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リアクション
2.教えて☆シャム子ちゃん
「見えた! リフルは任せたぞ。番犬の刃(ケルベロス・エッジ)!」
シャムシエルを視界に捉えると、牙竜は作戦遂行のため、仲間と別れる。
「全く、俺たちの手助けをするとはな。お前ヴァンガード嫌いじゃなかったのかよ……頼むぜ、正義の味方(トイ・ボックス)!」
樹月 刀真は、そう言って、正義のヒーロー【ケンリュウガー】の衣装に身を包む牙竜を送り出した。
シャムシエルの前にちゃっかり一番乗りで姿を現したのは、遥だった。遥は、シャムシエルの胸をじっと見て言った。
「あなたの胸は、夢も希望もつまってなさそうだから嫌いです。リフルの胸には夢や希望が詰まっている。そこがイイ!」
「キミ、大丈夫?」
シャムシエルは怪訝な顔をする。
「おっぱいについては、俺も黙っていられないな。のぞき部として」
流れに乗って、葉月 ショウ(はづき・しょう)が続いた。
「とりあえず、スリーサイズを教えてもらおうか」
「スリーサイズぅ? まあ、別にいいけど」
「いいのか」
シャムシエルの反応に、ショウは一瞬とまどう。
「んっとねー。上から92〜」
「92!」
「63」
「63!」
「92、だよ」
「なんと恐ろしいスペックだ……」
「へへーん、ナイスバディでしょ」
シャムシエルは自慢げに胸を張って見せる。
「それは小さい頃から立派だったのかい?」
高村 朗(たかむら・あきら)も、シャムシエルの胸を指さして聞いてみた。
彼は、今まで十二星華に蛇遣い座は居なかったことや、シャムシエルの、善悪の判断がつかぬ子供そのものの様な態度に違和感を覚えていた。
そこで、それとなく出自を聞き出そうと考えたのだ。このような問い方をしたのは、普通に尋ねても相手は答えないだろうと考えたから、そして、こんなしょうもない質問に答えは用意していないだろうと予測したからだ。別にボインが好きなわけではない。断じて、ない。
これに対するシャムシエルの回答は、
「気がついたら大きくなってた」
というものだった。
(うまくかわされたな……幼い性格を利用する方向でいくか)
「気がついたら、ねえ。頭の悪そうな答えだ。その分じゃ、本当に洗脳ができるのかも怪しいな。インチキだったりして」
朗はシャムシエルを挑発してみる。彼女は、朗をきっと睨みつけた。
「なんだって? その口、今すぐきけなくしてあげようか」
シャムシエルの機嫌が斜めになりかけたのを悟って、すかさず源 紗那(みなもと・しゃな)が口を開いた。
「インチキなんかじゃありませんよね。シャムシエルさんは、石化だって解除できるんですし」
「勿論さ」
「石化した人を元に戻すなんて、シャムシエルさんにしかできないことです。一体どうやっているんですか?」
「それは教えられないな」
シャムシエルは笑顔に戻ったが、この話題について口を割ろうとはしない。
「ではせめて、リフルさんの石化を解いてもらえませんか。石になったリフルさんが砕けてしまっては、あなたも困るはずです」
「だめだめ。そんなこと言って、魂胆が見え見えだよ」
食い下がる紗那の要求にも、シャムシエルは応じなかった。
子供っぽく、まるで猫のようなシャムシエルを心の底から憎めない緋桜 ケイ(ひおう・けい)は、彼女と戦わずにリフルを助ける糸口を見出したかった。ケイはシャムシエルに対して、自分の考えをストレートに述べてみた。
「現存する遺跡や資料からは、5000年前にあんたが存在した痕跡を見つけることができなかった。つまり、あんたは他の十二星華に比べて極最近に目覚めた剣の花嫁だということ。恐らく、ティセラを蘇生したエリュシオンでな」
自分の問いかけにシャムシエルが素直に答えるとは思えない。ケイは、彼女の反応を注意深く観察しながら続けた。
「ここからが本題だ。なあシャムシエル、あんたがティセラを操っているんじゃないのか? だとすれば、ティセラが今あんたと知り合い関係にあることも、5000年前は慕っていたアムリアナ女王に憎悪の念すら抱いていることも説明がつく」
シャムシエルは「ふうん」と笑みを浮かべると、
「ティセラはいいお友達だよ」
とだけ答えた。
「私も聞きたいことがありますっ」
次いで、ソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)が口を開いた。
「どうしてシャムシエルさんは、一度はいらないと言ったリフルさんを再び攫ったんですか? リフルさんに星鎌ディッグルビーをもたせ、再び十二星華に戻す方法でもあるんですか」
「ま、コレにもまた働いてもらうかもしれないってことだね」
シャムシエルはリフルの石像をコンコンと叩く。
「も、もうひとつ教えてください。かつてリフルさんにかけられた洗脳が解かれた際、女王像の左手が出現しました。わざわざリフルさんに与えておき、回収するというのは不自然です。洗脳のために必要だったとか、何かしらの意味があったのではないですか!」
「答える義理はないね。なんで、ボクがそこまでサービスしなきゃいけないのさ」
シャムシエルが頬を膨らませる。彼女の様子を見て、悠久ノ カナタ(とわの・かなた)が言った。
「当然だが、そう簡単には教えてくれぬな。しかし、子供のような性格を考えれば、結局あやつもまたエリュシオンに利用されているだけなのかもしれぬな……。本当の姿を理解するためにも、もっと会話を続けていかねばなるまい」
「でも、どうやって?」
尋ねるケイに、カナタはこう提案した。
「とりあえず、敵対心を下げるためにも、まずはあやつを愛称で呼んでみるのだ。確か、自ら『シャム子』と言っておったとか……?」
これには、雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)が食いついた。
「そう、機晶石を壊したときに、『シャム子スラーッシュ!!』とか叫んでたらしいぜ! 意味はまるで分からんが、強烈なインパクトじゃねーか。もうあいつのことはシャム子と呼ぶしかないな。そこで俺に考えがあるんだが――」
ベアはケイ、カナタ、ソアを集めてひそひそと話しはじめる。
「でよ、四人でこう言うんだ」
「ふむ。試してみる価値はあるかもしれないの」
「俺はやだぜ、そんな恥ずかしいこと……」
「やるだけやってみましょうよっ」
すぐに話がまとまると、ケイ、カナタ、ソア、ベアの四人はシャムシエルに向き直り、声を合わせて言った。
「勿体ぶらずに教えてよ、シャム子ちゃん!」
「な、なんだいキミたち急に……」
シャムシエルは体を仰け反らせる。
うまくいったか? 四人がそう思ったとき、シャムシエルはふうと息をつき、笑みを消した。そして、星剣還襲斬星刀(かんしゅうざんせいとう)を取り出す。
「なんでも聞けば答えてくれると思ってるのかい? 質問攻めにはもううんざりだよ。そろそろ終わりにしよう」
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