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リアクション
第7章 それぞれの選択3
なんだかやけに外が騒がしい。ガラスの割れたような音がしたような気もする。
どうせクラス対抗サッカーだかなんだかやってるんだろう。それで窓にボールでも飛び込んであわててるのか。
ほっとけ。
と、最初はガン無視してクラスを出ようとしていたのだが、歓声でなく、叫声なのだと気づいて木月 楓(こずき・ふう)廊下の窓に走り寄った。
「なんだ? あのばかでかい龍は?」
しかもみんな、校庭にバタバタ倒れているし。
よく見りゃ、外だけじゃなく廊下にも倒れているし。
ガラスが飛び散って、それで切ってるやつもいる。
「おい、おまえ。大丈夫か?」
手近に倒れていた獣人の男子生徒を揺さぶったが、一向に目を覚まさない。ちょっと強めに、首がガクンガクンなるくらい揺すっても、その男子生徒は起きようとしなかった。
「非常事態、か…」
とりあえず医務室に運ぶべきだとは思ったが、この廊下ざっとを見ただけで十数人はいる。校庭で倒れていたやつらも合わせると、とても医務室に入りきれるとは思えなかった。
さてどうするか、と思案していると、校内放送が流れた。
『皆さーん、けが人は室内体育館へ運んでください!――』
「なるほど」
ひょい、と肩に先ほどの男子生徒の腕を回し、歩き出す。見ると、ほかの生徒たちも同じように意識不明の生徒を抱きかかえて運んでいた。
「……というわけで、今ここにいるんだ」
楓は包帯を巻いて片しながら、自分を探して体育館にやってきた紅秋 如(くあき・しく)に、ざっと説明をした。
「……それで、包帯…」
「ん? ああ。なんとなく手持ちぶさたで。どうせおまえのことだから、ここにいればそのうち来ると思ったし。ヘタに探し歩いてたらすれ違いになっちまうだろ?」
にこやかに言う楓とは対照的に、如は、はーっと大きく息を吐き出して、膝に両手をついた。
「教室にも、どこにもいないから、わしはてっきり――」
「ああ、そうか。机に書き置きでも残しとけばよかったな。ごめんごめん。そう考えるとは思わなかった」
あっけらかんと、どこまでも楓らしい。ひとが傷つくかもしれないことは考えれても、自分が傷ついたりとかいうのは思いもしないのだ。
「つか、おまえ、今日は用事あるとか言ってなかったか?」
まだ帰ってなかったのか。
「ああ……まぁ。門近くまでは行ってたんだけどね」
そう思うと、かなり惜しかった。あの龍たちも気が利かない。あと10分遅く襲撃してくれていれば、今ごろは外に出ていたのに。
(……ま、楓が中にいることは知ってたんだから、どうせ戻っただろうけど)
「よし。全部巻き終わったぞ」
トレイにきれいに並んだ包帯を、トレイごと治療班の少女に渡す。
「お待たせ。さあ、これで行ける」
「って、どこへ?」
まさか。
「決まってる、外の龍をやっつけるんだ」
「え〜〜〜」
めんどくせぇ…。
「ん? 何か言ったか?」
「いやべつに」
「ちょっと遊んでくるか、なあ如? あんなやつ、私が綺麗に叩き潰してやるよ」
サクッとやっつけようぜ。
ウィンク1つ、楓は颯爽と出口に向かって行く。
なんであいつはあんなにやる気まんまんなんだろう?
如は首を傾げつつ――反論して口論するのは面倒だったので――楓に従って歩き出した。
「ミーナ…」
胸に敵の放った石を受けて眠り続けるミーナ・ナナティア(みーな・ななてぃあ)を前に、長原 淳二(ながはら・じゅんじ)はがっくり頭を垂れていた。
(なんでここに来たりしたんだろう…)
たまたま、だった。
昨日は来ていなかったし、明日も来る予定はなかった。
たまたま、今日の放課後、蒼学の友人とバカ騒ぎでもしようと思い立って、たまたま、気が向いたから蒼学の正門で待ち合わせにしてしまったのだ。
これが明日だったら。町のどこかの店で待ち合わせだったら。
ミーナはこんなふうになることはなかったのに…。
そんなことが頭の中でぐるぐるリピートされている。
「こんなこと考えたって仕方ないのに……こんなことばっかり…」
自嘲のつぶやきが口をつく。
額を、こつんと合わせた。
夢の中へ入っていければいいのに。
そうできたら、ミーナの頭の中で起きていること、彼女を苦しめていることから、命賭けて彼女を守ってあげられるのに。
「俺にはそれは無理なんだ。ごめん、ミーナ…」
だから、俺にできる最善のことをしよう。
ミーナができる限り早く悪夢から目覚めることができるように。
淳二はこれまでにないほど固く決意した。
風吹きすさぶ荒野に、ルルーゼ・ルファインド(るるーぜ・るふぁいんど)は立ち尽くしていた。
どこまで歩いてもだれもいないのは、分かりきっていた。
目に入る限りだれの姿もなく、風を避けるもの1つない。
この乾ききった荒野にいるのは、私だけ…。
なぜなら、みんな、奪われてしまったから。
家族も、友人も……クドも、ハンニバルも。
大切な人は、みんな、みんな、この腕から剥ぎ取られ、私には決して手の届かない場所へ連れ去られてしまった。
どこへ行けばいいのかも分からない…!
赤子のように膝を抱いて丸まった。
涙があふれて止まらない。
「夢よ……これは夢。夢です。そう、夢。現実じゃない……悪夢でしかないの…」
ああ。
そうでないと……そうでないと私は壊れてしまう。粉々に壊れて、二度と元には戻れなくなってしまう。
これが現実なはずがない。だから、これは夢。
夢なら早くさめてほしいのに。
一体どうすれば、この夢からさめることができるの?
ずっと、この夢が続くの? 現実のように。
「助けて、クド…」
もう、ここから一歩も進めない…。
「は〜〜〜〜………」
眠り続けるルルーゼの枕元に座り、クド・ストレイフ(くど・すとれいふ)は深々とため息をついた。
閉じたまぶたでリピートされるのは、自分に向かって倒れてくるルルーゼの姿だった。
後ろから何かに強く押されて、ちょっと驚いたような表情。それがだんだんと緩んで、両目が閉じていく。
ほんの少し前まで、一緒に話していたのに。自分は、彼女を見ていたのに、攻撃を防ぐことも守ることもできなかった。
「――なっさけないよねぇ、ホント」
こつん、こつんと額を小突く。
「クド公」
洗面器の水替えから戻ってきたハンニバル・バルカ(はんにばる・ばるか)が後ろから声をかける。
「もうちょっと落ち込ませておいてくれる? ハンニバルさん」
ハンニバルはうつむきっぱなしのクドを横目にルルーゼの頭の方に座ると、洗面器の水で冷やした新しい布を額に乗せた。
「それで、いつまでここでそうしているつもりなのだ? 自己憐憫にひたるのはクド公の勝手だが、1ミリたりともルルのためにはならないというのも承知しているのだろうな?」
「――ハンニバルさん、キツイなぁ」
「ふん」
防げなかったことを不甲斐なく思うのは、あの場にいたハンニバルとて同じだ。そのことで自分を責めもした。情けないと思い、落ち込んだ。
だがそろそろ自分もクドも、くよくよ思い悩むのはやめて、重い腰を上げるころあいだった。
「表では、死んだ赤い龍が暴れているそうなのだ。治療班やクイーン・ヴァンガードの者たちによって、ここの者たちを外科病院へ連れていく手立てが講じられているのだが、その赤龍は、外に出て行こうとする者を攻撃するらしいのだ」
「なるほどねぇ。いつもながら、ハンニバルさんはお兄さんにやる気を起こさせるツボをよくご存じで」
このとき、初めてクドに笑みが戻った。
クドたちが武器を手に体育館から出ていくのを見送って、夕月 綾夜(ゆづき・あや)は振り返った。
そこにはルナティエール・玲姫・セレティ(るなてぃえーるれき・せれてぃ)が茫然自失となって座っている。最愛の夫・セディ・クロス・ユグドラド(せでぃくろす・ゆぐどらど)が意識不明となってここに運び入れられて以来、ずっと、彼女はセディの手を取り、面を見つめていた。
言葉ひとつ発しない、眉ひとつ動かさない、彫像のような顔を。閉じたまぶたが開き、その唇が音を発する瞬間を、見逃すまいとするのかのように。
そうしてぴくりともしないルナティエールこそ、まるで石膏でできた像のようで、綾夜は鳥肌立つ思いを抑えきれずにいた。
カイン・エル・セフィロート(かいんえる・せふぃろーと)はといえば、これまたルナティエールの向かい側で、両膝を抱き込み、前髪と膝の隙間から目だけ出してセディを見つめている。ここに運び込まれて以来、ずっと無言でああしている姿は、現実に対処しきれず幼児退行してしまったかのようにも見える。
(あいつと同じ手段が使えるかな…)
試してみるしかないか。
「ルナ、カイン。今、セディたちを病院に運ぶ話が出ているんだけど、赤い死龍が学園から出ようとする者を見張っていて、邪魔しているらしいんだ。あいつをどうにかしないと、セディを病院へ連れて行けない」
「えっ?」
反応したのはカインだった。
膝を抱きこんでいた手を解き、綾夜を見上げる。
「病院へ連れて行けば、兄上は助かるのか?」
「――やめろ。どうせ無駄だ」
水分もとらず、長く言葉を発していなかったせいで、少しかすれた声でルナティエールがつぶやいた。
「ルナ! 何言うんだよ!?」
「心臓のすぐ近くに撃ち込まれているんだぞ。ヘタにいじって、そのせいで死ぬかもしれない。病院へ連れて行く最中に振動で大動脈がやられる可能性だって…。
第一、ただの昏睡じゃないんだぞ? 病院の医者なんかに助けられる保証がどこにあるっていうんだ!?」
綾夜を振り返ったルナティエールの涙で潤んだ目が、敵意にぎらついていた。
そんな彼女を見て、綾夜も、彼女の心が崖縁ギリギリまで追い詰められていることを悟る。周り中のすべてを自分の敵と思うほどに。
だが、先までの感情を失って呆けているルナティエールより、ずっといい。
「じゃあそうやって、いつまでもそこに座ってるの? 昏睡したセディにすがって、ただ泣いてるだけ?」
「――俺にできることなんか何もない。せめてこのまま傍にいて、セディが死ぬときは、俺も…」
「ばか! そんなことしたってセディは絶対喜ばない!」
ルナティエールの胸倉を掴み、引っ張り上げた。
「病院に行ったって何もならないかもしれない? 保証がない? たしかにそうさ! だけどそれはここでこうしていたってそうだろっ! ただ弱っていくのを見ているだけと、どう違うっていうのさ!! ううん、こっちの方がよっぽど悪い! こっちはセディが確実に死ぬんだから!!」
「綾夜…」
「ルナ、考えてみろ。ただセディが死んでいくのをぼんやり見ているだけと、彼を生かす可能性に賭けてもがくことと、どちらがいいか。どちらが後悔しないか。次にセディと会ったとき、偽りなくセディの目を見返すことができるか。よく考えて!」
「こんなセディを放っていくなんて、俺にはできない!」
手を振り払おうとするルナティエールに、カッと頭の中に火が走る。気がついたとき、綾夜はルナティエールをひっぱたいていた。
横倒れたルナティエールの姿に、本当に自分がしたことなのかと、綾夜自身驚く。
じんじんする手を、ぎゅっと握りこんだ。
「……もういい! 勝手にすればいい! ルナはルナの考えで動けばいいさ! そうやって目覚めないセディの横に座って、好きなだけ泣いてればいいんだ! 僕も僕の考えで動く! 僕がセディを助けるんだ!」
背中ごしにそう言い捨てて、綾夜は全力で走り去った。
綾夜の暴走にびっくりしたのはルナティエールだけではない。後ろで見ていたカイルも、すっかり度肝を抜かれてしまったらしく、しばらくの間、言葉もなく突っ立っていることしかできなかった。
「あ……あの、マスター、大丈夫か?」
打たれた頬に手をあてたままのルナティエールを気遣って、横から覗き込む。
「マスター……俺、さ。俺も、行くわ。兄上を助ける方法が少しでもあるんなら、俺もそっちに賭けたいんだ」
カインは申し訳なさそうに言うと、綾夜のあとを追って行ってしまった。
あとには、セディと、ルナティエールだけ…。
「セディ、見捨てられちゃったのかな、俺…」
ひりひりする頬で苦笑すると、ひきつるように痛んだ。
そっと、指でセディの輪郭をなぞる。
「分かってる。あいつらが正しいって、セディも言うって。だけど…」
セディを失うかもしれないと考えただけで、心臓が握りつぶされる思いがして、手足が萎えた。
「セディ、俺……俺、自分がこんなに弱いなんて、知らなかったよ。俺、何でもできるって思ってた。何も怖いものなんかないって。でもそれは、セディがそばにいて、俺を見ていてくれたからなんだ。おまえがいないと、俺は剣を持ち上げることさえできない…!」
ルナティエールはセディの胸に突っ伏して泣いた。
「待てよ、待てっ!」
廊下で話し込んでいた綾夜を見つけて、カインは駆け寄った。
ジロリと不機嫌な目でカインをにらんだ綾夜は、無視して再び走り出そうとする。
「何? 僕は謝らないよ」
「分かってる。俺も行くよ」
「えっ?」
「今度ばかりは綾夜に全面的に賛成だ。俺も兄上のために戦う。
それで、何か策はあるのか?」
横について歩き出したカインを見上げて、綾夜は驚きが隠せないまま、先ほど聞いた話を伝えた。
「正悟さんが、個人で石を持ってるって言うんだ」
遙遠が持っていた物も預かって、計2個。
「ええっ? それってやつらが渡せって言ってる石かっ? じゃあそれを渡せば解決――」
「それが分からないんだそうだ。やつらは「蒼空学園が保管している石」と言った。じゃあ正悟さんの持ってる分を渡しても、どうにもならないかもしれないって」
「そんなのやってみなきゃ分からないんじゃあ…」
「結構いろんな所で発見されてるみたいだから、過去に類似した事件がないか、そこに解決の糸口がないか、これから陽太たちとコンピュータルームで調べてみるって。
間に合えばいいけど……あまり期待はしないでいた方がよさそうだ。俺たちは表の死龍をやっつけるか、できる限り注意をひきつけるんだ」
「分かった」
でも、得た情報をクイーン・ヴァンガードの翠に知らせて、共有しておくのは懸命かもしれない。
綾夜は銃型HCで石のことを翠に伝えようとしたが、翠の応答はなかった。
(またあとでかければいいか)
こうして、チャンスが1つ失われた。
隣の、ちょっと騒々しいひと幕に気圧されつつも、蓮は包み込んだアインの手を放さなかった。
「なんか、すごかったね、アイン。びっくりしちゃった」
ぽんぽん、と手の甲を叩く。
と、その手に、ぽつんと何かが落ちた。
「私……私さぁ、役に立たないね。肝心なときにアインを1人にして。アイン、寝てるのかとか思っちゃったりして……大変なことになってたのに…。
ほら、アインの大好物のタイヤキ、ちゃんと買ってきたんだよ。でも、冷えちゃった。レンジでチンして……一緒に……食べ……」
ぐっ、とまばたきをこらえる。今閉じたら、泣いたことになってしまう。
眠るアインの顔は、どこか笑んでるように見えた。
安らいでいるようにも見えた。
「これで死ぬのか、自分は…。
えらいアッサリと死ねるもんなんだな。
――まあ、いい。
これで望みが1つ叶えられる……いや、こうなると最期の望みと言うべきか…。
もしかしたら、これでマインにしたことが許されるかもしれん。
何の苦しみもなく逝けるんだったら、それはそれでいいことかもしれんし」
そんなアインの声が聞こえる気がした。
もしこのまま息が止まってしまっても、現状を受け入れ、きっと「ああそうか」とちょっと肩をすくめるだけで、ナラカに去ってしまうに違いない。
「いやだ……そんなのいやだよ…。やっと……やっと、アインの希望が見られるようになったのに…。アインの『笑顔』が見られないままなんて…」
絶対やだからね!
ガバッと身を引き剥がし、立ち上がる。
蓮は、目じりに浮かんだ涙をこすり落として宣言した。
「私、あきらめない。がんばるから、だからアインもがんばって。約束したからねっ!
行くよ! 一太郎君!」
名前を呼ばれ、両翼をパタパタして見せているパラミタペンギン・一太郎を抱っこして、蓮は出口に走った。
「自分はいい。
けど、蓮は……どうなるんやろうか?
泣くだけやったらいいけど。わんわん泣いて、泣いて……でも、必ず蓮は立ち上がって、前を向く子やから。
パートナーの自分が死んだら……蓮も……死ぬんやろうか…?
それは、自分が蓮を殺したことになるんか? 自分は、蓮まで殺してしまうん?
それはさすがにいかんよなぁ…」
アインの左手には、しっかりと蓮からもらった『月雫石のブローチ』が握り込まれていた…。
「大変、大変! 高柳くんが死んじゃったらしいよ!!」
駆け込んできた女生徒の言葉に、体育館中から一切の声が消えた。
しん、と静まり返った中、ばたばたと走る重い足音がして、加夜たちの手によって、気を失ったユピリアが運び込まれてくる。
ルナティエールは頭を強く殴られた思いで、愕然と立ち尽くした。
「ばかな……陣が…?」
さっと左手方向に視線を走らせた。そこには彼のパートナーが眠っている。
「――俺は、一体何を…」
『ただセディが死んでいくのをぼんやり見ているだけと、彼を生かす可能性に賭けてもがくことと――』
綾夜の言葉が今さらながら、心に突き刺さった。
陣は、愛する存在を生かすために、ああやって動いたというのに。
命を賭して戦って…………俺は?
俺はセディのために何をしたっていうんだ?
手をとってそばで泣いているだけ――そんなの、セディのためでもなんでもない、自分のためだ。セディを失う自分を哀れんでいるだけでしかない。
「ここで動かなきゃ、セディは確実に死ぬだけ…」
振り返り、運び込まれて以来ぴくりとも動かないセディを見る。
(……そうだな。そうだよな、セディ。ごめん。俺がどうかしてた。本当におまえを失うところだった。
待ってて。絶対に……絶対におまえを、みんなを、助けるから!)
妖刀村雨丸を手に、入り口へと向かう。
だがユピリアが目覚めかけていることに気づいて足を止め、傍らにしゃがみ込んだ。
「ユピリア、俺だ。分かるか?」
涙に濡れそぼったまつげが揺れる。
「ここで待ってろ。俺が必ず陣のかたきをとって――」
「……で、ない…」
ユピリアは、目を閉じまま、小さくささやいた。
「陣は、死んでなんか、ない……私には……分かる…」
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