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花粉注意報

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所変わって、こちらは百合園女学院――

 グラウンドでは少女達がサッカーをしていた。
(う……頭痛い……)
 ……郁乃のプレーにいつものキレがない。
 それは一緒に練習してきたチームメイト達には一目瞭然だった。
「郁乃、大丈夫?」
「うん、だ、大丈夫アルヨ……」
 仲間達を心配させては悪いと強がってみせる郁乃だったが……
「……アルヨ?」
「え、今私そんなこと言ったアルカ?」
「……アルカ?」
「お、おかしいアル……」
 言葉がおかしい、どうしても語尾にアルがついてしまう。
「おかしいのは郁乃でしょ、今日はもう休んだら?」
 気付けば皆から心配されていた……
「え、で、でもアルナ……」

(うぅ、私どうしちゃんだろ……)
 ひょっとして、来る途中で遭遇した黄色い雲が関係しているのだろうか……
 そうだとしたら荀灌も……そう思って荀灌の方を見ると……
「荀灌っ! なにしてるアルカ!」
「え? 暑いから……」
 ……荀灌はユニフォームを脱いで下着姿になっていた。
 ここは百合園女学院……男性がいないのだから、服を脱ぐことに抵抗はなかったようだ。
 とはいえ、周囲から好奇の目で見られることに変わりない。
「暑いから脱ぐじゃないアル! 早く服着るアルヨ!」
「無理ですっ! 服なんて着たら溶けちゃうです」
 逃げる荀灌、追いかけっこが始まった。

 その上空……
 ジガンの飛空挺は各地を巡り、こんな所にまで来ていた。
「女子校か……ここで花粉をばら撒いたら……さぞかしすごい事になりそうだ」
 さっそく爆撃の用意を始めるジガン……だが、その残弾……パラミタ杉の花は残り僅かになっていた。
「ち……しゃあねぇ……こうなったら……」
 飛空挺の高度を下げ、地表へ迫る……残っている花を両手に掴むジガン。
「この俺が直接プレゼントしてやるぜ!」
 パラシュートで飛空挺から飛び立つ、その両手から花粉が舞った。

「なにこれ……」
 黄色い花粉がグラウンドに降り注ぐ。
 吸い込んでしまった女生徒達は、やはり同様の症状を発症させていった。
「暑い……服なんて着てられないよぅ」
「あ、あの子を見て!」
「そっか、ここでなら脱いじゃっていいんだ……」
 駆け回る荀灌を見て、女生徒達が次々に脱ぎ始める。

「ハハッ、良い眺めだぜぇ……」
 空中で回転しながらそんな中へ降りてくるジガン、ゆっくりと着地する。
「きゃっ! お、男よ!」
 ジガンに気付いてパニックになる女生徒達……あらわになった身体を隠すのに必死だ。
「隠さなくていいんだぜ、暑いんだろ?」
 パラミタ杉の花を振り回して花粉を飛ばすジガン。
 あられもない姿で逃げ回る女生徒達にすっかりご満悦だ。

「これは全部お前の仕業アルカ?!」
 そんなジガンの前に郁乃が立ちはだかる。
「あん? 知らねぇな……」
 しらばっくれるジガンだが、状況的に犯人にしか見えない……いや、ある意味犯人だ。
「すぐにみんなを元に戻すアル! さもないと……」
「さもないと? かわいい下着姿でも見せてくれるってか?」
 そう言って郁乃に杉の花を向けるジガン……これでは近寄ることも出来ない。
「く……卑怯アル!」
「卑怯上等! ……わかったらそこでおとなし……くしゅん! ぶぇくしゅっ!」
 郁乃相手に勝ち誇っていた矢先、これまでなんともなかったジガンをくしゃみが襲った。
 そう……
 ジガンこそ、パラミタ杉の花粉を誰よりも多く吸い込んでいたのだ……発症に例外など、ありはしない。

「な……あ……暑ぃぃぃぃ!」
 一気に服を脱ぎ捨てるジガン……大量に吸い込んだ分、暑さも段違いだ。
 あまりの暑さに、全裸になってのたうちまわる。
「ちょ、ちょっと……私はそんなモノ、見たくないアル」
 慌てて目を覆う郁乃だったが、ジガンのおしべはしっかりと焼きついてしまうのだった。

「見るな、見るんじゃねぇぇ!」
 そんなジガンの周囲には、いつの間にか興味津々の女生徒達が集まってきていた。
「あら、この方……意外と……」
「つんつん……」
「やめろ、触るな、あぁっ!!」
 花粉を大量に吸い込んだジガンの症状は当分収まりそうにない……
 気が済むまでおしべを観察されてしまうジガンだった。