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リアクション
(7)イルミンスールの森探検・3―キノコを持ち帰ろう―
そのころ、またナナたちとは別の道を行ったルーシー・トランブル(るーしー・とらんぶる)、御厨 縁(みくりや・えにし)、周藤 鈴花(すどう・れいか)たちは、洞窟の突き当たりにたどり着いていた。どうやらここにはグリズリーはいないらしい。先ほど洞窟外で出ていったグリズリーの住居だったのかもしれない。
「例のキノコとやらは、これかのう?」
縁は暗い洞窟の奥に、群生しているキノコを発見した。
「ちょっとまって……」
鈴花が明かりを照らして、よくキノコを観察する。
「ちょっと青っぽいけど、本に出てたキノコとは形が違うみたいね」
鈴花は出発する前にエリザベートから本を見せてもらい、キノコの挿し絵をメモしておいたのだった。
「なるほど……グリズリーたちの食料だったのかもしれないねぇ」
ルーシーがのんびりとした口調で言った。
「では、採ってしまうとグリズリーたちの食べる分が減ってしまうの……」
縁たちは他の場所をさがすことにしたが、どうやら洞窟のこの部分には『青い星のキノコ』は生えていないようだった。
「ここには目的のキノコはないみたいね。いったん戻りましょう」
鈴花が言うと、ルーシーたちも同意したのだった。
鈴花たちが洞窟の分かれ道に戻ると、すでにナナ、真一郎たちと菅野 葉月(すがの・はづき)、ミーナ・コーミア(みーな・こーみあ)、比島 真紀(ひしま・まき)、サイモン・アームストロング(さいもん・あーむすとろんぐ)たちが集まってきていた。また洞窟の入り口の方から疾風たちも駆けつけてきたのだった。
「残るはこの穴でありますね」
真紀が洞窟の中央へとのびる穴をのぞきこんだ。
他の穴は鈴花やフィルたちによって調べられていたが、肝心のキノコはまだ見つかっていなかった。
「他の分かれ道と違ってずいぶん長く続いているみたいだけど……」
真紀のパートナー、サイモンが一緒に穴をのぞきながら心配そうに言った。
最後の道は、幅は他の穴と大して変わらなかったが、ずっと奥まで続いており、行き止まりが見えない。
「怖がっていてもしょうがないです。皆で行きましょう」
真紀の言葉に皆は従い、慎重に洞窟の奥を進んでいく。
他の分かれ道の倍ほどの距離を歩いただろうか、突然空間が広くなっていた。
「他の穴と違って、ずいぶん広いですね……」
葉月がミーナの火術で灯したランタンであたりを照らしながらつぶやいた。
穴の中はちょっとした広場といえるほど広く、ぼんやりと青い光に満たされていた。
「あれは……キノコ!?」
ナナと鈴花が光の正体に気づいた。
洞窟の岩壁にキノコが点々と生えており、そのキノコが微かな光を放っていたのだ。
鈴花がそっと近づき、キノコに手をふれようとする。
……しかし。
「ガル…ル…」
今までのグリズリーよりもひときわ低いうなり声が洞窟内に響く。
「……あ、あれがグリズリーなの!?」
ミーナは驚く。今まで黒い岩山だと思っていた影がのそりと動いたのだ。その大きさは今までのグリズリーよりもひとまわりは大きい。
黒山の頂上付近で、二つの目が光る。
「これならどうだい!?」
ズィーベンが氷術で巨大グリズリーの足を凍らせようとするが、大きすぎてうまく行かない。一部凍っても、力ずくで氷を破壊されてしまうのだ。
「足止めは難しいようだな。こうなったら、皆で力を合わせて倒すしかなさそうだ」
疾風が剣を構える。真紀、サイモン、葉月、ミーナたちも同様に戦闘態勢をとった。
月守 遥(つくもり・はるか)、宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)、セリエ・パウエル(せりえ・ぱうえる)たちも前へ出る。
「みんな、がんばって……!」
遥は呪文を唱え、疾風、祥子、セリエたちを祝福する。
疾風は全身に力がみなぎるのを感じた。そしてそのまま剣を振りかざすと、剣が炎に包まれていく。
「行けっ…『爆炎波』!!」
剣から放たれた炎は、そのままグリズリーの巨体に命中する。
しかしグリズリーはまだ弱まらない。爪を振りかざして、祥子たちをねらってくる。
「あぶない!!」
祥子たちが急いでよけると、グリズリーによって地面がえぐられるのが見えた。
「……くっ!」
疾風は体力の限界でもう爆炎波は放てない。
今度は剣を構えてグリズリーへ立ち向かっていく。
祥子もランスを振りあげて、グリズリーへ向かい突進していく。
グリズリーの巨体に、次々武器が命中する。グリズリーは若干動きが落ちてきたようだが、まだ疾風たちをねらって爪を振り回してくる。
「あぶない!!」
真紀がアサルトカービンで足を狙い、巨大グリズリーを牽制する。
ダメージはたいしたことはないようだったが、銃弾に驚いて一瞬グリズリーは一歩退いた。
そこへサイモンとミーナが同時に火術を撃ち込む。
グリズリーの巨体が火に包まれ、苦しむが、かえって暴れさせてしまう。
「うおおお……!!」
滅多やたらにグリズリーが振り回す腕の一部がこちらへ向かってきた。
「動かないで!!」
葉月がサイモン、ミーナたちをかばって腕の直撃を受ける。しかしあまりの勢いにランスは弾け、彼も倒れてしまう。
「葉月!!」
ミーナがあわてて葉月を抱き起こす。気絶していたが、どうやら致命傷ではなかった。
グリズリーの体の炎はおさまった。だいぶ苦しんでいたが、まだ経っていられるようだ……
「少しずつ攻撃していても埒があきません。ここは皆で一斉に攻撃しましょう!」
セリエが言った。
そこで疾風、祥子、セリエはタイミングを合わせて、一斉にグリズリーに突撃した!
「ぐおおおお……!!」
三人のダメージが一点に集中し、巨大なグリズリーはついに倒れた。
ずずず…ズシン、と地響きがして、グリズリーの倒れた後には砂埃が舞い上がる。
「やった……!」
セリエがグリズリーの倒れた姿を見てつぶやいた。
と、同時に、天井からなにやらゴゴゴ…と響く音が。
「何の音だ?」
疾風が驚いて見上げる。
「もしかして、今のグリズリーが倒れた衝撃で、天井が崩れたのかもしれないわ。このままここにいるのは危険かも……」
祥子が言った。
音は鳴りやまないまま、天井から小石などがパラパラ降り始めた。
鈴花たちが急いでキノコを必要な数だけ集め、洞窟を脱出する。
脱出直後、洞窟の奥からものすごい轟音が響いた。
洞窟が静かになった後、ナナたちがそっと確認に行くと、一番奥の広場立った部分が完全に埋まってしまっていた。
「では、あのグリズリーもキノコも埋まってしまったのか……」
疾風がつぶやいた。
キノコは採取した分が残っているので、もしかしたら学校で育てることができるかもしれない。しかしあの巨大グリズリーはもう助からないだろう。
「とにかく、目的のキノコは手に入りました。急いで学校へ帰らないと……」
セリエの言うとおりであった。それに、洞窟の入り口には先ほどのグリズリーたちが未だ気絶して倒れている。
グリズリーたちが気づく前に、この場を離れた方がいいだろう。
疾風たちは、急いで学校へ戻ることにした。
学校へキノコを持ち帰り、クロードを元に戻すための解毒剤を作らなくてはならないからだ。
ソアはグリズリーたちから少し離れた後、グリズリーにヒールをかけておいた。さすがにケガしたままではかわいそうだと思ったのだろう。
「…………」
ベアは特になにも言わず、ソアがくるのを待っていた。
そして、彼女が来るとの確認すると、一緒に学校へ向かって走り出すのだった。
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