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リアクション
その雄花、危険につき――
「さぁて、どいつから花粉症にしてやろうか……」
パラミタ杉の花で満載にした飛空挺に乗り込み、ジガンはあたりを見回した。
せっかく苦労して採ってきたのだ、なるべく多くの人間に味あわせたい。
あれは広場だろうか……人だかりを発見した。
「へへっ、良いターゲットがいたぜ……」
その人だかりに向けて、ジガンは急降下爆撃を敢行した。
その人だかりの中心では、胡弓を弾く城 紅月(じょう・こうげつ)の姿があった。
「……今日は鼻がむずむずするな……」
だが、くしゃみを堪え、演奏に集中する……くしゃみで音を乱すわけにはいかない。
そんな彼の演奏を聞きつけた人々がそこに集まるのに時間はかからなかった。
「あ……人が集まってきちゃった」
「せっかく集まってくれたんです、歌でファンサービスしてはどうでしょう?」
紅月の隣で演奏を堪能していたレオン・ラーセレナ(れおん・らーせれな)が提案する。
あくまでファンの為、自分が聞きたいのは内緒だ。
「そうだね……くしゅん! ……あれ……」
目をこする紅月……いつの間にか周囲が黄色い。
ジガンによって大量の花粉が降り注いでいるのだが……そんなことは誰も知る由がなかった。
「はっくしょい!」
集まった人々の中から次々とくしゃみがあがる。
「うぅ……なんか暑くなってきたよぅ……」
花粉症が一気に進行したネージュ・フロゥ(ねーじゅ・ふろう)が服を脱ぎ始める。
「……主さま?」
訝しげに見守る夏目漱石著 夢十夜(なつめそうせきちょ・ゆめとおや)の不安をよそにネージュは脱ぎ進めていく。
「うーん……風が気持ちいい」
ベビードール姿で駆け回るネージュ……べちょ。
「べちょ? ……きゃっ」
いつの間にか足元が黄色くなっていた……降り積もった花粉に足を取られ転倒するネージュ。
「うー、なにこれ……べとべとするよう……」
「主さま、大丈夫かいな?」
助け起こそうとする夢十夜だが……
「ありがと……って、とーや? 言葉が……」
「? どないしたん?」
……口調が変わっていた。
「なんだろう……この感じ……」
ディアーヌ・ラベリアーナ(でぃあーぬ・らべりあーな)は他の者とは異なる反応を示していた。
身体の奥がムズムズして……何かが溢れてきそうになる。
「ボク……おかしくなっちゃうよぅ……」
しかしその身体が、本能が、ディアーヌに抵抗を許さない……
それは抗えない快楽の波となってディアーヌに襲い掛かった。
「ああ、らめぇ! 出ちゃう、スカートの中から出ちゃうよぉ!」
ぽふっ ぽふっ
ディアーヌのスカートから白い煙のようなものが噴出した。
「ら、らめ……」
顔を赤くしてスカートを押えるディアーヌだが、煙の噴射は一向に収まらない。
「ディアーヌ?……くしゅん!」
何事が起きたのかとディアーヌを見るネージュだが、その煙を吸い込んでしまったようだ。
「あれ……なんか頭が……」
「ちょっと、主さま……ディアはん、どうなってん……きゃっ!」
煙を吸い込んでふらつくネージュを支える夢十夜だったが、ネージュはそのまま彼女を押し倒してしまう。
「主さま?」
「ふふふ……とーやぁ……」
とろんとした目で夢十夜を見つめるネージュ。
あの煙の影響だろう事は簡単に想像できた。
「あわわ……ディアはん、はよ、その煙を……」
しかし肝心のディアーヌはというと……
「はぁはぁ……止まらない、止まらないよぅ……」
ディアーヌは恍惚の表情を浮かべていた。
その煙……花妖精ディアーヌの花粉は、止まる事なく、むしろ勢いが増しているようだった。
風に乗って空気中に広がっていく……
「あぁ……暑い……」
なんとかこれまで暑さを堪えていた紅月だったが、もう限界のようだ。
彼が服に手をかけると、周囲から歓声が上がった。
皆に歌を聞かせるつもりが、とんだストリップショーだ。
「こ、紅月……何を……」
慌てて服を着せようとするレオンだったが、あられもない紅月の姿にすっかり見とれてしまっていた。
我を忘れ紅月の裸体を凝視している。
「ハァ……ハァ……」
しかし、紅月の裸体に引き寄せられたのはレオンだけではなかった。
(ダメ……服を脱いだくらいじゃ、身体の火照りが止まらない……)
パラミタ杉に加えて、ディアーヌの花粉まで大量に吸い込んでしまった天津 のどか(あまつ・のどか)だった。
暑さでぐったりとしている紅月の身体に覆いかぶさる。
「ああ……どうか、このまま私を慰めてください……」
のどかはそう言って、紅月の胸板に顔を埋めて……
「ちょっと待ちなさい!」
……レオンに捕まった。
「はい?」
とろんとした顔で振り向くのどか。
「紅月は私だけのものですよ! 手を出さないでくださいっ!」
紅月を狙う雌狐め……と睨みつける。
だがしかし……
「じゃあ……貴方が私の相手をしてください……」
ちゅる……
「ひぃぃ!」
どうやら相手は誰でも良いらしい……レオンのうなじに吸い付くのどかだった。
「は、離しなさい! このっ、このっ」
「もう放れません……可愛がってください……」
人々を混乱させる為に花粉を撒き散らすジガン……
パラミタ杉花粉に混ざって飛んでいくディアーヌの花粉……
有効な治療法が確立されないまま……各地で新たな惨劇が繰り広げられることになったのだった。
「ふ、二人とも、ちょっと待つでござる!」
「ふっふっふ……よいではないかよいではないか……」
「なんであたしがこんな事を……」
忍は信長とノアに左右から羽交い絞めにされていた。
もちろん二人とも下着姿……信長はサラシだが……二人の体が忍に密着する。
「う、うぐぅ〜」
花粉症のせいか妙な悲鳴を上げる忍。
しかし忍にとって大変なのはここからだ、なぜなら……
「さぁ今じゃ、香奈よ……」
「……し〜ちゃん……私……」
「よ、よさぬか香奈どのっ!」
下着姿で忍に迫る香奈……その表情は普段と違ってどこか艶めかしい。
「し〜ちゃんは……私のこと……嫌い?」
「そ、そげなこと、なかですたいっ……」
「よかった……」
ぴと……
香奈の身体が忍に密着する。
「はぅぅ!」
「おお! 恥ずかしがって出来ぬと思ったが、やるではないか……」
「む……」
忍、信長、ノア……三者三様のリアクション。
「し〜ちゃん……だいすき……」
とろんとした顔でつぶやく香奈。
(こ、これは……いやいや、花粉でおかしくなってるんだよな……)
早く治療してほしいような……もうちょっとこうしていたいような……
複雑な心境の忍だった。
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