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彼氏彼女の作り方 1日目

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彼氏彼女の作り方 1日目

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成長したその先に

「今日は、僕のような若輩者の話を聞いてくれてありがとう」
 全ての講座が終わり、直が改めて礼を言うと参加者からもお礼の言葉が返ってくる。恋愛講座として依頼された物ではあるが、持て成しの仕方やとっさの時の対応方法など、恋愛面以外での人付き合いの仕方としては重要なことを学べる場になったのではないだろうか。
 ヴィスタも今日1日を振り返ると色々な騒動があったせいで笑顔よりも苦笑いになってしまうわけだが、それも発展途上な参加者たちだからこそだとも思う。
「人生長いようでも同じ人に2度も巡り会えるかどうかは分からねえ、そのときそのときを大切にしていけよ」
 今こうして同じ講座に集まったメンバーでさえ、所属している学校も年齢も出身地だってバラバラ。幾人かは学校の中や次の依頼、催しで顔を合わすこともあるだろうが、中にはまったく会わない人や今日がきっかけで友人になる人もいるかもしれない。
「1人1人を大切にすることで次に繋がる。そのためにも、いつでも最高の自分を見せられるようにしないとね」
 同じメンバーがこうして揃うことはないだろうが、どこかで今回の縁が無駄にならなければ良いことを願いつつ今後の予定を全員に伝える。
「次回の講座の連絡だが……今回のことを活かして内装や贈り物について、エスコートの仕方やされ方などを学んで欲しいと思う」
「内装、ですか?」
「ああ、最終日に成果発表会を予定しているからね。その内装を」
 つまり、直やヴィスタが直々にテストをするということではなく、外部から審査員を呼ぶということだろうか。どんな審査員が来るのか想像もつかないが、イエニチェリが呼ぶとなるとそれ相応の人たちなのかもしれない。
 その人たちを上手く持て成すために雰囲気作りの内装を決め、贈り物を手配し、エスコートの練習。なんだかこれは、文化祭の準備でもしているかのようで少し楽しみかもしれない。
「今日の参加者は男性が若干多いみたいだし、当日の衣装参考にもさせてもらおうかな」
 もちろん、女性の衣装も考えておくけれど、と企画書を見ながら思案している顔は講座よりも別のことを考えているようで、一体自分たちは何を学んでいるのだろうと不思議に思う。
「あの、今回は恋愛講座ということで良かったんですよね?」
 心配そうな声が上がる中、ヴィスタはニッと口の端を上げて意味深な笑みを浮かべる。
「そいつは先に言った通りだ。人付き合い全般に使えることだから、恋愛に全く役立たないモンではないだろうよ」
 星の数ほどいる人に対し、好みも千差万別。そうなると正しい答えなどあるはずもなくて、人付き合いに対するスキルを上げていくのが手っ取り早いのではないかというのがメインのようだ。実質「恋愛講座」になるかどうかは受講者次第と言ったところだろう。
「また希望者を募るから、縁があればよろしくね」
 そう言って去っていく直とヴィスタを見送り、参加者たちはお菓子の交換会や最後の後片付けをしながら、2人が言い残したことそ考える。
「内装を整えて誰かをお持て成しって、テストと言うよりお店みたいね」
「贈り物は来店記念プレゼントとか?」
 あくまで憶測だったはずなのに、話が盛り上がれば盛り上がるほど真実味を帯びてくる噂話。今日の講座と次回の予告を聞けば、最終日にする成果発表会とはあれしかないだろう。
 それを楽しみにするか、当初の目的とは違う内容にがっくりとするかは自分たち次第。出逢いなんて色んな所にあるのだから、無駄になることなんて一つもないハズだ。
 一期一会、一生に1度しかない出逢いもある。そんなときに疲れた自分や気を抜いた自分をみせないように、常に素敵な自分で参加しよう。そうすればきっと、一生に1度きりになるはずだった出逢いから、次も会いたいと思われるような出逢いに変えられるかもしれない。
 定められた運命もあるかもしれないけれど、自分で切り開けることもある。1つの可能性を無駄にしないように過ごすこと。それが恋愛のチャンスを掴む近道なのかもしれない。



 控え室では、先に戻っていた京子、そして変熊と協力してくれた面々が出迎えてくれた。
「お疲れ様。君たちのおかげで、細やかなところまで対応できたよ。僕1人だと、きっとアラが目立っていただろうね」
「いえ、こちらこそ勉強になりました。ありがとうございます」
 深々と頭を下げようとする翔を止め、直は苦笑する。
「そんなにかしこまらないで。僕は少し肩書きを貰ってるだけで、君たちと同じ生徒だ。同じ目線で頑張っていきたいと思ってる」
「同じ目線……意見を取り入れながら何かを行うということかな」
 開始前にも説明してもらったが、講座のテストとして成果発表会があるのではなく、それを実行するために講座があるような気もする。
 そんな真の言葉に京子もキーワードを拾い集めていく。
「紅茶やお菓子で持て成して、会話の実践は接客……かな」
 けれども、恋愛をテーマにしていただけあって、回答はどれも接客とは結びつかない。一体何が起こるんだと4人は考え込んでしまった。
「そう悪いように使わねぇから、気が向いたらまた手伝ってくれや」
 豪快に笑って去っていくヴィスタと、それについて行く直。もう1度振り返って、口元には笑みを浮かべていた。
「もちろん強制はしないから。でも、僕は君たちと作り出せることを楽しみにしている。もちろん、他の参加者にしてもね」
 楽しみにされている催し物。どこへ向かっているのかは、なんとなく見えてきたのかもしれない。
 そして、何かを企む2人の帰り道はと言うと――
「まさか、提供した物へのクレーム対応のつもりだった質問が提供される側で埋まるとは思わなかったよ」
 どちらでも良いと言ったのは確かに自分だ。しかしあれではクレーム対応の答えとしては利用出来ないのだから別の使い道を考えなければならない。
「その分、新しい企画が増えたんだろ?」
「まあね。彼の発言も刺激になったよ。これは普通の物にするか女性向けにするか悩むところだね」
 男性向けの案が1つも出なかったことが不思議ではあるが、もしかしたら最近それは空京に出来たようなので需要は足りているのかも知れない。それに、3つから絞り込むよりも2つから絞り込むほうが断然楽だろう。
「あれはなぁ。あそこまでの大芝居が出来れば、執事でもホストでも先生でも何でも出来そうだな」
 普通のに決まれば何も問題は無いが、もし女性のお客様をメインに考えるとなるとその中でも幅が広がる地球にもその手の趣向を凝らした店は多数あるらしく、再度情報を仕入れてみようと思っていた直はヴィスタの詳しさに驚くばかりだ。
「……随分詳しいね? まぁ、その中でも男性も気まずくならない物を採用したいのだけど」
 男色家というのならともかく、そうでない人が来た場合居たたまれなくなって逃げ出すことになるかもしれない。けれども、事前にいくら策を練ろうとも男性と女性で思考が違うのだから自分たちだけでは役不足だ。
「深いことは気にすんな。これで来店の際の対応も方向性を次で決められて……希望するメニューがなかったときも大丈夫か」
「そうだね、1つ目の質問の結果があれだったし一緒に作る物があっても楽しそうだ」
 少しずつ詰められていく企画書。最終日には参加者がどんな変貌を遂げ、周りにどんな印象を与えるのか。
 憩いの一時、夢の一時を過ごす男女に恋愛の切欠を与えることが出来るのか。
 それは、素敵な自分でいることと少しの勇気で掴めるようになるのだろう。
 出逢いや今の想いを大切にする、みんなに幸せが訪れますように――。

担当マスターより

▼担当マスター

浅野 悠希

▼マスターコメント

この度はご参加ありがとうございます、GMの浅野悠希です。
家の諸事情で前回までのシナリオが大幅に遅れ、そのしわ寄せでこちらも遅れることとなりまして、申し訳ありませんでした。

今回は恋愛講座としてお集まり頂いたのですが、直が「期待に応えられる物になるかわからない」と言っていた通り恋愛色の薄い物となりました。こちらは恋愛シナリオでないことがポイントなので、今後どういった展開を見せるのか楽しみにして頂ければと思います。
ラストで最終日について記されておりますが「ほぼ」その通りになる予定です。その内容にどんな特殊内容がつけられるのか、阻止されるのかというのが次回のお話です。最終日はその結果次第となりますので、皆様のご協力をよろしくお願い致します。

お届けが大変遅くなってしまいましたが、少しでも楽しんで頂ければ幸いです。