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【十二の星の華】空の果て、黄金の血(第1回/全2回)

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【十二の星の華】空の果て、黄金の血(第1回/全2回)

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【第2章 ネッリ隊(右)】

 右の展望台。そこには屈強な戦士、ネッリ隊が待ち構えていた。そこに降り立つ、SSL一同。
「…屈強な男性構成員を検体に…耐久性も十分ですね。イロイロ実験できそうです…くくく、あははははっ!!!」
「何を言っているんだ、この男」
「男ではありませんよ!!」
 ネッリの言葉に激昂する島村 幸(しまむら・さち)
 幸は自分の研究のために、屈強な戦士達の検体を確保しようと、この右の展望台を選んだのだ。
 メタモーフィック・ウイルスデータ(めたもーふぃっく・ういるすでーた)は幸を
「ママ」と呼び、ヒーリングに備える。
「さぁ、実験開始と致しましょう、誘拐騒ぎだと聞きつけてやってきたら、魅力的な検体達の姿がなるほど、見せつけるかのようなアレは私に解剖してほしいと…SSL諸君、さっそく検体確保に取り掛かって下さい。あ、そうそう、わかっているとは思いますが、成果が低い人は自身が検体になるのを覚悟しなさいね…特に陣、注意が必要のようですね」
「…いや、そんな、…はは。…よ、よし、発着場を確保する為にネッリ隊にケンカ売ろうか。へぇ…屈強な構成員ねぇ。S×S×Labこと通称:島村組の構成員なオレらに敵うとでも思ってんの? バカなの? 死ぬの?」
 七枷 陣(ななかせ・じん)は薄ら笑いを浮かべる。彼はSSLメンバーの行動を十二分に行えるよう援護攻撃をメインに動く。
 幸や他の面々が禁じられた言葉を使い、魔力を増大させたファイアストームで遠距離から攻撃する。パートナーの小尾田 真奈(おびた・まな)も遠距離からサポート。
(アボミネーションとSSL特技【威圧】を組み合わせて効果的に畏怖を与えて硬直させます)
 真奈は、陣達にとって無くてはならない存在であり、家事的な意味で名前は陣が正式名称をもじって付けたが、これは余談である。
 蛇を屠ることを禁忌とする東條 カガチ(とうじょう・かがち)柳尾 なぎこ(やなお・なぎこ)とフォロー及びサポートを行うこととした。
以下、無用のことながらではあるが、真実の宗教者、もしくはそれらに準ずる者、神や死者との対話を志す者、あるいは否応なく死者の声が聞こえる者、人ならざる者と交流する者であれば、どのような残虐非道の者とは言え、検体蒐集などという、野蛮且つ、非人道的行為には走らない自律性を保つべきだ。
 また、緋桜 遙遠(ひざくら・ようえん)は氷術で、屈強な戦士たちを根こそぎ検体として、『蒐集』することに暗い情熱を燃やしている。彼らはそれが過去、ある作家の手で『敵の捕虜を人体実験することに関与した医師の葛藤』を描いた問題作の内容よりも、もっと残虐で非道な精神に冒されていることに己たち自身毒されていることには気がつかずにいたのだろう。
「創作上の『医師の葛藤』に比較しても、この右展望台の戦いに望んだ者達は、無邪気で葛藤がない分、始末が悪かったと言わざるを得ないだろう。生死を冒涜するものはその報いを必ず受ける」
 と、この浮遊島での戦いを後年、有志達独自で編成されたパラミタ史編纂室の一員、後に大きな業績を上げる歴史家の卵、パウル・ミカエル・フカウのメモには、そう残されていたと言うが、この真偽は謎であり、また、後日譚でしかない。

 これまた、余談であった。余談続きであること、許していただきたい。
 閑話休題。
 話は浮遊島、右の展望台へと戻る。

「さあ、しびれ薬をたんとお浴びなさい!」
 と喜ぶ幸であったが、ネッリやその部下達には、何の効果もない。カガチ、陣、は屈強な戦士のふくれあがった筋肉隆々の手の平によって、吹き飛ばされてしまう。
「ぐは!」
 遙遠の氷術はどこ吹く風。ネッリ隊所属ジョヴァンニの体はみるみるうちに、筋肉が隆起し、体が三倍にも四倍にもふくれあがった。隊士ジーノの体はまるでキメラのようである。『島村組』の一同の倍ほどの体積に体がふくれあがっていく。
 幸もメタモーフィックも攻撃をしかけるが、ネッリ隊には一切、歯が立たない。
「おやおや、聞いていたようだったな。我々は、あの悪名高き『ケセアレ・ヴァレンティノ様』の部下のなかでも『屈強な戦士』部隊だ。…我らは自らの体を改造し、既に人間ではないのだよ…人間を捨てた身だ…それが鏖殺寺院のやり口というもの…卿らは我々を捕らえられることができれば、それはそれは素晴らしい成果を手にする事ができただろうが、どうやらそれは天と地が逆になるほど、難しいことのようだな。我らも卿らのことを残念に思うぞ?」
 ネッリはそう、呪われし顔面で微笑んだ。

 …その後の事に関しては、ここで詳細を書くことではない。
 だが、残念ではあるが、S×S×Labこと通称:島村組にとっての誤算は自分たちの力に対する過信であっただろう。また、相手が悪すぎたとも言えるが、これはまた、別の話である。
 一旦、このくだりについては筆を置く。

☆   ☆   ☆   ☆   ☆    ☆   ☆   ☆   ☆   ☆

「…人を捨てた身か…恐ろしいものだな…うかうかしていると、…俺にも余裕はないな…まあよい。…俺は…俺で…戦おう…それに、このようなまさしく『屈強な戦士』を相手にしていては、俺の身も…持つまい…」
 同じく右展望台にて、戦っていたクルード・フォルスマイヤー(くるーど・ふぉるすまいやー)は、すらりとおのれの身の丈ほどもある『真・銀閃華』を抜き、人間を辞めたネッリ隊隊士たちと島村組とは別行動で戦っていたが、さすがに相手が悪すぎた。
 アシャンテ・グルームエッジ(あしゃんて・ぐるーむえっじ)に援護を頼まれた事で、今回の事件を知ったクルードは鏖殺寺院メンバーを殲滅すべく、この城に乗り込んだのだ。
 音速を超える乱撃ソニックブレードでネッリ隊隊士にぶつかるが、少しよろけるくらいで、埒があかない。
(…爆破がお得意だという…ミケロットであれば…この展望台を爆破し…全てを無かったことにできるであろうが…俺には爆破物の持ち合わせはない…致し方なかろう…)
 そう、判断したクルードは自分の目的を果たすため、『王座の間』を目指して駆け出す。



☆   ☆   ☆   ☆   ☆    ☆   ☆   ☆   ☆   ☆

 温かく肌触りの良いシーツ。それに部屋に漂う、優しく良い香り。…なにかしら…白檀のような…
「おはよう、お姫様。実際に顔を合わせるのは始めてだな」
 仮面を被った人物が、真珠の視界に入ってくる。
「…あなたは、だれ…?」
 その言葉に仮面の人物、トライブ・ロックスター(とらいぶ・ろっくすたー)は答えない。
「まぁ、俺の方は仮面で顔を隠しちゃいるがね。名前の方は…ま、便利屋さんでも副隊長さんでも好きに呼びな」
 真珠はぼんやりする意識のなかで、周りを見回す。豪奢な寝室に明らかに質の良い広い天蓋付きのベッド。焚きしめられた香の香りは、真珠が着ている絹のローブにも染み付いていた。お茶の用意をし、トライブは良い匂いのするアッサムを淹れてやる。恐らく上級の茶葉なのだろう。
「…目覚めにはアッサムが良いと聞いたことがある。まあ、一息いれな」