、セレアナを組み敷くセレンフィリティ。
今度はセレアナから嬌声が上がる。
二人の周囲では多くの女性達が身体を絡みつかせている。
全員花粉によって正気を失っているのだが……周囲がコレでは正気を残している者も、自分の感覚を疑ってしまうだろう。
(これって……私の方がおかしいのかな……)
……いつしか沙幸もこの状況を受け入れていた。
「オオ、素晴らしい光景にゃる、噂どおりここは楽園にゃる」
深刻な花粉被害に避難勧告が出始めている中、わざわざ突入してくる者もいた、ミーナ・リンドバーグ(みーな・りんどばーぐ)である。
「わーい、ミーナもまぜるにゃる♪」
誰彼構わず、女性達に突撃していくミーナ。
まずは近くにいたセレアナに飛びついた。
「きゃっ! ちょっと……そんなトコ……ああんっ!」
「ふふっ、可愛いわね……じゃあ、3人で遊びましょうか?」
「わーい」
突然の乱入者に動揺することなく、すんなりと受け入れるセレンフィリティ。
「みーなー、ふらんかをおいていっちゃダメだっちゃ〜」
そんなミーナの後をフランカ・マキャフリー(ふらんか・まきゃふりー)が必死に追いかけてくる。
そして、その勢いのまま、3人の中にダイブ、飛び込んできた。
「いやん! ……まさか……4人で?」
倍に増えた人数に驚きつつも、どこか嬉しそうなセレアナだった。
「ふふっ……皆様、とても楽しんでいらっしゃるようですわね」
そんな光景を眼下に見下ろしながら秋葉 つかさ(あきば・つかさ)が微笑む。
ここは景観が売りの小洒落たバーテラス……隣でヒロユキがグラスを傾けていた。
「まさにカオス、だな……傍観しながら飲む酒の味は格別だ……飲むかい?」
と、つかさにも酒を勧めるヒロユキ。
「いえ……せっかくですから、私もあちら側で遊んでこようかと思います」
ヒロユキの誘いをにっこりと拒絶し、つかさが立ち上がる。
「きっと、更なるカオスが見られることでしょう……そこでお楽しみください……では……」
ヒロユキに一礼して外に出て行くつかさ……『店の窓から』
「さぁ、皆様にささやかなプレゼントです……受け取ってください」
窓の外へと飛び立ったつかさ……その身体がゲル状のものに包まれる。
彼女を覆うゲル……サキュバスライムは着地の衝撃を受け止めると、周囲に飛び散った。
「なにこれ? ちょっと、変なトコにぃ……ひゃうっ!」
沙幸が悲鳴をあげる、サキュバスライムは『見えては困る所を隠すように』という命令を受けているのだ。
「これ、ドロドロするにゃる……」
スライムをつまみ上げ、しげしげと観察するミーナ。
「ああ……花粉でベトベトになった後は、スライムでドロドロなのね……」
セレアナはうっとりとした顔でスライムを見つめていた。
「皆様、お気に召しましたか? それでは私も失礼いたします……」
周囲のそんな光景を満足げに見つめ、つかさもまた、その輪の中に加わっていくのだった。
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