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リアクション
第二章 機晶石を探しに
「リフルさん、星剣を失っても尚、シャムシエルさんのいいように使われるなんて、かわいそうですぅ。助けにいくのは他の方にお任せしましたが、私は自分のできることをして力になりたいですねぇ」
洞窟へと向かう道の途中、小型飛空艇の上でメイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)が言った。
「僕も、機晶石を取りにいくのは賛成かな。直接リフルを助ける役でなくても、十分皆のためになると思うからね。とはいえ、こっちも危険なことには変わりないから、気を引き締めていかないと」
セシリア・ライト(せしりあ・らいと)が、ウォーハンマーを持つ手に力を入れる。フィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)も付け足した。
「スタナード様も、洞窟には覚悟が必要だと仰っていましたからね。私たちが機晶石を持ち帰らないと、肝心の飛空艇が動きません。どんな細かいことも見逃さないつもりで頑張りましょう」
言葉を交わす三人の横で、久途 侘助(くず・わびすけ)はスタナードの背中を見つめていた。
自分たちに危害を与えたり、シャムシエルに寝返ったりする機会ならいくらでもあったはずだが、スタナードはそうしなかった。
スタナードを疑っていた侘助は、せめてもの罪滅ぼしに、スタナードを守るよう動こうと考えていた。
しかし、侘助にはまだ一つ気になることがあった。彼はスタナードに並びかけると、直接尋ねてみた。
「スタナード、機晶姫の組み立てや修繕ができるらしいが、どうしてだ? 昔の技術が必要だったりしないのか?」
スタナードは、「知らないのか?」という顔をして、これに答えた。
「そりゃあヒラニプラは機晶都市と呼ばれるくらいだからな。ヒラニプラの技師にだけ伝わる技術があるのさ」
「なるほど……」
「ま、俺ほどの腕をもったやつはそういないだろうがな」
スタナードは威勢良く言う。今度は、葛葉 翔(くずのは・しょう)が彼に話しかけた。
「洞窟に巣くうというモンスターだが、戦闘の途中で洞窟が崩れたり、巨大機晶石が壊れたりするのは避けたい。できれば外で戦った方がいいと思うんだが、どうだ? 具体的には、誰かが囮になって外まで誘き出すという形になると思う」
「ふむ。確かに、それができりゃあ大分やりやすいな」
「モンスターが外に誘き出されたら、待ち構えたこのイーディが、蜂の巣にしてやるじゃん!」
イーディ・エタニティ(いーでぃ・えたにてぃ)が張り切ってみせる。翔の提案に、ザカコ・グーメル(ざかこ・ぐーめる)はこう意見を述べた。
「自分としては、可能な限り戦闘は避けたいですね。基本的には殺気看破で注意しつつ光学迷彩で隠れて進み、機晶石の回収を第一に考えたいです。あなたの言う通り、下手に戦って洞窟が崩れたら、目的がパーになりますからね」
「いずれにせよ、誰か派手に暴れる囮役がいりゃあ楽になるな」
強盗 ヘル(ごうとう・へる)が言う。
「他にいなけりゃ、囮は俺がやるよ。言い出しっぺだしな。じゃあ、極力戦闘は回避。やむを得ない場合は外に誘導ということで――」
翔の発言にみんなが頷き始めたとき、如月 玲奈(きさらぎ・れいな)が流れをぶった切った。
「ちょっと待ったあ! 洞窟の中じゃ戦いにくい? それならもっと簡単な方法があるわ。洞窟をぶっ壊して、モンスターを生き埋めにしちゃえばオールオッケーよ!」
玲奈は、間もおかずに捲し立てる。
「這い出てきたやつは弱ってるだろうから、そのままぶっ飛ばせば無問題。運が良ければ機晶石が出てくるかもね。崩落に巻き込まれても、そう簡単には壊れないでしょ」
しかし一行は、玲奈の発言には耳も貸さない。
「あ、ちゃんと洞窟をぶっ壊せるかが不安なんでしょ? 安心して。私も、飛空艇の発掘に使った爆薬が残っていないと気がついたときは絶望したわ……でも大丈夫、この工事用ドリルがあるわ!」
玲奈はドリルをキュイーンと回転させる。ハイテンションな玲奈とは対照的に、翔たちは静かに相談していた。
「いざというときは、あのうるさいのを囮にしよう」
「そうですね」
「ここだ、着いたぜ」
スタナードがとある洞窟の前で小型飛空艇を止めると、如月 佑也(きさらぎ・ゆうや)は少々拍子抜けしたような様子で言った。
「一見、何の変哲もない洞窟だな」
「だがこの奥に巨大機晶石が、そして強力なモンスターが隠れている……って話だぜ。事実、昔は巨大機晶石目当てにやってきた連中もいたが、モンスターを見るなり、一人残らず逃げ帰ったらしい。今じゃ近づくやつすらいないな」
「みんなだらしないわね。モンスターだかなんだか知らないけど、このあたしがボコボコにしてやるわ!」
そう息巻くのはアルマ・アレフ(あるま・あれふ)だ。佑也に説得されて渋々こちらにきたものの、本当はリフルを助けにいきたかったので、機嫌が悪いのだ。
「アルマ、頭を冷やさないと怪我するぞ。何度も言っただろ。俺だって、リフルさんを助けにいきたいのは山々なんだ」
佑也がアルマを宥める。
自らも【アルマゲスト】の一員でありながら、リフル救出を他のメンバーに任せ、自分は機晶石確保に尽力する。それは、彼にとっても苦渋の選択だった。
しかし、何の対策も無く蛇遣い座の前にアルマを立たせることだけは避けたかった。
「ふんっ」
そんな佑也の気持ちを知ってか知らずか、アルマは一人で洞窟へと入っていく。
「やれやれ」
これは、俺がモンスターの注意を引きつけないといけないな。
佑也はそう思いながら、アルマの後を追った。
「コレット、それじゃあ荷物番を頼む」
「任せてよ、おやぶん」
次々と人が洞窟内に向かう中、コレット・パームラズ(これっと・ぱーむらず)は天城 一輝(あまぎ・いっき)の指示で荷物番をすることにする。
「巨大機晶石を運ぶのに道具はいらないの?」
コレットがスタナードに尋ねる。
「ここに来てる連中の小型飛空艇で、空から運べばいい。俺のは改造してあるから、相当馬力が出るしな」
「でも、飛空艇は洞窟の中を飛べるの?」
「……なんとかなんだろ!」
洞窟の中は、ずっと一本道が続いていた。そして一番奥、広い空間に一行がたどり着いたとき、何者かの声が聞こえてきた。
「誰だ、俺様のテリトリーに入りこんでくるヤツは!」
その声に、一同身構える。
「出ましたね。どんなモンスターが相手であろうとも、誰にも怪我はさせません」
香住 火藍(かすみ・からん)はディフェンスシフトやファイアプロテクトで味方への攻撃に備える。
佑也も先頭に立ち、ガードラインで背後の仲間を守ろうとした。ローザ・セントレス(ろーざ・せんとれす)は退路の確保に努める。
しかし、月詠 司(つくよみ・つかさ)が灯り代わりの光術を声のした方に向けた途端、相手はいきなり司に突進してきた。
「光り物じゃああ!」
「え? なんで私が囮になってるんですかああ!」
司は全速力で入り口へと引き返す。モンスターは司を追い、一気に洞窟の外に出た。モンスターの全身をはっきりと見たウォーデン・オーディルーロキ(うぉーでん・おーでぃるーろき)は、こう口を開いた。
「巨大な……トカゲ?」
「ちげーよ、トカゲじゃねーよ」
モンスターは反論してくる。
「では、何なのじゃ?」
「それはその……グレートリザードだよ!」
「大して変わらぬではないか」
司は、モンスターの姿を興味深そうに観察する。一番気になったのは、モンスターがかけているサングラスだった。
「どうしてそんなものをしているのですか」
「ああん? これか。俺様光り物が好きなんだけどよ、キラキラしたもん見てると頭痛してくるのよ。それで特注したってわけ」
「なるほど」
「お取り込み中悪いけど、本題に入らせてもらうじゃん」
イーディは、モンスターに巨大機晶石を渡して欲しいと話す。モンスターは、頑なにこれを拒んだ。
「冗談じゃねえ! あれは俺の宝物だ!」
「なら仕方ないな」
翔がグレートソードを構える。すると、ザカコが言った。
「その必要はありません」
「ああ」
侘助もザカコの意図することが分かったらしい。侘助は、雅刀で素早くモンスターのサンブラスを破壊した。ザカコはすかさず、轟雷閃をまとわせたカタールをモンスターの目の前で動かす。
「うおおおお! やめろ!」
「光に弱いと自分で言っていましたからね」
「売ったらいくらになるかな」
洞窟の外までモンスターに運ばせた機晶石を見て、ヘルが言った。機晶石は、彼の身長よりも大きかった。
「なんだと、この機晶石は我の命に代えても守るぞ」
ヘルの言葉を聞いて、ユリウス プッロ(ゆりうす・ぷっろ)が目の色を変える。
「冗談だよ、睨むなって」
「よし、できたぞ」
そのとき、スタナードが機晶石運搬の準備を整えた。一輝たちは機晶石を奪いにシャムシエルたちがやってくるのではないかと警戒したが、機晶石は無事飛空艇まで届けられた。
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