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リアクション
三 一時休戦
「弁当、弁当はいらねえかー」
昼休み。激闘を繰り広げる生徒たちが束の間の休息を味わう中、佐野 亮司(さの・りょうじ)は弁当を売り歩いている。
「お、祥子じゃねえか。どうよ、知らない仲じゃねえし、多少は安く売ってやるぜ」
亮司は宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)とそのパートナーセリエ・パウエル(せりえ・ぱうえる)の姿を発見して声をかけた。
「あら、闇商人じゃないの。こんなときまで商売とはご苦労なことね」
「だから闇商人言うなと。で、買うのか買わないのか」
「そうねえ。ふーん、結構おいしそうじゃないの」
祥子が弁当を覗き込む。
「当たり前だ。うちの綾乃が作ったんだぜ」
「もう、亮司ったら」
亮司の隣で、向山 綾乃(むこうやま・あやの)が照れた顔をする。
「でも自信作ですよ。会場についた後一生懸命手作りしましたから」
「じゃあいただくわ。私とセリエの分」
「へい、毎度あり。ところで何なんだ? 二人して大荷物抱えて」
「ふふふ、私たちは騎馬戦お疲れ様の焼きイモパーティーを計画しているのよ! この時期のパラミタベニアズマは甘くておいしいからね。それにイモなら馬も食べられるでしょ」
「ほう、考えたな。燃料とかはどうするんだ?」
「周辺の公園などから落ち葉を拾って使おうと思っています。足りるといいのですが……」
セリエが不安そうに言う。
「それならこの弁当の容器を使えばいい。よく燃えるぜ。これからバリバリ売る予定だから、食べ終わったら皆から集めな」
「本当ですか。ありがとうございます」
「んじゃおれは商売の続きをしてくるぜ。またな」
亮司は祥子たちに別れを告げて弁当売りに戻る。彼の弁当は好評で、自分と綾乃、そしてソル・レベンクロン(そる・れべんくろん)の分を残してすぐに完売となった。ちょうど買い出しから戻った黎明たちが飲み物を配っていたのも後押しになっただろう。
「ふー、売った売った。俺たちも昼飯にしようぜ。もう腹がぺこぺこだぜ」
亮司が綾乃の弁当を絶賛しながら食べていると、前半戦の結果を告げる放送が流れた。
『途中経過をお知らせします。現在のポイント、シャンバラ教導団――十ポイント。波羅蜜多実業高等学校――十六ポイント。このようになっています』
「ありゃ、教導団負けちゃってるのか。十対十六ってことは取ったハチマキの数じゃ勝ってるけど、パラ実のポイント二倍ルールが効いてるな」
まあこれからだ、と亮司は最後の一口を口に運ぶ。
「ひゃっほーう! 見たかパラ実の実力を!」
自分たちがリードしていると聞いて、パラ実生たちは俄然勢いづく。だが教導団側も勿論諦めてなどいない。彼らは後半に向けて静かに闘士を燃やすのだった。
そして間もなく、昼休みは終了を迎える。
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