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リアクション
「わ、わたし…!」
自分がシャムシェルとミケロットにさらわれた時のことを思い出す。
「真珠、気にしなくて良いですよ。わたしが着替えをさせていただきました」
千石 朱鷺(せんごく・とき)が乱れた真珠の金色の髪を整えてやる。しかし、このふたりが自分を監視しているのは、真珠にもよく分かった。ミケロットが監視役を任せたのだ。
ミケロットにも揺らぐものがあるのを、トライブは察知していた。ケセアレの反対を押し切って、トライブに監視を任せたのだ。
「ここは、ケセアレ伯父様のお城なのですね…」
真珠は長いまつげをそっと伏せる。
「…その通り。その上、あんたのお姉ちゃんや、蒼空学園の生徒達が、あんたのためにこの城に向かってきている」
「な、なんですって…?」
真珠ははっと顔を上げる。
「なあ、あんた。あんたは自分で自分のやりたいことを一つでもしてきたのか?」
「トライブ、それ以上は」
朱鷺が制しようとするが、トライブは続ける。
「あんたは今まで、何か一つでも自分で決断したことがあるのか? 流されるまんまじゃないのか。そうやって、ここでお姉ちゃんや王子様の助けをずっと待ってるのか」
「…」
トライブの言葉に、真珠は黙り込んでしまう。
しかし、その真珠の瞳に強い光が灯ったのを、トライブは見逃さなかった。
【第3章 アンジェラ隊(左)】
霧島 玖朔(きりしま・くざく)は、左側の展望台に乗り込む生徒たちのために弾幕援護を使用、飛空艇を接岸させる為の援護を行う。
(俺があの時ミケロットを捕まえておけば今回みたいな大事にならなかった筈だ。畜生…奴らがルールを超越するなら、俺もルールを超越してやるよ!)
最後に上陸すると、展望台を守るアンジェラ隊とローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)たちと共闘し、戦闘を開始した。
強化型光条兵器(アサルトライフル)を用いて敵の防具を貫通する設定を施して射撃を行う。
宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)は赫夜をサポートするために、アンジェラ隊の殲滅を決意していた。
その数時間前、祥子は赫夜に打ち明けていたことがあった。
------
「赫夜。あなたには言っておきたいことがあるの」
「なんだ?」
「あなたには、真実を伝えておきたい。私は、ティセラ・リーブラの協力者の一人なの」
「…」
祥子の真摯な顔付きに、赫夜はじっとその瞳を見つめる。
「シャムシェルが居る以上、ティセラ様が関わっている可能性があるわ…でも、私は赫夜に味方するわ。ティセラ様を裏切ろうとは思わない、けどこのやり方は敵ばかりを増やすわ。あのシャムシェルのやり方はおかしすぎるもの」
「…そうだったのか。でも、何故、私に付いてきてくれる? 祥子さんの立場が悪くはならないか?」
「真珠を守ってって、赫夜、私にいったでしょ? 私はこれでもちゃんと約束は守る女よ。それにシャムシェルのやり方はティセラ様の為になるとは思えない。それが理由なの。けど、ことこの期に及んでティセラ様を憎まないで欲しいと願うのはムシが良すぎるわよね…」
「打ち明けてくれてありがとう。では、私も祥子さん、あなたに打ち明けることがある。本来、私はティセラ殿の味方になるはずだった」
「えっ…」
さすがの祥子でも目を見開いて驚く。
「ただ、真珠がこのようなことになってしまい、私は十二星華としての役割よりは結果的に家族を取った。先日も環菜校長に釘を刺されてきたところだ。『ティセラにつくか、ミルザムにつくか』とな。この大型飛行艇も、私がミルザム殿側に付くことで、用意されたものだ。私は薄汚れているな」
自嘲気味に笑う赫夜に、祥子は首を横に振った。
「誰しも、大切なものはそれぞれ、別よ。私も目の前の出来ることをきちっとやって…迷いがあるように見えたミケロットともう一度話がしたいと言う思いもあるわ。…その後、もし、ティセラ様とミルザム側に別れて、剣を交えることになっても、恨みっこはなしね」
「もちろんだ」
「パジャマパーティもやるわよ」
「当たり前だ」
ふたりはあはは、っと笑って見せた。
――――
あの約束、必ず守るわ! 祥子はそう、心に決めると、光学迷彩と隠れ身を併用して気配を完全に殺して先行し、左の展望台の外壁にとりついて、様子を伺うと、祥子は驚く。
「な、なんなの? あの人達、本当にケセアレの部下? 戦士なのかしら…」
祥子と同様、待ち受けていたアンジェラたち一同を見て、予想外の衝撃が生徒達を襲う。
モデルの集団かと言うくらいの美女揃いが、物騒な武器を手にして、生徒達を迎撃してきたのだ。アンジェラ隊はネッリ隊とは全く違い、揃いの高級スーツに身を包み、それぞれ、パンツスーツや、ミニスカート、女性でありながらタイの結び方にもこだわりがあるようで、ダブルノット、トリプルノット、ウィンザーノット、ハーフウィンザーノット、アスコットタイ、スカーフなどで特性を出している。
まるで、どこかの歌劇団のようなきらびやかないでたちであった。
戦士たちも容姿はブルネット、ブロンド、黒髪と様々であったが、皆、パリコレにでも今すぐ出られそうな美女ばかりだった。
だが、その腕は恐ろしいものだった。
「良く来たわね、勇者気取りのお坊ちゃん、お嬢ちゃんたち。お姉さんとイイコトしたいのね?」
隊長のアンジェラはタイはせず、ブロンドのストレートロングヘアに青い瞳、スーツをスマートに着こなし、胸元をはだけたシャツの襟を立て、鞭を振るいはじめる。
だが、リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)とアストライト・グロリアフル(あすとらいと・ぐろりあふる)は臆することなく、展望台確保にむけて突撃を開始する。
ナンパモードのアストライトの目はキラキラ輝いていた。アンジェラ向かって、ダッシュしてその体を抱いてしまうと、顎を掴んで自分の方へと向かせた。腰の上に綺麗に乗った女の肉に、アストライトも少々、興奮気味となる。
「なあ、ネーチャン。 超絶キレーで可愛いじゃねえの…戦うしか能がねぇって言うなら仕方ねえけどさ。でもよ…そうじゃねえんなら生きてたらそれはそれでいいことあるかも知れねぇぜ? だからさ、あまり『死に近づく』ような真似はすんなよ」
「んふ。優しいのね、ぼうや。でも、私、これがお仕事なの。天職だとすら、思っているわ」
そっと、アンジェラもアストライトの頬を自分の手の甲でなで上げる。それは絹のような手触りで、アストライトの脳は沸騰寸前だった。
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