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ライバル登場!? もうひとりのサンタ少女!!

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第12章 葦原島の突風


 葦原明倫館の日下部 社(くさかべ・やしろ)は、転校してきたばかりの葦原島でパートナー達と配る事にした。
「ほな、今年もプレゼント配るでぇ〜♪ 子供達に喜んでもらいながらフレデリカちゃんにも協力出来、その上に俺らは葦原の地理の勉強やら周辺のデータ集めやらも出来る! これぞ一石三鳥やな♪ 流石俺! そこに痺れろ! 憧れろぉ〜! ハーッハッハ!」
 自画自賛する社に、アリスの日下部 千尋(くさかべ・ちひろ)が尊敬の眼差しを向ける。
「やー兄、あったまいー!」
 その隣ではゆる族の望月 寺美(もちづき・てらみ)が爆笑していた。
「待て。寺美、なんで笑うんや?」
「はぅ? 今の、笑うところじゃないんですかぁ?」
「お前の天然はときどき笑えんな」
 しかし、そんな天然なのか腹黒なのかわからない寺美もサンタの仕事に張り切っていた。
「はぅ〜☆ 今年も頑張りますよぉ〜☆」
 千尋もやる気まんまんだ。
「わーい♪ やー兄とラミちゃんと一緒にちーちゃんも頑張っちゃうよー!」
 千尋は、フレデリカに借りたサンタ服姿をきちんと見るよう社にせがむ。
「やー兄、ちーちゃんのサンタ服似合うかなー?」
 フレデリカの小さい頃のサンタ服を来た、千尋のあまりの可愛らしさに、社は涙を浮かべて千尋をがしりと抱き締めた。
「むっちゃかわえぇよ。感動もんや。千尋は世界…いや、宇宙一サンタ服の似合う子や!!」
 兄バカにもほどがあるが、寺美が兄妹愛に水を差す。
「たしかに千尋ちゃんは可愛いですが、ボクも負けてはいませんよぉ」
 寺美も借りたサンタ服で、自慢げにターンをして見せる。
「なんでも着こなせるボクって、やっぱり世界のマスコットになれる気がしますぅ〜☆」
 キラリとポーズを決める寺美を無視して、社は千尋を『空飛ぶ箒』に乗せた。
「サンタさんのソリはないけど、空飛ぶ箒もなかなかやで。ちーは特別に、俺の箒に乗せてやるからな♪」
「ちーちゃん、やー兄のとくべつ? えへへー♪」
 社の言葉に千尋はご機嫌だ。
「危ないから、落ちんようにちゃんと気ぃつけや」
「うん。ちーちゃん、やー兄にぎゅってしてるから大丈夫!」
 箒が空を飛ぶ前から千尋は社にしがみついた。2人の世界から取り残された寺美はため息をついて自分の空飛ぶ箒に跨った。
「はぅ〜、世界のマスコットの宿命は常に孤独との戦いですぅ」
 そうして3人は、葦原島の空へと飛び立った。

「寺美、頼むで」
 目当ての家の前に降り立った社は寺美に声を掛けた。
「ボクに任せるですぅ〜☆」
 寺美が玄関先に向かう。家人は眠ったようで、あたりは静かだ。
「しかし、『光学迷彩』は地味に役立つスキルやな。寺美、お前も鍵を開けたらちゃんと隠れておけ……」
 千尋を箒から下ろした社が振りかえると、寺美が『破壊工作』のスキルでドアに爆薬を仕掛けているところだった。
「何しとんねんお前ーっっっ!」
 社があわてて寺美をドアから引きはがす。寺美はきょとんと社を見上げた。
「はぅ?」
「はぅ?やないやろ! 『破壊工作』で他人様の家のドア壊すとか、そんなのサンタやない、ただの犯罪者や! ここは『ピッキング』を使わんかい!」
 社が寺美のこめかみにぐりぐりと拳を押し付ける。
「はうぅっ! すみません、『ピッキング』使えるの忘れてましたぁ〜」
「今度はちゃんとやれ」
「はい〜」
 寺美が痛むこめかみをさすりながら『ピッキング』で鍵を開けた。『光学迷彩』で姿を消した社が先に入って様子を伺い、起きている子供には千尋が『子守歌』で眠らせる。
 それを基本作戦として、社達はプレゼントを配り歩いた。

 数時間後、ようやく担当分が終盤に差し掛かる頃には、疲れた千尋は社の背でうとうととし始めていた。
「ちー、眠いんか? 眠ってもええよ」
「…うーん…やー兄ぃ…最後までお手伝い出来なくてごめんねぇ…」
 千尋がむにゃむにゃと寝言のように言う。
 3人の横をスネグーラチカ一行と雪娘達が風のように通り過ぎた。
 寺美がそれを見送りながら、社に言う。
「妨害、されなかったですねぇ」
 背中にお荷物を抱えているのを見て、相手にされなかったのかもしれない。
「社、千尋ちゃん、ボクが背負いますよぉ?」
 寺美の提案を、社は笑って断った。
「アホぬかせ。こんな大事な宝物、他の奴に任せられるわけないやろ」
 背中の安らかな寝顔を守る為なら、お兄ちゃんはどこまでも頑張れるのだ。
「もうひと踏ん張りや。頑張るで!」
「了解ですぅ〜!」
 社と寺美は最後の区画へと向かった。