百合園女学院へ

薔薇の学舎

校長室

波羅蜜多実業高等学校へ

サンドフラッグ!

リアクション公開中!

サンドフラッグ!

リアクション


第11章 蒼空学園連合隊の攻撃(5)


「クマラ、さっきは氷の上に落ちたから良かったが、砂に落ちれば即失格だぞ。気をつけて上るんだ」
「むーっ、この靴が悪いんだ。ツルツルすべるからっ」
 クマラはぱしぱし地面を蹴って言うと、えいやっとばかりに靴を脱ぎ捨てた。
「靴なんかいらないや! オイラ、これがちょうどいい!」



『ああっ! ついに力尽きたかーっ! 優勝に一番近づいていた男、矢野 佑一選手! 天御柱学院所属がどんどん流されていきます! そしてクマラ カールッティケーヤ選手、空京大学所属が再び砂山登山に挑み始めました! 今度はぴょんぴょん飛んで、設置面を少なくして上っていく作戦のようです!
 そして今、小鳥遊 美羽選手、蒼空学園所属も力尽きたか、氷の道から落ちてしまいました! 今トップを行くのは国頭 武尊選手、波羅蜜多実業高校所属と大久保 泰輔選手、蒼空学園所属! この2人がほぼ同じ位置にいます! そしてその2人をクマラ カールッティケーヤ選手がおそるべきスピードで追い上げる! はたして勝利の赤い旗はだれの手におさまるのでしょうか!?』



「赤旗もーーーーらいっ!」
 ぽーんと弾けるように最後のジャンプをした。
 ジャンプは大きく、旗の真上を通る軌道だ。
 クマラの伸びた手が棒に触れるかに見えたとき。

「悪いな」
 武尊の手が、かすめ取るようにして赤い旗を引き抜いた。



『今! ついに勝利の赤い旗が抜き取られました! 頂上で手にしているのは国頭 武尊選手、波羅蜜多実業高校所属!! 大きく旗を振っています!!
 そして第8ターンのこの時点で、国頭選手の総合優勝が決定しました!! 2校対抗サンドフラッグ覇者は国頭 武尊選手、波羅蜜多実業高校所属!!!
 なんと、教導団でも蒼空学園でもなく、波羅蜜多が優勝をかっさらって行きましたーーーーっ!!』


「みたか教導め!! これがオレの実力だ!!」

 はるか25メートルの高みから見下ろして、武尊は吼えた。






■エンディング

 それから。
 救護班の活動と、シャンバラ教導団員による解体作業が平行して行われた。
 砂を回収し、その土台となった円柱をバラしてしまえば、あとはただ碁盤の目に張られたロープがあるにすぎない。
 ものの数十分でシャンバラ大荒野は何もない荒地に戻り、サンドフラッグを思い起こさせるものは、埋め戻された落とし穴のあとだけだった。

 整列したサンドフラッグ競技者の前、壇上で武尊が金の手からプリモ温泉旅行の商品を受け取る。
「いつでも都合のつく日に行けばいい。2日前に連絡を入れれば、プリモ温泉側が対応してくれるそうだ」
 そう告げる金は、いつもの無表情をとりつくろってはいたが、この結果を不満に思っているのを隠すのはかなり難しそうだった。

 蒼空学園に演習をもちかけて、結局優勝したのは波羅蜜多なのだから、まったく笑い話にしかならない。
 山葉はこの皮肉っぷりを、腹を抱えて笑っていたが、金としては腹立たしいことこの上なかった。
(蒼学でなく、よりによって波羅蜜多とは…)
「梅琳」
 壇上を下りた金は、さっそく彼女を呼び寄せる。
「はい」
「明日から団員の訓練を、5割増しにしろ」
「分かりました」
「撤収だ」
 そう言おうとしたとき。
 覆いかぶさるように、ガシッと肩をつかまれた。
「まぁまぁ。いーじゃん、今日はもうちょっとゆっくりしようぜ」
「……きさま、なれなれしすぎるぞ」
 パッとすばやく口をふさいで。
「おーっ、さすが! 太っ腹ーっ!
 みんな、喜べ! これから参加者全員で打ち上げパーティーやるぞ! みんなよく頑張ったからな、金団長がオゴってくれるそうだ!」
 山葉のその言葉に、全員がわっと沸き上がった。
「――なんだと?」
「もちろん俺も半額出すよ。ワリカンな」
 ニコニコ笑っているが、その裏はお見通しだった。
 人数は、教導団員よりほかの学生の方がはるかに多いのだ。差額まで半額払わせようというのだから、感謝できるはずがない。
「いいから離せ」
「あ、悪い」
 言われるまで気づかなかったと、パッと手を離す。
 乱れた服を直しながら、金は山葉を一瞥し、ふん、とそっぽを向いた。
「きさまの金を受けずとも、このくらいの人数の飲食代などいかほどでもない。
 第一、会場も準備済みだ」
 そう言って指された先には、競技が行われている間にシャントたちで組み立てられた特設祝賀会場があった。
 おそらくは、教導団側が勝利したときのためにセッティングしていたのだろうが…。
 少なくとも、無駄にならずにすんだと工兵たちはホッとしたに違いない。
「えっ? じゃあ全部オゴリ? マジ?」
「くどい」
「そーりゃ良かった。うち、トレード大失敗で今月ピンチでさぁ。
 もう花音に、昼メシ代も自分持ちにされそうなんだよ、これが」
「…………きさまというやつは…」

 移動する2人の後ろに、ずらずらと生徒たちが続く。

 シャンバラ大荒野から笑い声が消えるのは、まだもう少し先になりそうだった。

担当マスターより

▼担当マスター

寺岡 志乃

▼マスターコメント

 こんにちは、またははじめまして、寺岡です。

 今回、たくさんの罠バトルが書けてすごく楽しかったです。今まで書いたシナで一番楽しかったかも。
 また今度、何かの機会で罠バトルをやってみたいなぁ、と思っています。

 それでは。
 ここまでご読了いただきまして、ありがとうございました。
 次回はシリアスなバトルシナリオですが、そちらでもお会いできたらとてもうれしいです。
 もちろん、まだ一度もお会いできていない方ともお会いできたらいいなぁ、と思います。

 それでは。また。