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ライバル登場!? もうひとりのサンタ少女!!

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ライバル登場!? もうひとりのサンタ少女!!

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第15章 幕 間


「困ったなぁ」
 黎から連絡を受けたルカルカは、状況報告を受けて悩んだ。なんとか2人の勝負を引き分けに持っていこうと立会人をかって出た黎とルカルカだったが、劣勢のスネグーラチカが更に機晶ロボを失ったとあっては、勝負は見えている。
 ドジっ子を装ってプレゼントを取り出すのに苦労して見せたりなんて小技ぐらいでは到底引き分けにはもっていけそうもない。
 それでなくても、フレデリカはキマクの残りの配達を他の者に任せ、他の都市の一気にまわり最終確認と調整に入っている。そんなフレデリカについてヴァイシャリーまでやって着たルカルカは、待ち合わせ場所でフレデリカを待ちながらぼんやりとあたりを見回した。
 ふと、建物の影で具合が悪そうに座り込む女性が目に入った。ルカルカはチャンスとばかりにパートナーの魔鎧ニケ・グラウコーピス(にけ・ぐらうこーぴす)とともに女性へ歩み寄り、声を掛けた。
「あの、大丈夫? 具合が悪いなら、お医者様、呼ぼうか?」
 女性は突然掛けられた声に驚きながら、ルカルカ達の親切に礼を言う。
「心配してくれてありがとうございます。でも、具合が悪いわけじゃないのよ。ちょっと、悲しい事があってね……」
「悲しい事?」
 女性はルカルカ達に、事情を話し始めた。
 夫が亡くなり、戦乱の影響もあって、生活を立て直す為に教会に娘を預けたのだが、手違いで娘が他の場所に移動させられてしまったそうだ。クリスマスには迎えに行くと約束したのが1年前。それからずっと捜しているのだが、何の手掛かりも見つかっていないのだという。
 女性の話を聞いたニケは、試しに携帯の写真を見せるようルカルカに言った。母親を捜しているという女の子の情報に添付されていたやつだ。
 写真を見せると、女性は泣き出した。
「大当たり、だね」
 ルカルカは奇跡の出会いを皆に報告するべく、メッセージを送る。

 その頃、キマクでは今年もカリンの苦労が絶えなかった。
 スカサハは去年に引き続き、
「スカサハの自前のサンタ服姿を皆に見てもらうでありますよ!」
 といっては子供を起こそうとし、里也は、
「堂々と子供たちの寝顔を撮れる絶好の機会ですな!」
 といっては子供達の写真をフラッシュ付きで撮っている。
「いい加減にしやがれっ!」
 小声で怒鳴り、2人を子供の家から追い出したカリンは、2人をその場に座らせる。
「去年から何度同じこと言わせりゃ気がすむってんだ! スカサハ、子供は起こすな! 里也、シャッター音だのフラッシュだので子供が起きるから写真はやめろ!」
 カリンの殺気のこもった説教に、2人がしぶしぶ了承する。
 そんな3人に、朔がルカルカからのメッセージを知らせた。
「写真の女の子の母親がヴァイシャリーで見つかったらしい。誰か娘さんの所まで送り届けて欲しいそうだ」
 それを聞いたカリンは、舌打ちをして自分の小型飛空艇に乗り込んだ。
「おら、さっさと行って、面倒な配達を終わらせるぞ!」
 悪態をつきながらも母親を少女の元へ届けたいという意思表示に、朔とスカサハ、里也は顔を見合わせて微笑み、朔は自分達が母親を送り届けたいとルカルカにメッセージを送信した。

 スネグーラチカを支える人が思ったよりたくさんいたので、悠希は最後に残していた大切な人たちへのプレゼントを届けにヴァイシャリーに戻ってきた。
 息を整え、想いを寄せる百合園女学院校長の桜井 静香の寝室の前に立つ。袋を探ってプレゼントを取り出そうとするが、見当たらない。
「あ、あれ? 確かにここに入れておいたはずなんですが……あ、あの時!」
 悠希は、スネグーラチカにプレゼントを渡そうとした時に、仔トナカイとぶつかった衝撃でプレゼント袋を落とした事を思い出した。きっとその時に袋からこぼれたのだろう。
「どうしよう……」
 ショックを受けて座り込む悠希の腕に、もふりとした感触が触れた。見れば、一緒にいた仔トナカイが、プレゼントをくわえている。
「……届けてくれたの?」
 仔トナカイは、じっと悠希の瞳を見つめ返す。最初、悠希が心を入れ替えたと言った時に疑ったお詫びのようだ。
 そっと撫でた毛並みは悠希を庇った時の汚れがまだ残っている。それでも、プレゼントは綺麗なままだった。「すごいね、さすがサンタクロースのトナカイだ」
 悠希は、仔トナカイからプレゼントを受け取ると、そっと静香の寝室に忍び込む。
 静香は顔半分まで毛布をかぶり、なにやらうなされていた。
(校長職などで色々お疲れなんだな……)
 そう思いながら、悠希は一生懸命選んだ『疲労回復 入浴セット』をそっと置いた。
「静香様、メリークリスマス」
 起こさないように囁くと、幾分、静香の寝顔が安らかになった気がした。気のせいなければいいと願いながら寝室を出た悠希は、緊張で詰めていた息を吐きだした。
「サンクロースって、いいですよね」
 悠希は、小さな声で仔トナカイに話しかける。
「普段は中々プレゼントなんて渡せないけど、サンタなら……」
 悠希は、ふと、まだ海京でプレゼントを配っているであろうスネグーラチカに思いを馳せる。彼女が、サンタクロースならではの原点を思い出してくれるといいのだが。
「さて、まだまだ配らなくちゃ」
 悠希は、仔トナカイと一緒に、寮へと向かった。