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リアクション
3.交戦
説得する生徒たちの声もむなしく、態度を急変させたシャムシエルに星剣を収める気配はない。戦闘は最後の手段と考えていた紗那、そしてパートナーのプリムラ・ヘリオトロープ(ぷりむら・へりおとろーぷ)も身構えた。
「ちくしょう、攻撃してぇとこだが、もしリフルに当たっちまったら……うかつに動けねえぜ」
歯ぎしりするラルク・クローディス(らるく・くろーでぃす)。その横で、茅野 菫(ちの・すみれ)と相馬 小次郎(そうま・こじろう)がすっと前に出た。
「おい、どうするつもりだ?」
「あんたに用はない」
菫はそう答えると、シャムシエルに言った。
「あたしはあんたの側につくよ」
「勝手にしなよ」
「そうする」
菫が体の向きを変え、生徒たちに相対する。どよめく彼らに、小次郎はリフルを見ながら言い放った。
「こんな女一人にむきになるとは、見苦しい連中だ」
「なんだと!」
小次郎の態度に声を荒げたのは、刀真だった。
「リフルはこれから俺たちと笑って過ごすんだ! 月夜」
月夜は刀真の合図で彼にパワーブレスをかけると、小型飛空艇で上空に飛び上がる。これを機に、戦いの火ぶたが切って落とされた。
月夜は太陽を背にし、刀真が大技を放つ瞬間に備える。しかし、菫と小次郎は、様子見をする刀真に攻めてこなかった。菫はシャムシエルの側を離れず、小次郎は刀真が攻勢に出ようとしたときだけ軽く牽制してくる。
シャムシエルには、クルード・フォルスマイヤー(くるーど・ふぉるすまいやー)とアシャンテ・グルームエッジ(あしゃんて・ぐるーむえっじ)のコンビが真っ先に向かった。
「……リフルを守れなかった……約束をしたというのに……」
クルードはリフルを攫ったシャムシエル以上に、約束を果たせなかった自分に腹を立てていた。しかし、戦闘に焦りや怒りは禁物。彼の頭はいたってクールだ。
自分が前衛、アシャンテが後衛、というベストと思われる布陣をとり、右手の刀でシャムシエルの防御を崩しつつ、左手の刀で急所を狙うという戦法をとっている。
さすがのシャムシエルも、小脇に抱えたリフルを壊さないよう気遣いながら、クルードの攻撃とアシャンテの援護を受けきるのは難しい。シャムシエルは、回避重視の立ち回りを展開した。
「……逃げてばかりか。口ほどにもない」
距離をとったシャムシエルに、アシャンテがわざと言う。そこへ、神代 明日香(かみしろ・あすか)が毒虫の群れをお見舞いした。これなら石になっているリフルに被害はない。
「邪魔だっ」
シャムシエルが星剣を振るって毒虫をなぎ払おうとする。明日香はそれに合わせて、ハンドガンで彼女の頭を狙い撃ちした。シャムシエルは、すんでのところでこれをかわした。
「あは、よく避けられましたぁ〜♪」
馬鹿にしたように言う明日香を、シャムシエルが睨みつける。詰め寄ってこようとするシャムシエルに、明日香は続いて闇術をかけた。その後、光術で闇を消し去る。
シャムシエルが視界を奪われている間に、明日香は遠くまで移動していた。明日香は、「どうしたのかなぁ?」とニコニコ笑顔でシャムシエルに手を振る。
「……馬鹿にしてくれるね」
シャムシエルの表情が、いらついたものへと変わっていく。
「ここが攻めどころね」
朝倉 千歳(あさくら・ちとせ)はリフルを手放させるべく、シャムシエルに光条兵器によるフェイントを仕掛けようとした。しかし、そこにパートナーの朝倉 リッチェンス(あさくら・りっちぇんす)がやってきた。
「リツ? どうしてここに」
「ダーリン、お弁当もってきたです〜」
リッチェンスは笑顔で千歳に弁当を渡そうとする。が、さすがに周囲の異様な雰囲気に気がついたようだ。
「……何やら、いきなりクライマックスな展開なのです。これは時代劇でいうところのラスト10分ですね。これから悪代官を成敗して、攫われた町娘を助け出そうというシチュでしょう。分かります」
リッチェンスはシャムシエルを悪代官、リフルを町娘に見立てて勝手に納得すると、千歳にもらったお気に入りの木刀を取り出す。
それを見て、千歳は慌てて彼女を止めた。
「待って、リツ。あなたには、チャンスを見てこちら側にリフルさんを運んでほしいの。これはリツにしかできない仕事よ」
(木刀にドレスだけの装備じゃ何もできないでしょ!)
「分かったです。ついに、私の本気(マジ)を見せるときがきたのですね。イルイルより役立つところを見せて、ダーリンに褒めてもらうのです」
正直に千歳の言葉を受け止めるリッチェンスに、イルマ・レスト(いるま・れすと)は冷たく言った。
「リツ……光条兵器が役立つのであって、あなたが役に立つのではないです。そこを勘違いしないように」
リッチェンスが戦場に混沌をもたらそうとも、九条 風天(くじょう・ふうてん)にはシャムシエルしか見えていなかった。
(ボクが近くに居ながらまたむざむざと……このままでは済まさん)
風天は疾風突きにアルティマ・トゥーレを乗せてシャムシエルの足を狙う。シャムシエルはバックステップでこれをかわしたが、ここから生徒たちの怒濤の攻撃が始まる。
「くらえー!」
小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)は、ブライトマシンガンから回避不能なほどに弾丸を撃ちまくった。光の弾丸は風天を、そしてリフルをすり抜けてシャムシエルに命中する。
リフルを攫われて怒りが頂点に達している美羽だったが、その戦術は光条兵器の性質を利用したクレバーなものだった。
「く、考えたね」
美羽の攻撃は、弾丸数を増やした分威力が落ちている。被弾はしたものの、シャムシエルはさしてダメージを受けていない。彼女はすぐさま体勢を立て直そうとして、自らの異変に気がついた。体が言うことを聞かない。
「補足完了」
そう声がした方にシャムシエルが目だけを動かすと、白絹 セレナ(しらきぬ・せれな)が不適な笑みを浮かべていた。
「私をヒマにするからこういうことになるのだぞ」
セレナは転経杖で魔力を増大させ、全力で奈落の鉄鎖をかけていたのだ。
「私も参加させていただきますわね。このままだと、大量に買い込んだジャンクフードが無駄になってしまいますもの。しっかりリフルさんの胃袋に処分してもらいませんと」
イルマもシャムシエルに奈落の鉄鎖をかける。
「ぐ……!」
さしものシャムシエルも、すぐには身動きがとれない。
「やれ、風天!」
セレナの声に、風天が轟雷閃を乗せた疾風突きを放った。
「悪鬼外道、誅滅すべし!」
同時に、渋井 誠治も銃から轟雷を打ち出す。
「リフルは返してもらうぜ!」
風天の一撃はシャムシエルの体をとらえ、誠治の攻撃はリフルを抱えた彼女の左腕にヒットした。シャムシエルが思わずリフルを放す。
「リフルさん!」
シャムシエルが動けないのをいいことに、一ノ瀬 月実(いちのせ・つぐみ)は真っ先に飛び出した。
「私よ! 月実よ! つぶげじゃないわ! さあ、今度こそお友達に!」
リフルと友達になることしか眼中にない月実は、缶詰料理のフルコースやカップ麺をリフルに差し出す。しかし、今のリフルは当然何の反応も示さなかった。
「ああ、石になってるから口が開かない! ええい、この高級つぶうにならどうだ!? もぐもぐもぐ……」
「なんで自分が食べてるのよ! って、そういう問題じゃない。この状況でその行動は無茶ぶりもいいとこでしょうが! もう、ついていけない……」
ツッコミ役のリズリット・モルゲンシュタイン(りずりっと・もるげんしゅたいん)も、今回ばかりは月実にツッコミきれなかった。
「今がチャンスですね」
リフルがシャムシエルの手を離れたのを見て、藤原 優梨子(ふじわら・ゆりこ)は闇術を使った。そして、ナラカの蜘蛛糸をリフル目がけて投じる。実はこの糸、まぶした砂を接着剤で固め、わざと切れない部分を作ってあるのだ。
「手応えありました。蕪之進さん、お願いします!」
優梨子はドラゴンアーツを使い、怪力の籠手で思い切り糸を引っ張る。少女の影が、宙に舞った。
「わ、ととっ」
宙波 蕪之進(ちゅぱ・かぶらのしん)は、小型飛空艇に乗り、迷彩塗装を施した布とブラックコートを羽織って隠れていた。蕪之進は少女の落下点に入ると布で衝撃を吸収、なんとか彼女を受け止めた。
「ふう、やったぜ。へへ、贅沢を言えば、もうちょっと胸とかボリュームあった方が趣味なんだが、この娘なかなかかわいいんだよな……って、あれ?」
「リフルは俺のものだああああ!」
素っ頓狂な声を上げる蕪之進に、百々目鬼 迅(どどめき・じん)が全速力で向かってきた。迅は軍用バイクで蕪之進にタックルをかますと、少女を奪い取ってサイドカーに乗せ、走り去って行った。
「うおお、リフルゲットだぜー!」
リフルに片思いしつつも、迅は恋愛沙汰が苦手。愛故にこのような行為に及んでしまったのだ。
しかし、愛しの彼女の横顔を見ようとサイドカーに目を向けたとき、迅は凍り付いた。
「え? リフルじゃない……? てか、うにくさっ!」
そこには、つぶうにを頬張り目を回す月実の姿があった。
「あら、残念。はずれですか。もう一度釣りましょう」
優梨子は再び蜘蛛糸を投じようとする。が、そのときには、シャムシエルが奈落の鉄鎖から脱出していた。
「……さすがに効いたよ。しょうがない」
シャムシエルがリフルの頭上に星剣を振りかざす。瞬間、リフルの体が石化状態から元に戻った。
(ち、星剣の能力かよ)
リフルの石化が解けた途端、茅野 菫が背後からシャムシエルにファイアストームを放つ。シャムシエルは、驚くこともなくこれを星剣で弾いた。
「……気付いていたのか? あたしが仲間のふりをしてただけだって」
「ボクが本当に信じるのは自分だけだよ」
「ふうん。石化を解除できるアイテムを持ってるなら、ドサクサに紛れてかっぱらってやろうと思ったんだけど……さすがに星剣は奪えないな」
菫はつまらなそうに言う。相馬 小次郎も、刀真たちと敵対するのを止めた。
「リフルっ」
リフルのもとには、久世 沙幸が駆け寄っていた。リフルの石化が解けてほっとする沙幸に、ディテクトエビルを使用している藍玉 美海が声を上げた。
「沙幸さん、危ないですわ!」
油断した沙幸に、リフルの鎌が振り下ろされる。間一髪のところで、中原 一徒(なかはら・かずと)のハンドアックスがそれを受け止めた。
「あ、ありがとう。……リフル、洗脳されてる!?」
沙幸は一徒に礼を述べるも、すぐにリフルへと視線を戻す。焦点の合わないリフルの目が、沙幸を捉えていた。
「あんたが怪我したら、後でリフルが悲しむだろうな」
一徒は沙幸の前に立ち、彼女が体勢を立て直せるよう、囮役となってリフルの相手を始めた。
「オレも手伝うぜ!」
そこに、橘 カオル(たちばな・かおる)が加勢する。現在のリフルの戦闘力がそれほど高くないことを確認すると、カオルは応戦を一徒に任せてロープを取り出した。
「これなら、傷つけずにリフルを捕獲できるぞ」
カオルは腕から足、足から胴体と手際よくリフルを縛り上げていく。やがてリフルの捕獲が完成すると、カオルは彼女を見て言った。
「あれ、なぜか菱縄縛りになってしまった……ちなみに菱縄縛りと亀甲縛りは、
似てるけどちょっと違うんだぜ」
「そ、そうか……」
一徒にはそう答えるしかなかった。
「ちょっと、なんてことしてるのよ!」
あられもない姿になったリフルを見て、沙幸がカオルを突き飛ばす。
「正気に戻ったらロープを解いてあげるからね。洗脳を解くには……やっぱりキス!?」
沙幸がリフルの唇を見つめる。リフルを挟んだ反対側では、刀真も沙幸と同じことを考えていた。
二人がこんな思考に至ったのには理由がある。以前、刀真は口づけによってリフルの洗脳を解いたことがあるのだ。尤も、リフルにそのときの記憶はないのだが。
「「ええいっ」」
ここは戦場。戸惑っている暇はない。沙幸と刀真はリフルを抱き寄せようとする。しかし、全身を縛られて体のバランスを崩したリフルは、前方に倒れ込んだ。
ごちんっ
「いた〜い!」
「うおっ」
沙幸と刀真のおでこがぶつかる。
「う……ん……」
額をさする二人の傍ら、リフルは転んだ衝撃で意識を取り戻していた。
「リフルさんの方はもう大丈夫みたいですね。あとはシャムシエルを討つだけです」
ウィング・ヴォルフリート(うぃんぐ・う゛ぉるふりーと)がシャムシエルを見据える。その前に立ちはだかったのは、マッシュ・ザ・ペトリファイアーだった。
「ヒャハハ、み〜んな石にして飾ってあげるよ!」
マッシュはさざれ石の短刀で斬りかかってくる。ウィングが彼を迎え撃とうとすると、メイコ・雷動(めいこ・らいどう)の声がした。
「させるか!」
メイコは、マッシュに向かってみかんを投げつける。それはマッシュの持つさざれ石の短刀に刺さり、そのまま石化した。
「あ〜ん、これじゃ使えないよお」
マッシュは、すかさずもう片方の短刀を繰り出そうとする。ウィングは機転を利かせてこう言った。
「あ、あそこに固まりかけのきれいなお姉さんの石像が!」
「なんだって!」
マッシュはこれにまんまと引っかかり、ウィングの指さした方を見る。
「キミの大好きな石像にしてあげます」
逆にマッシュを石化してやろうと、ウィングがさざれ石の短刀を突き出す。マッシュは殺気看破でこれをかわした。
「人を石にするのは好きだけど、石にされるのは好きじゃないんだよ」
マッシュは一旦距離を取り、攻撃方法をペトリファイに切り替えようとする。
「それなら、氷付けにしてさしあげますわ」
そこに、美海がギャザリングヘクスからの特大ブリザードを浴びせた。
「今よ! 幾重もの阻みも光の礫の前に開かれん。神の剣、フェルキア=ヴェムフリートの怒り、今、この地に下らん!<パルス=フェルキア>!!」
ファティ・クラーヴィス(ふぁてぃ・くらーう゛ぃす)は、バニッシュを放つ。
「紫苑の雷……嵐を呼び、嵐より生まれ、嵐をも切り裂く千の刃となりて、遮る其を打ち砕かん!<リーフ=ヴェルナシア>!!」
ウィングも、禁じられた言葉と紅の魔眼によって強化されたサンダーブラストで続いた。
三人の同時攻撃に、マッシュは痛みを知らぬ我が躯で痛覚を鈍らせ、リジェネレーションで回復をするのが精一杯だった。
シャムシエル側につくもう一人の生徒、リース・アルフィン(りーす・あるふぃん)には、白砂 司(しらすな・つかさ)が相対している。普段はディフェンスに定評のある司だが、リフルが攫われたことに責任を感じ、パートナーのサクラコ・カーディ(さくらこ・かーでぃ)を襲ったリースに腹も立てているため、今回は積極的に前に出ている。
いつもと様子の違う司に冷静さを取り戻す目的もあって、サクラコは彼のリフルに対する行為を軽く茶化した。
「胸に得体の知れないでっかいものがついてる人のが好きなんだとばかり思ってたんですけどねっ」
サクラコは、司が自分のために殺気立っているとは夢にも思っていないのだ。
司は槍のリーチを生かしてチェインスマイトなどを繰り出し、自身がサクラコのフェイントとなるように動く。サクラコは小石などを拾っては手当たり次第投げつけ、全力で拳を繰り出した。
レイス・アズライト(れいす・あずらいと)は、パートナーのリースを二人の攻撃から守るべく、防御に専念する。リースは、遠距離から闇術を唱えた。
「ダーククラウド!」
司とサクラコを、瞬時に闇が包み込んだ。二人が超感覚や殺気看破でなんとかレイスの反撃を凌いでいるうちに、リースは距離を詰めて背後から光条兵器で刺突しようとする。しかし、光条兵器の明かりに気がついた七枷 陣(ななかせ・じん)がそうはさせなかった。
「セット!」
陣がファイアストームを放ち、それを避けたリースが闇術の範囲外に出る。
「リフルはただ諦めたくないから、オレらを頼ったんだ。差し伸べられた手を彼女がとることに、何の不満があるんだよ!」
陣はそう叫びながら、その身を蝕む妄執を使用する。それは、リースをとらえた。
「う……あああっ!」
その身を蝕む妄執は、相手が尤も恐ろしいと思う幻覚を見せる術だ。彼女が何をみているのか、レイスには手に取るように分かった。
「あ〜あ、リースったら。アンマリ壊れられるとボクが困るんだよね。そろそろおしまいにしてあげよう」
レイスはリースにエンデュアをかけてやる。幻覚から解放されたリースは、正気に戻っていた。
「わ、私……」
「リース、キミの辛い記憶をボクが消してあげよう。いいね」
忘却の槍を突きつけたレイスに、リースは静かに頷く。レイスがリースを槍で突くと、リースはその効果を魔力で増幅させた。
「……あれ、私なんでこんなところに?」
記憶の一部を失い戸惑うリースに、レイスはそっと声をかける。
「忘れたのかい? ただ遊びにきただけじゃないか」
「そうだっけ……なんだか、とても大切なものをなくした気がする」
リースの頬を、涙が伝った。
「ようやく邪魔者が消えたようだな。覚悟しろ、シャムシエル!」
「今こそリベンジのときだ」
シャムシエルに味方する生徒で、機能している者はもういない。それを確認して、ラルク・クローディスとメイコが言った。
陣もシャムシエルに捲し立てる。
「ティセラが仲間だあ? 都合良く操ってるくせして、よくそんなことが言えるなてめぇ! ティセラのためなんかやない、エリュシオンのために動いてるんだろうが!」
陣たちがシャムシエルに立ち向かおうとしたそのとき、鏡 氷雨(かがみ・ひさめ)の銃撃が彼らを襲った。次いで氷雨は、ルクス・ナイフィード(るくす・ないふぃーど)を陣たちにけしかけた。
「お前らにマスターの邪魔はさせない。マスターの用事が終わるまで、自分と遊んでもらうんだからさ!」
「そっちこそ邪魔しないでよ! リフルちゃんは僕たちと一緒に苺バナナチョコカスタードアイス食べるんだから!」
リーズ・ディライド(りーず・でぃらいど)ルクスに食ってかかる。リーズは陣の援護を受けてバーストダッシュで一気にルクスに接近すると、適者生存で相手の攻撃力を下げた。そして、自分はチェインスマイトや轟雷閃、爆炎波で攻撃する。
「あのね、ボク、キミにちょっかい出されたの凄く気に入らないんだー」
ルクスが足止めを行っている間、氷雨はシャムシエルに攻撃を加えながら会話をしていた。リフル誘拐にシャムシエルが介入してきた後、氷雨は姿を隠しながらその後を追っていたのだ。
「言いたいことはそれだけかい?」
シャムシエルは、氷雨の攻撃を軽くいなしながら言う。
「うん、それだけ。邪魔されたから手を出すけど、ボクとしてはキミのこと好きだよ。……さて、ルクスもさすがにあの人数をそう長くは相手できないだろうし、そろそろ行くよ。今度は個人的にキミを殺しに来るから、ボク以外の子に殺されないように頑張ってね」
氷雨はルクスに撤退の合図をする。ルクスは残念そうにしながらも、マスターが言うのなら仕方ないと、身を引いた。
「あ、リフルはもうどうでもいいから、好きにすると良いよ。それじゃあ、またね。蛇使い座さん」
氷雨はシャムシエルにそう言い残すと、ルクスと共に戦場から姿を消した。
「今度こそ手出しをする者はいないでしょうね」
リュウライザーは、一人になったシャムシエルに煙幕ファンデーションを投げつける。更に、メモリープロジェクターで、煙幕が張られる前に牙竜が殴りかかる映像を投影した。隠形の術で姿を隠していた牙竜は、背後からシャムシエルに飛びかかる。
「視覚からのみ逃れようとするとは。相変わらず芸がないねえ、キミたち」
シャムシエルは、星剣で牙竜を迎撃しようとする。メイコは遠当てでシャムシエルの右手を打った。星剣の軌道が変わり、牙竜がシャムシエルを羽交い締めにすることに成功した。
「女王像の欠片を持っているか!」
牙竜はそのまま飛び上がり、シャムシエルを地面に叩きつけようとする。
「はなせー!」
シャムシエルは踏ん張って牙竜を振りほどきにかかった。
「牙竜、そのまま放すんじゃねえぜ。俺が決めてやらあ!」
膠着状態の二人を見て、ラルクが言った。ラルクは、構えた拳に闘気をみなぎらせる。
「我も力を貸そう」
「借りを返すよ!」
マコト・闇音(まこと・やみね)とメイコも、技を繰り出す体勢に入る。
「思いっきり戦えなくてストレスが溜まってたんだ。うらぁ! これで落ちろ!」
「轟雷閃!」
「雷ぱーんち!」
ラルクの疾風突き、マコトの轟雷閃、メイコの雷術をまとったパンチが一度にシャムシエルの土手っ腹を襲う。
「ぐふっ」
シャムシエルは牙竜ごと猛スピードで吹っ飛んだ。
「とうっ」
牙竜は空中でシャムシエルから離れると、華麗に着地する。シャムシエルは、勢いそのままに岩に叩きつけられた。
「が……はっ……」
シャムシエルは口から血を流し、立て膝をつく。ちょうどそのとき、巨大な影が地上に落ちた。
「まさか……あれを直したのか?」
シャムシエルが見上げる先、上空には、生徒たちの力によって動力を取り戻した飛空艇が浮かんでいた。
「悔しいけど、ここは一時撤退するしかないね……」
シャムシエルはその姿と気配を、戦場から消した。
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