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リアクション
第一章 子供達を救え
薄暗い洞窟の中。
五十嵐 理沙(いがらし・りさ)とセレスティア・エンジュ(せれすてぃあ・えんじゅ)は洞窟の中を走っていた。
「イルミンも時折やや残念な人材がまぎれているのねぇ」
「うーん……」
理沙の率直な感想に、セレスティアは困ったように笑う。
聞いた話だけでは人を評価し辛いが、確かにダメそうな人にも思える。
「まあ、盗賊どもを蹴散らすのよ。子供達を助けないと。どっかの自業自得教師はともかく子供達に罪はないわ」
「そうですわね……実力的にも子供達を助けてさしあげませんと」
そこに関しては、セレスティアにも異論はなかった。
仮にもイルミンスールの教師とただの子供とでは、実力的に雲泥の差がある。
「こういう事をするのは不細工なムサイ輩と相場が決まって居るのよ。しかもロリコンよ! 善良な一市民として、そーいう変態は蹴散らすべきよね!」
「理沙……人の見た目でアレコレ言うのはどうなのかしら……」
理沙の発言を、流石に少々聞きとがめるセレスティア。
実のところ、一部に限り理沙の発言は間違ってはいないのだが……理沙の直観じみた偏見もバカにはできないということかもしれない。
「おい、こっちから声がするぜ……」
「ん? な、なんだぁ? 女がいやがるぜ!」
そこに理沙の声を聞きつけてやってきたのは、二人のひとさらい達。
どうやら、子供達を追ってきたようだが……。
「へっ、ガキ共なんか追ってるより余程楽しいじゃねえか」
「全くだぜ」
だが、ひとさらい達は理沙達を見て余計やる気を出しているようだ。
「あの人達は盗賊だけど、ロリコンとは限らないんじゃないくて?」
「いいや、私には分かるわ。あいつ等は相当なロリコンよ!」
「ん、んだとぉ! やんのかコラ!」
「調子のってっと……うぉ!?」
と、そこに理沙が発動させた野生の蹂躙によって魔獣たちが一斉に走り抜ける。
「よし、突っ込むわよ……回復はセレスティア、よろしくね!」
「やりすぎないようにお願いしますわよ!」
「分かってるって!」
抜群のコンビネーションで敵へと突っ込んでいく理沙とセレスティア。
「始まってるみたいね……」
綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)は聞こえてくる戦闘音を聞きながら、そんな言葉を漏らす。
「分断して各個撃破……言うは易し行うは難しってこのことね」
「そうね……」
この近くから気配はしない、と。
アデリーヌ・シャントルイユ(あでりーぬ・しゃんとるいゆ)は、手振りでさゆみに指し示す。
そう、さゆみとアデリーヌは、暗闇に身を潜めながら移動していた。
幸いにも障害物の類はここまでなかったが、それは逆にこちらが隠れるスペースが少ない事も示している。
「……ん」
アデリーヌの制止に、さゆみは全神経を集中させる。
感覚を研ぎ澄まし、耳を澄ます。
さゆみの耳に聞こえてくるのは、複数の足音。
そして……話し声。
「ったくよう……商品逃がしちまうなんざ前代未聞だぜ」
「今度からは全員縛って転がしとくべきだな、やっぱ」
どう聞いても、ひとさらいの会話だとさゆみはアデリーヌと視線を交わしあう。
ダークビジョンを発動しているさゆみにとって、暗闇など問題ではない。
そもそも、明かりで辺りを照らしながら歩いているひとさらい達相手では見失う心配などないだろうが……先手をとれるかとれないかは重要だ。
、恐れの歌、悲しみの歌、嫌悪の歌……ささやき声にも似た声で、さゆみは歌い始める。
そう、全ては奇襲のための下準備。
「貴方達を倒しにきたわよ!」
頃合いを見て飛び出したさゆみに合わせて飛び出したアデリーヌの光術がひとさらい達へと向けて炸裂する。
「ぐあっ……ちくしょう!」
そして発動するのは、さゆみのサイコキネシス。
念入りに準備したさゆみ達の襲撃。
それが成功しないはずはない。
各個撃破。
ひとさらい達が上手い具合に分散していてくれた事もあるだろう。
だが、間違いなくさゆみ達の作戦の勝利であった。
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